石油会社が活路を見出す 充電時間の短縮も
EVは、さまざまな意味で世界をひっくり返した。テクノロジーの変化、生産方法の変化、運転スタイルの変化、燃料補給の変化、タイヤのデザインの変化など、思いつく限りの変化があった。水面下ではさらなる変化が起こっており、その1つがエンジンやモーター、ドライブラインを支える流体の設計だ。
<span>【画像】EV高性能化には冷却技術が不可欠【ポルシェ・タイカンを写真で見る】 全87枚</span>
従来のクルマでは、水とグリコールの混合液(不凍液)がエンジンを冷却する一方で、用途に合わせて調合されたオイルがエンジン、アクスル、トランスミッションを潤滑し、場合によっては冷却の役割も果たしている。
しかし、EVの場合は違う。燃焼を伴わないEVでは燃焼生成物がなく、また燃焼室のような極端に高温になる場所もない。しかし、トランスミッションには潤滑油が必要だし、モーターには冷却が必要で、バッテリーやパワーエレクトロニクスも同様である。
実際には、単なる冷却や保護だけではなく、最大限の効率を引き出すために、きめ細かな熱管理が必要だ。ICE(内燃機関)が衰退していく中で、石油会社はビジネスの源泉としてこの分野に注目している。
ペトロナス・ルブリカンツ・インターナショナル社は、EV専用のフルード(流体)を開発している企業の1つ。同社はEV専用の潤滑剤と冷却剤を使用するだけで、効率が向上し、その結果、航続距離も伸びると考えている。そして、熱対策は間接冷却から直接冷却へと移行している。
間接冷却では、ヒートシンク(通常は合金製の板)が機械やインバーター、バッテリーセルから熱を吸い上げ、冷却水に熱を移す。しかし、これでは熱の一部だけが伝導され、残りの熱は逃げてしまうため、効率が悪い。
直接冷却の場合、冷却液は回路基板やシール、銅やプラスチックなどの部品に直接触れることになり、大規模なショートを起こさないようにするには、冷却液に誘電性(電気を通さないこと)が必要となる。ドライブトレインが別体ではなく一体化していると、話はさらに複雑になる。その場合、冷却液はギアの潤滑と、モーターとその電子機器を直接冷却する必要がある。
バッテリーや充電装置の冷却を改善すれば、超急速充電はさらに高速化できる。350kWの充電が可能なモデル(例えば、ポルシェ・タイカンなど)の充電速度は、早い段階でピークに達した後、損傷を防ぐためにバッテリー管理システムが電流を制御するため、徐々に低下していく。
ペトロナスによると、タイカンでは空の状態からの充電時間が41分とされているが、仮に100%まで350kWで充電できたとすると、かかる時間は16分になるという。必ずしも実現できるとは言えないが、冷却とそのための流体に焦点を当てることで、充電時間を改善する大きな可能性が示されている。これからの10年は、化学者にとって多忙な時期になりそうだ。
モータースポーツ界も冷却技術に注目
ウィリアムズF1チームからスピンオフしたウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング社(WAE)は、カストロール社と共同で、EVの熱管理用流体を開発するプロジェクトを進めている。モータースポーツ用バッテリーの冷却剤として2022年の導入を目指す。WAEが特に注目しているのが、カストロール社が開発中の液浸冷却技術だ。
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みんなのコメント
モータの冷却⇒すでに業務用冷凍機の半密閉型圧縮機で
オイル+フロンの含浸冷却というものが50年も前から行われている
制御装置の冷却⇒電車のVVVFインバータのパワー素子冷却で
フロンに含浸させるフロン沸騰冷却⇒脱フロン化でフロリナート⇒現在は純水
ついでに発電機の冷却では気体の水素を充てんした水素冷却と言うのも枯れた技術