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【センスが光る】C5エアクロス「PHEV」仕様に見た、シトロエンの勘所

掲載 更新 1
【センスが光る】C5エアクロス「PHEV」仕様に見た、シトロエンの勘所

評価のポイントは?

執筆:Shigeo Kawashima(川島茂夫)

【画像】C5エアクロスPHEV【細部まで見る】 全37枚

現在の日本におけるシトロエン車の最上級モデルとなるのがC5エアクロスPHEV。

「最上級」と言えばショーファードリブンにも供される堂々たるセダンというのも過去形。SUVが最上級モデルなのも現代を感じさせる。

SUV自体のイメージや適応用途も多様化が進み、悪路に入らなければ不要と決めつけるクルマではなくなっている。

高い全高を活かして高さ方向にも余裕のあるキャビンスペースや車外見晴らしのよさなど、寛ぎを求めるのも多いに「あり」。

ゆったりとしたスペースや落ち着きのある内装の設えもあり、C5エアクロスの居心地は寛いだものである。パッケージ面でセダン系に劣るとすれば乗降性くらいのものだ。

そこに最新の電動化技術を導入したモデルが、C5エアクロスPHEVだ。

パワートレインは1.6Lターボ/8速ATをベースにしたパラレル式ハイブリッドを採用。最高出力30kWの駆動用モーターと13.2kWhの駆動用電池(リチウムイオン型)を備え、WLTC総合モードによる満充電時のEV走行距離は65kmを達成。また、社内計測データのEV走行最高速度は135km/hとなっている。

外部充電が普通充電のみとなっているのが玉に瑕だが、PHEV化により変わる静粛性・乗り心地がC5エアクロスのプレミアム感を何処まで高めるかが興味深い。

EV走行 どんな感じ?

エンジン停止での純電動走行こそPHEVの醍醐味。ではあるのだが、HV走行に自然に移行するまで待つには時間が掛かる。

そこで、蓄電量が十分な状態から走行モード切替を用いてHVモードやスポーツモードなどを試してみた。

純EV走行のエレクトリックモードのコントロール感はペダルコントロールに至って忠実。過剰な反応が抑制されているので発進や低中速の加減速も含めた神経質さは皆無。

付け加えるなら油圧回生協調電子制御ブレーキのタッチも良好。エネルギーモニターで見ると、かなり回生で稼いでいるのだが、回生の立ち上がりを穏やかにして油圧制御との移行を滑らかにしているようだ。

また、蓄電量に応じて回生の掛け方も変わるのだが、その変化をペダル操作で捉えることはできなかった。

ハイブリッドモードでは蓄電量とアクセル踏み込み量に応じてエンジンを稼働。蓄電量に比較的余裕があったせいもあって、エンジン稼働時間は少なく、頻繁に電動走行に移行する。パラレル式だが、ドライブフィールは電動感を強く意識する。

シトロエン 電動化の勘所

選択時はエンジンが稼働し続けるのがスポーツモード。ドライブフィールはパラレル式そのもの。純電動と比較すると加減速時の駆動トルクの揺らぎが気になる。

それはダイレクトなエンジンコントロール感ではプラス要素。生のままの操る手応えを求めるのは「スポーツ」に相応だろう。

なお、意図的にコントロール性の変化を抑えているのだろうが、扱いやすさはどのモードでも同じであり、ことさらの目新しさよりも馴染みやすさを重視しているのは“シトロエンのセンス”だ。

快適性とか乗り味の質感において「重さは正義」とよく言うのだが、C5エアクロスPHEVは同エンジン車に対して200kg以上重い。

さらにエンジン車ではトーションビームのリアサスが、PHEVではマルチリンク式の独懸に変更されている。

SUVでは乗り心地に定評のあるC5エアクロスにこれらの好条件である。試乗前から快適性には期待していたのだが、それ以上だった。

乗り心地/静粛性について

バネ下の重さを意識しないようなストローク感。微小ストロークからしなやかに路面追従し、大きくストロークするような状況でも収束性がいい。

その動きはこれまで以上にゆったりと据わり良くなり、悠々とした乗り心地と優れた安定感を高い領域で両立している。段差乗り越えなどの突き上げで車軸まわりに若干の揺動が感じられるが、そういった部分も含めて重質な味わいがある。

しかも、エンジンまわりの騒音やロードノイズも低い。エンジン稼働走行のスポーツモードや全開加速でも荒々しい騒音は聞こえてこない。

スポーツモードでは迫力不足とさえ思えるのだが、無駄に乗員を刺激しないのもいい。厚みとか減衰感を覚える静粛性である。

ゆったりした乗り味にはあれこれクルマからの指図のない操安がよく似合う。エンジン車からの追加重量の多くを床下に配置した低重心化も効いているのかもしれないが、腰の据わった落ち着きと負荷変動を往なすようなストローク使いもあって、操舵に従順なハンドリングを示す。

もちろん、過剰あるいは神経質な挙動は皆無。ドライバーもまた悠々と寛いで過ごせる走りなのだ。

「買い」か?

同系のプジョー3008のPHEVには電動4WDを採用しているのだが、残念ながらC5エアクロスPHEVはFFのみの設定。

190mmの最低地上高を確保しているが、4WDの設定がないので悪路踏破性にこだわるユーザーには勧めにくい。

C5エアクロスPHEVが最も似合うのは、寛ぎを柱にした快適性にこだわるユーザーだ。同価格帯で選べるモデルの中では最も快適性と走りの質感に優れている。

それはとてもシトロエンらしい味わいでもあり、和みのドライブを楽しませてくれる。家族や気が置けない友人と穏やかな時間を過ごすには最適である

付け加えるならPHEVとしては買い得感も良好である。同等装備のディーゼル車との価格差は74万円。また、RAV4 PHVは電動4WDを採用するアドバンテージはあるものの469万円からの設定であり、プレミアム感や走りの質感を考慮するなら国産車と比較しても十分に競争力のある価格設定である。

シトロエンというと仏車好き御用達のイメージも強いが、C5エアクロスPHEVの走りの魅力は一般的なユーザーにこそ理解されやすいもの。

高性能とかスポーツ性に食傷気味のユーザーならばなおさらである。

C5エアクロスPHEV スペック

シトロエンC5エアクロスSUVプラグインハイブリッド

価格:550万円
全長×全幅×全高:4500×1850×1710mm
車両重量:1860kg
乗車定員:5名
エンジン形式:1598cc直4ターボ
トランスミッション:8速オートマティック
システム最高出力(欧州参考値):225ps
最高出力(エンジン):180ps/6000rpm
最大トルク(エンジン):30.6kg-m/3000rpm
最高出力(前モーター):110ps/2500rpm
最大トルク(前モーター):32.6kg-m/500-2500rpm
燃料:ガソリン
燃費(WLTCモード):16.1km/L
最低地上高:190mm

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みんなのコメント

1件
  • エアクロスシリーズを見ると、砂漠の巡洋艦隊(でしたっけか?)というキーワードを思い出します。
    これもまたシトロエン。
    ………いいなぁ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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