レッドブルのマックス・フェルスタッペンが、F1サンパウロGPを勝利した。スペインGP以来、実に11戦ぶりの勝利であり、これで劣勢に立たされつつあったタイトル争いでも、グッと流れを引き寄せた重要な1勝となった。
ただそれだけではない。フェルスタッペンは17番グリッドと後方からのスタートだった。しかし、バーチャル・セーフティカーやセーフティカー中に各車がピットストップしてタイヤを交換する中ステイアウトを選択し、その直後に赤旗が出るという大幸運にも恵まれ、ポジションを落とすことなくタイヤ交換を完了。レース再開後はアルピーヌのエステバン・オコンを攻略して首位に躍り出ると、その後は昨年のような強さを発揮して圧勝してみせた。
■フェルスタッペン、17番手からの劇的F1サンパウロGP優勝に喜び爆発「僕の感情はジェットコースター並み」
この17番グリッドから優勝というレースは、まさに記録的な大逆転と言える。しかし、過去を振り返ってみると17番グリッドからスタートして勝ったのは、今回のフェルスタッペンが最初ではない。過去に2例存在する。しかもそれ以上後方からスタートして勝った事例もある。
本稿では、過去の歴史的大逆転勝利の事例をご紹介する。
■17番グリッド:2回
1982年デトロイトGP:ジョン・ワトソン
2005年日本GP:キミ・ライコネン
17番グリッド以下から優勝したというケースは歴史上わずか6例(6例目が今回のフェルスタッペン)しかない。その中でも、マクラーレンのライコネンが鈴鹿で鬼神の走りを見せた2005年の日本GPは多くのファンの記憶に残っているだろう。
当時のワンアタック方式の予選の弊害を受け、雨が降ってきたタイミングでアタックをせざるを得なかったライコネンは予選17番手に沈んだ。しかし決勝レースでは猛烈に追い上げ、トップを走るルノーのジャンカルロ・フィジケラに追いついた。最終ラップ、フィジケラを1コーナーでアウトから抜き去ったシーンは今も語り草となっている。
デトロイト市街地での初開催となった1982年デトロイトGPでは、マクラーレンのワトソンが猛追を見せ、前をいくマシンを次々オーバーテイク。ギヤトラブルに苦しむウイリアムズのケケ・ロズベルグを交わしてトップに立ち、優勝を飾った。
17番グリッドなんてまだ甘い? 上には上がいる
■18番グリッド:1回
2000年ドイツGP:ルーベンス・バリチェロ
フェラーリのバリチェロが初優勝を飾った2000年ドイツGPも、劇的なレースであった。トラブルにより雨の強い時間帯でしか予選を走れなかったバリチェロは、18番グリッドと優勝は絶望的な位置からのスタートとなったが、スタート直後の混乱を掻い潜ってポジションをあげ、その後は瞬く間に3番手まで浮上した。
そして残り終盤になってホッケンハイムには雨が降り出したが、局地的な雨だったこともありバリチェロはステイアウトを決断。スタジアムセクションはフルウエットだったが、バリチェロはドライタイヤで耐え切ってトップチェッカー。苦節8年での初勝利だったため、バリチェロは表彰台で大粒の涙を流した。
■19番グリッド:1回
1954年インディ500:ビル・ブコビッチ
こちらは形式上F1世界選手権の1戦となっていた時代のインディ500の大逆転劇。ブコビッチは1953年のインディ500も制しているため、記録上はF1で2勝を挙げているということになる。
■22番グリッド:1回
1983年アメリカ西GP:ジョン・ワトソン
F1史上最も後方グリッドからの優勝記録が、1983年にロングビーチで開催されたアメリカ西GPのワトソンだ。前年にデトロイトで17番手から優勝したばかりだったマクラーレンのワトソンは、ミシュランタイヤが機能せず予選22番手に。チームメイトのニキ・ラウダも同じく23番手に沈んだ。しかし決勝のタイヤ選択はハマり、ワトソンはラウダとのランデブーで次々ポジションを上げた。最終的にワトソンが優勝、ラウダが2位に入り、グリッド20番手台のドライバーによるワンツーフィニッシュという稀に見る珍記録が達成されたのだ。
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