2021年F1第6戦アゼルバイジャンGPは前戦モナコに続いての市街地レース。しかしコース特性はまったく違う。モナコでまさかの苦戦を強いられたメルセデスとルイス・ハミルトンだったが、勝ち慣れたアゼルバイジャンで巻き返せるはずだった。
「レースペースも悪くない」と語っていたハミルトンは、2戦連続でポールシッターとなったフェラーリのシャルル・ルクレールを序盤に難なく交わしトップに立った。だが11周目にソフトタイヤからハードタイヤに履き替えると、12周目にピットインしたマックス・フェルスタッペン、13周目のセルジオ・ペレスのレッドブル・ホンダ2台に次々にオーバーカットされてしまう。
【F1第6戦無線レビュー(1)】「なんで彼らはあんなに前なんだ?」ハミルトン、タイヤ交換後にライバルとの差に愕然
タイヤ交換に4秒6を費やし、1秒9のフェルスタッペンに首位を奪われたのはやむを得ない。しかし、4秒3のペレスにも先行され、15周目にはフェルスタッペンとの差は4秒まで広がっていた。「何であんなに先にいってるんだ」と、思わずキレるハミルトン。モナコ同様、ハードタイヤの熱入れに苦労するあいだに、突き放されてしまったのだった。
そこからは1-2体制を築いたレッドブル・ホンダの2台を追う展開となった。昨年までのフェルスタッペンと、まさに逆の立場に追い込まれたことになる。何とか食いつこうとするが、首位フェルスタッペンとの差は徐々に広がっていく。
メルセデスは2日目の大幅セットアップ変更で、ハミルトン車により多くのダウンフォースを発生するシングル支柱のリヤウイングを装着した。それでもレッドブル・ホンダの2台には、低中速主体のセクター2で終始コンマ5秒前後の差をつけられた。その結果、フェルスタッペンとの差は、30周目には8秒8まで広がっていた。
直後にアストンマーティンのランス・ストロールがクラッシュしたことでセーフティカーが導入され、ギャップは一気に縮まる。しかし、レース再開後もハミルトンはペレスを抜きあぐね、フェルスタッペンとの差は再び広がっていった。
そのあいだのハミルトンは、どんな思いを抱いていただろう。ハイダウンフォース仕様にもかかわらず、低中速のセクター2でコンマ5秒遅いという事実。一方で、ふたつのDRS区間では何度も1秒以内に入っているのに、ペレスを追い抜くことはできない。車体だけでなくパワーユニット性能において、とくにバクーで肝となるMGU-Hの性能、回生エネルギーマネジメントの分野で、彼らが長足の進化を遂げていることをあらためて味わされたのではなかったか。
首位フェルスタッペンのリタイアで、勝負の決着は残り2周の超スプリントレースでつけられることになった。ハミルトンはフォーメーションラップでタイヤを効率的に温めるために、回生ブレーキをカットして油圧ブレーキのみに切り替えた。そこまでは通常の手順だったはずだ。しかしその際「間違ってボタンを押し、フロントブレーキしか効かない設定になったようだ」と、ハミルトンはレース後語っている。
グリッド上で激しく上がったフロントタイヤからの白煙。発進加速は明らかにペレスを凌ぎ、ハミルトンは先行に成功した。しかしブレーキングで止まりきれず、そのままエスケープゾーンへと直進していった。
ハミルトンの操作ミスを誘発したのは『レッドブルに完全に追いつかれている』という危機感だったのか。だとすれば今後のレースでも、同じことが繰り返される可能性は高そうだ。
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