もくじ
どんなクルマ?
ー XJ、Sクラス/7シリーズなどとどう戦う?
どんな感じ?
ー 「ラグジュアリー」とは何なのか?
ー 走り、ジャガーらしく 5ℓV8の性格も
「買い」か?
ー 優秀かどうかではなく、好きかどうか
スペック
ー ジャガーXJR 575 SWBのスペック
どんなクルマ?
XJ、Sクラス/7シリーズなどとどう戦う?
ジャガーXJについて知っておくべきもっとも重要なこと。それは、このモデルの後は別の世代になるということだ。
「フラッグシップカーの会社にはフラッグシップカーが必要なのです」とジャガーのデザイン部門を率いるイアン・カラムは言う。
しかし、それが議論になるということ自体が、XJの置かれている状況を示している(メルセデス・ベンツSクラスやBMW7シリーズでは、そんな議論はおこらない)。XJは成功に恵まれなかったヒーローになろうとしている。
いずれにしろ、このモデルはデビューしてもう7年もたつ。考えられるだろうか? もちろん、2年以内には新型が登場するだろう。
「それは当然Sクラスとは違ったものになります」とカラムは言う。「同じ土俵で相撲を取るつもりはありません」
その通りだ。
一方で現在のXJは、住んでいる国にもよるが、とても幅広い多くのバリエーションがある。
まず、英国で一番売れている3ℓディーゼルがある。しかし、3ℓのスーパーチャージドV6ガソリンもあり、それぞれ後輪駆動と四輪駆動が選べる。次に5ℓV8ガソリン。これには3バージョンあり、それぞれ470ps、510ps、そして550psから575psにパワーアップされたXJR 575である。これらすべてに標準とロングの2種類のホイールベースがある。
XJの中で今回変更があったのはこのXJRだけなので、2018年モデルのレビュー相手としてはいちばん適していると思う。ほかに理由はない。このクルマがお望みとあらばタイヤ・スモークを上げられるからだとでも?
とんでもない。
どんな感じ?
「ラグジュアリー」とは何なのか?
後輪駆動のXJは、すべて油圧式ではなく電動のパワーステアリングだ(四輪駆動は油圧式のまま)。ダッシュボード中央には新しく10インチのタッチスクリーンが備えられ、ソフトも更新されてレーン保持システムやパーキング・アシスト(だから電動パワステなのだ)、それにシティー・ブレーキやレーダー・クルーズといったアクティブ・セーフティ・デバイスも追加された。
「ラグジュアリー」と書くと、ベントレーの連中は待ったをかけるだろう。Sクラスなどラグジュアリーではないと彼らは考えている。なぜなら化粧パネルに最高級の世にも貴重な木材を使っていないからだ。ジャガーも使っていないが、「ラグジュアリー」という言葉は、(ベントレーの定義に従うと)SクラスやアウディA8よりもXJに合っていると感じる。
しかし実際には、XJは両車よりもラグジュアリーではない。なぜだろう。
見た目の品質のせいでないことは確かだ。XJのインテリアに劣るようなところはSクラスにはまったくない。また何度も言うように、たくさんのボタンがあったり、技術的に進んでいるせいでもない。でも何かある。
おそらく、それはデザインのせいだろう。ジャガーは内装、外装とも魅力的なクルマだ。特に外装だが、ダッシュのトップ周りもオシャレだ。
しかしおそらく、色気に関しては少し保守的な感じがする。ほかのクルマよりもちょっと蠱惑的で、ちょっとパーソナルだ。このクラスでロールス・ロイス・ファントムと最も感じの似ているクルマ、つまり典型的なラグジュアリーカーを選ぶとしたら、おそらくXJだろう。やはり正確に説明することはできないが(でもそんなこと、誰にもできないだろう)。
さて、リア・シートから始めよう。
走り、ジャガーらしく 5ℓV8の性格も
リア・シートはいい。ロング・ホイールベースのXJならリアのレッグ・ルームは素晴らしく、ジャガーはこれを「エアライン・スタイル」の個別シートと呼ぶ。
可動域も大きく、とても快適でもある。でも「エアライン」なんて呼び方はXJRに対して失礼だとも思う。最近、X線チェックでシャンプーがひっかかるし、マークス&スペンサーのベーコンに£4.75(710円)も支払わされるしで頭にきているのだ。短距離フライトより毎回XJのリア・シートに乗せてほしい。
しかし、わたしの、そしておそらくあなたの、関心事はフロントシートだ。XJ、なかでもXJRが今でも魅力的なラグジュアリーカーである理由は、その素晴らしいドライビングにある。
電動アシストのステアリングは、2年前にXJを運転したときから良かった。だから以前より良いか悪いかはわからないが、相変わらずとてもスムーズで気持ちの良い重さがあり、セルフ・センタリングの具合もちょうどいい。クラスで1番といってもいい。
同様に乗り心地も素晴らしい。
道のでこぼこを吸収する能力は、Sクラスのもっとも足のやわらかいモデルが比類するのみだ。しかも1875kgのボディを巧みにコントロールする。デザインとダイナミクス。ジャガーが常に正しく見える所以である。
エンジンとギアボックスの組み合わせもなかなかいい。25psのパワーの上乗せは制御ユニットの変更によるものなので、エンジンは相変わらずいい音を奏で、芳醇で、レスポンスもリニア。スムーズに変速し、リア・タイヤからスモークを上げることも簡単だ。
でも、いつまでも続きはしない。
5ℓスーパーチャージャー付きのドンキー、パワーは575psもあるが燃費は9.0km/ℓでCO2排出量も264g/kmだ。試乗車では6.3km/ℓだった。こんなパワートレインはほかにあるだろうか。世界の一部ではこれからも使われるだろうが、北欧では売れなくなり始めている。
「買い」か?
優秀かどうかではなく、好きかどうか
XJRとはいったい何だろう? 少し時代遅れでちょっと保守的?
おそらく。
Sクラスや最新のA8のように最新技術が満載か?
とんでもない。
ポルシェ・パナメーラのようにすさまじい能力があるか? BMW 760Liのように生きたサイを地面に組み伏せることができるか?
ちょっと想像できない。
だからどう考えても、わたしはXJに4つ星以上をつける気にはならないのだ。しかし、それがそんなに重要だとも考えていない。だからわたしは、ためらうことなくXJを推薦するのだ。
ジャガーXJR 575 SWBのスペック
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