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オールシーズン・グランドツアラー メルセデスAMG SL 55へ試乗 完璧なプロダクト

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オールシーズン・グランドツアラー メルセデスAMG SL 55へ試乗 完璧なプロダクト

アルミ製プラットフォームを新開発

最新のR323型メルセデスAMG SLと、先代のR231型がどのように異なるのか、詳しく説明すると非常に長くなりそうだ。何しろ、広報用資料の文章は2万単語に及ぶ。

【画像】オールシーズン・グランドツアラー メルセデスAMG SL 55 競合オープンモデルと比較 全119枚

かいつまむと、モデルチェンジの趣旨は2シーターでスポーティなハイエンド・ツアラーから、よりアグレッシブでパワフルなモデルへ刷新すること。ポルシェ911 カブリオレやタルガから、ユーザーを引っ張ってくる目的があるようだ。

新しいSLは、生まれながらのAMGになった。それを叶えるため、まったく新しい軽量なアルミニウム製プラットフォームが開発されている。

2011年以降のSLはアルミニウムを中心に構成されてきたから、驚くような事実ではないかもしれないが、ボディ剛性は大幅に向上したという。もともと、R231型も軟弱な骨格ではなかったけれど。

このプラットフォームが与える動的能力への影響は、間違いなく大きい。メルセデスAMG GTの次期モデルも、このハードウエアを利用することになる。

新しいSLの開発を進めたのは、ドイツ・アファルターバッハに拠点を置くAMG部門。前輪用のドライブシャフトと後輪操舵システムが与えられ、動力性能を強化しつつ、コーナーでの敏捷性を引き上げている。

ルーフはフォールディング・ハードトップではなく、数世代ぶりに軽量なファブリック・ソフトトップへ戻された。実用的なリアシートも獲得している。英国価格はAMG SL 55で14万7475ポンド(約2448万円)からとなる。

性格にマッチする豊かな動力性能

既に英国編集部では、最高出力585psを発揮するAMG SL 63へ北米で試乗している。場面によっては運転へ夢中になり、長距離をいとわない快適性に惹き込まれた。乾燥した陽気と滑らかな路面であれば、間違いなく期待に応えてくれる。

それでは、英国の一般道ではどんな印象を与えてくれるのだろう。天候が安定しない冬の英国に伸びる、荒れた路面では異なって然るべき。今回試乗したのは、AMG SL 63より穏やかなAMG SL 55でもある。

少なくとも、掘り出し物とは呼べない英国価格だとはいえるだろう。スペック上では速いポルシェ911 カレラ4 GTSを購入できる金額で、フォルクスワーゲンUp! GTIを注文できるお釣りも付く。

最高出力は500馬力台を期待するかもしれないが、AMG SL 55は475ps。充分に強力ながら、豪腕級のAMGパワーとまではいえない。

だとしても、AMGが手掛けた4.0L V型8気筒ツインターボエンジン、M177型ユニットがAMG SL 55のドライビング体験の中心にあることは間違いない。僅か2000rpmから71.2kg-mの最大トルクが湧出し、そのたくましさには唸らされる。

ほぼすべての速度域で、好きなギアを選べる。V8エンジンはターボラグが皆無に近く、アクセルペダルを倒した瞬間に突進し始める。豊かな動力性能は、グランドツアラーの性格とも良くマッチする。

上級のオールシーズン・グランドツアラー

乗り心地は全般的に優れている。しかし、路面が荒れてくると明確に陰りが生じる。

AMG SL 63が採用する、アンチロールバーが備わらないマクラーレン風のクロスリンク油圧ダンパーなら違うだろう。AMG SL 55には、従来的なアクティブ・サスペンションが装備され、しなやかに処理できない区間も存在した。

とはいえ、英国郊外の道をハイスピードで受け流せる。贅沢に仕立てられたインテリアに包まれれながら、路面と息を合わせるようにな足さばきによって、長距離をエレガントに走破できる。

シャシーは、トラクションが素晴らしい。冷えて湿った路面でも、2速でフルパワーを発揮できるほど。97km/h以下ではフロントタイヤと逆位相にリアタイヤが向きを変える後輪操舵システムの効果で、敏捷性もすこぶる高い。

高速域であっても、ライン調整は容易。アクセルペダルを加減しながら、V8ツインターボを味わう自信をドライバーに与えてくれる。

四輪駆動でもあり、上級のオールシーズン・グランドツアラーとしてAMG SL 55の能力は圧倒的。操縦性の精度も感動的。シャシーやエンジンの性質は、ふんだんに用意されたドライブモードで選べる。クルマの特性も大きく変化する。

ただし、ポルシェ911の直接的なライバルになり得るかと聞かれると、回答には少し悩む。車重が1870kgと重すぎる。シャシーはその質量を巧みに管理するものの、影響から逃れることはできない。

ラグジュアリーな質感とソリッドな動的能力

ドライバーは、常に重さを意識してしまう。確かに、予想外に急なヘアピンカーブでフロントが外へ大きく膨らんだり、一歩遅れ気味に身をこなすことはない。AMG SL 55のチューニングは見事だが、そうなりそうな不安がつきまとう。

電動機械式パワーステアリングは、AMG GTが採用する電動油圧式ほど情報量が多くない。強みともいえるが、四輪駆動のシャシーは特性がニュートラル過ぎるようにも感じた。

ラグジュアリーな質感とソリッドな動的能力を求めるなら、まさにメルセデス・ベンツが得意とするところ。新しいAMG SL 55に満足できるだろう。内装には冴えないプラスティック製部品が若干あり、風の巻き込みを防ぐディフレクターは手動だが。

しかし、アグレッシブなスポーツモデルとして期待すると、印象はやや表面的。グランドツアラー寄りのドライビング体験には、もう少し心へ訴えかける味わいの濃さがあっていい。難なくハイスピードで駆け抜けられるが、英国で運転した限りそう思えた。

メルセデスAMG SL 55は、極めて能力に長けている。ブランドとして完璧なプロダクトだといえる。あまりにも完璧で、施され過ぎなのかもしれない。超速で快適な2+2のAMGと、歩み寄ることなく日常的に暮らせる。

一層パワフルで、高度な技術が搭載されたAMG SL 63は英国でどんな印象を与えてくれるのだろう。これ以上の情熱的な高みを体験できるのか、興味深いところだ。

メルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス(英国仕様)のスペック

英国価格:14万7475ポンド(約2448万円)
全長:4705mm
全幅:1915mm
全高:1359mm
最高速度:294km/h
0-100km/h加速:3.9秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:292g/km
車両重量:1870kg
パワートレイン:V型8気筒3982ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:475ps/5500-6500rpm
最大トルク:71.2kg-m/2000-4500rpm
ギアボックス:9速オートマティック

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