現F1世界王者のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、ドライバーの政治的発言を封じるFIAの決定は「少しやりすぎ」だと考えている。
昨年12月、FIAは国際モータースポーツ競技規則を改正してある条項を付け加えた。それは、ドライバーが事前にFIAの承認を得ないかぎり、「政治的、宗教的、個人的信条に基づく発言」を行ったり、掲示したりすることを禁じるものだった。ルイス・ハミルトン(メルセデス)やセバスチャン・ベッテルといったドライバーは、レース当日、F1のプラットフォームを利用して社会的不公正や不平等、気候変動問題に対する非難を表明することがしばしばあった。
F1ドライバーの政治的発言を取り締まるFIAの方針にボッタスが懸念を示す「僕たちには望むことを話す権利があるはず」
これまでFIAは、ドライバーに対して表現の自由を無制限に認めてきた。しかしモハメド・ビン・スライエム会長は、今後は中立性と自制とが求められるとし、ドライバーは舞台の花形として最も大切な役割、すなわちドライビングに専念するべきだとした。
「我々は架け橋でありたい」とビン・スライエム会長は年頭に述べた。
「スポーツは平和やこうした目的のために活用するべきだ」
「だがFIAを個人的信条を発露するために利用するのは困る。F1の理念からかけ離れてしまう」
フェルスタッペン自身は、議論の的となってはいるがF1とは関係のない問題について、沈黙を守ることを好むドライバーに属している。しかしFIAがドライバーの発言を規制しはじめたことについて、懸念を口にした。
「人はそれぞれ違っているというのが僕の考えだ」とフェルスタッペンは『Sky Sports F1』で述べた。
「人によっては意見の表明を他の人より積極的に行うことがある。僕自身はそれほどでもない。というのは、レーシングドライバーと両立しながら、あらゆることに立ち入ってすべての事実関係を正確に把握しておくことが難しいからだ」
「しかし発言の規制は必要ないように思う。これは基本的に、みんながもう発言できないようにしようという措置だが、僕たちは発言できるべきだと思う」
「もちろん、言ったとおり、ある人は積極的に発言するし、ある人はしない。だが規制までするのは少しやりすぎかもしれない」
今のところ、ハミルトンはFIAの新方針について意見を述べていない。しかしメルセデスの元チームメイトであるバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は、フェルスタッペン同様、FIAが表現の自由を規制することに反対の立場だ。
「なぜFIAが僕たちを管理したいのか、理解に苦しむ」と先週スウェーデンで行われたRoCでボッタスは述べた。
「僕たちには話したいことを話す権利があると思う。それが僕の考えだが、どうなるか推移を見守りたい」
レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーも、ドライバー陣の懸念に賛同の意を表した。F1は「自分の意見を持たない大量のロボットがレースをする」ものであってはならないというのだ。
「我々レッドブルではドライバーの表現の自由を制限したことは一切ないし、思ったことを話してはいけないと指図したこともない。ドライバーには発言する権利があるからだ」とホーナーは述べた。
「ほどよいバランスを見つけるのが大事だ。今の時代、誰でも発言する権利を持っており、それを制限してはならない」
「しかしもちろん、発言は責任をもって行う必要がある。いずれにせよ、自分の意見を持たない大量のロボットがレースをするのは見たくない」
「何に対しても言えることだが、うまくバランスを取ることが大事だ」
FIAの方針転換についてF1ドライバーが批判したところで、近頃F1とビン・スライエム会長との間で生まれてしまったわだかまりを解消することは難しいだろう。
ビン・スライエム会長がアンドレッティ・キャデラックのF1プロジェクトと同チームのF1への参加を公に支持した出来事は、他の複数のチームの不興を買った。しかしビン・スライエム会長が一線を越えたのは、F1の商業権を保有するリバティ・メディアが、サウジアラビアの政府系投資ファンドにそれを売却するかもしれないといううわさが流れた時に、F1に対してつけられたとされる評価額を公の場で一蹴した時だ。
しかし緊張状態が続いているとはいえ、フェルスタッペンはみんないずれ冷静になり、F1とFIA会長との行き違いも最終的には解消するだろうと期待を寄せている。
「それが非常に重要だといつも考えている。もちろん、話し合いが行われているだろうし、彼らもいい関係を維持したいと思っているはずだ」とフェルスタッペンは語った。
「とにかく、この問題が1日も早く解決することを願うよ」
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