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フェラーリ296GTSにイタリアで試乗──クルマを操る純粋な喜びをとことん味わわせてくれる|Ferrari

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フェラーリ296GTSにイタリアで試乗──クルマを操る純粋な喜びをとことん味わわせてくれる|Ferrari

V6プラグイン・ハイブリッドのパワートレーンを搭載した新世代ミドシップ・フェラーリ「296GTB」のスパイダー版として2022年4月にデビューした「296GTS」。トータルでの最高出力が830cvを誇る最新のミドシップ・スパイダーにイタリアで試乗した。

Ferrari 296GTS|フェラーリ 296GTS

フェラーリ、830hpのハイブリッドスパイダー「296GTS」を発表|Ferrari

最高のドライビングプレジャーと日常性を両立させた新世代のミドシップ・スパイダー

V6プラグイン・ハイブリッドのパワートレーンを搭載した新世代ミドシップ・フェラーリ「296GTB」のスパイダー版として2022年4月にデビューした「296GTS」。トータルでの最高出力が830cvを誇る最新のミドシップ・スパイダーにイタリアで試乗した。

Text by YAMAGUCHI Koichi|Photographs by Ferrari S.p.A

296GTBと変わらぬ、エレガンスが漂うエクステリア

フィレンツェの中心部から西へ約100km。ブーツの形をしたイタリア半島の膝の辺りに、イタリア中部トスカーナ地方の地中海に面したマリンリゾート、フォルテ・デイ・マルミがある。肌を刺すような季節外れの強い日差しが夏を思い出させる10月初旬、筆者はこの風光明媚なビーチ沿いの街を訪れていた。V6プラグイン・ハイブリッドを搭載した新世代のミドシップ・フェラーリたる「296GTB」のスパイダー版、「296GTS」の試乗会が開催されたのだ。

このモデルの最大のポイントが、車名の由来である2 . 9リッター(2,992cc)V型6気筒ツインターボ・エンジンと、背後に組み合わされた電気モーターからなるパワートレーン。120度と広いVバンクの間にツインターボ・ユニットを収めた軽量コンパクト(従来のV8ツインターボ・エンジン比でマイナス30kg!)なこのエンジンの最高出力は663cv(馬力)。一方、電気モーターは167cvだから、トータル出力は830cvに達する。まさにレーシングカー並みのスペックである。

そんなパワーユニットを、720cvの3.9リッターV8ツインターボを搭載する「F8トリブート」より全長で46mm、ホイールベースで50mmコンパクトなボディに収め、8段F1デュアルクラッチを介して後輪を駆動する。

ご存じの通り現行フェラーリといえばV12、もしくはV8である。だから、フェラーリのロードカー史上初となるV6エンジンを搭載して296GTBがデビューした時には、てっきり新たなエントリーモデルなのかと思った。830cvというスペックを知り、実際はそうでないことを理解していたのだが、今回、296GTSのステアリングを握り、実感した。このクルマは最高のドライビングプレジャーと日常性を、かつてないほど高い次元で両立させた全く新しいフェラーリなのだと。

さて、フォルテ・デイ・マルミに到着した翌日、試乗の起点となるビーチ沿いのレストランの前に、5台の真新しい296GTSが並べられていた。296GTBと同様、ボンネットからルーフ、そしてリアエンドまで流れるようなラインで構成されたエクステリアは、前後のフェンダーなどにアスリートの筋肉のようなたくましさを感じるものの、全体的にはスリークかつエレガントで、瀟洒な海辺のリゾートに意外なほどマッチしている。

フェラーリ296GTSにイタリアで試乗──クルマを操る純粋な喜びをとことん味わわせてくれる|Ferrarivia Web Magazine OPENERS

「私たちは296GTBと296GTSのプロジェクトを並行して進めてきました」。フェラーリのスタイリングセンターを率いるフラビオ・マンツォーニ氏は、ブリーフィングでそう語ったが、それゆえだろう、ルーフがリトラクタブル・ハード・トップ(RHT)化されたことによるエクステリアデザインへの影響は皆無。296GTBと同様、AピラーからBピラーへと一体感のあるルーフラインを実現している。

ショートノーズ、前方にレイアウトされたコンパクトなキャビン、そしてロングテールというフォルムは、昨今のミドシップ・フェラーリと共通するものだが、296GTSにはどことなくクラシックな雰囲気が漂う。きっとそれは、このクルマが60年代のフェラーリ、特にミドシップ・フェラーリの草分けとして知られる名車「250LM」からインスピレーションを得てデザインされたからだろう。

前述のマンツォーニ氏によると、250LMへのオマージュは特にボディ左右のエアインテーク、リアフェンダー、そしてフライングブリッジと呼ばれるキャビン背後のデザインに顕著に現れているというが、実車を目にして確かにその通りだと感じた。

ルーフは45 km/h までならば走行中でも14 秒で開閉が可能

ルーフは45 km/h までならば走行中でも14 秒で開閉が可能

エクステリアを一通り観察し、いよいよドライバーズシートに収まる。ドライバーを包み込むようにデザインされたインストルメントパネルは、フェラーリ初の量産型PHEVとして2019年にデビューした「SF90」に通じるもの。インストルメントクラスターをはじめとするインターフェイスが完全にデジタル化されたのもSF90と同様で、メーターはドライビングモードなどによってさまざまな表示に変えられるほか、ナビゲーションのマップを映し出すこともできる。

シートや内装には上質なイタリアンレザーがあしらわれ、丁寧に施された精緻なステッチがイタリア製スーツのようなクラフツマンシップを感じさせる一方、ステアリングホイールやセンターコンソールに配されたクロム加工のアルミニウムやカーボンファイバーといったリアル素材が “レーシー”な雰囲気を醸し出す。昨今、時計の世界では「ラグジュアリースポーツ」というジャンルが人気だが、まさにそんな言葉がしっくりくる。エクステリアと同様にスポーティネスとエレガンスが巧みに調和していて、眺めているだけで心が躍るコクピットだ。

センターコンソールのコンパートメントに跳ね馬のエンブレムが施されたイグニッションキーを収め、スターターボタンを押す。この時点では、一般的なPHEVと同様、背後のV6ツインターボは目を覚まさない。せっかくGTSなのだからとセンターコンソールのスイッチを引くと、Aピラーの頂点からルーフがスーッとせり上がり、あっという間にスパイダーボディに変容した。

このアルミ製RHT は、速度が45 km/h までならば走行中でも14 秒で開閉が可能。格納時には二つに分割されて、エンジンベイの放熱特性に変化が生じないようエンジン前方に平らに折り畳まれる。こうした処理により、デザインのバランスも保たれ、296GTBと同様のフラットなリアデッキが実現している。

エンジンカバーの後方部分はガラス製となっていて、運動性能に直結する重心高を下げるべく、限りなく低い位置にレイアウトされたコンパクトなV6ユニットを拝むことができる。オーナーにとってはうれしい演出だろう。

アウトストラーダでは、快適なEV走行が可能

アウトストラーダでは、快適なEV走行が可能

試乗ルートは、フォルテ・デイ・マルミからフェラーリが本社を構えるマラネロまでの約250km。道程には、歴史的なクラシックカーレース「ミッレミリア」の舞台としても知られるフータ峠、ラティコーザ峠という由緒正しいワインディングロードも設定される。かつてミッレミリアで6回の優勝を飾ったフェラーリにとっては縁のある場所だ。最新モデルをドライブするコースとしても、おあつらえ向きといえるだろう。

296GTSでは従来のマネッティーノに加えて、PHEVのパワーマネージメントを切り替える「eマネッティーノ」も備わる。マネッティーノと同様、ステアリングホイールに組み込まれたスイッチで、4つのモードをセレクトできる。

「eドライブ」は電気モーターのみで走行するEVモード。バッテリーがフル充電の状態で航続距離は25km、最高速度は135km/hに達する。「ハイブリッド」は、パワーフローの効率を最大化するようエンジンとモーターを制御する、いわゆるハイブリッドモード。「パフォーマンス」はエンジンを常に稼動してバッテリーの効率を維持し、いつでもフルパワーが発揮できる状態にする、攻めたドライビングに最適なモード。そして「クオリファイ」では、バッテリーの充電を抑えて最大のパフォーマンスを発揮する。

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ちなみに、始動時には自動的にハイブリッドがセレクトされる。右側のパドルを手前に引きギアを1速に入れてアクセルペダルを踏み込むと、296GTSはモーター駆動により音もなく走り出す。830cvのスーパーカーで粛然とビーチサイドを流す。季節外れのひっそりとしたリゾートに、エンジンの咆哮を轟かせるのは少々無粋だ。PHEVのメリットはこんなシーンでも享受できるのだと思った。

アウトストラーダに入り、周囲の流れに合わせて120km/hほどで巡航するが、それでもエンジンは始動しない。キャビンとリアデッキを隔てるガラス製リアスクリーンも効いているのだろう、この速度域ではキャビンへの風の巻き込みもわずかだから、フェラーリのステアリングを握っていることが信じられないほど静かで、快適かつイージーなハイウェイクルーズを楽しめる。まさにフェラーリが新しい時代に入ったことを実感する。

アウトストラーダの制限速度である130km/h付近まで加速すると、V6ユニットは待ってましたとばかりに目を覚ます。モーターとエンジンはトランジション・マネージャー・アクチュエーター(TMA)によって連携し、ハイブリッドモードでは、バッテリーの充電状態やパワートレーンへの負荷に応じてエンジンがオン・オフを繰り返す。その制御は極めて緻密かつ滑らかで、ドライバーにまったく違和感を感じさせないのが素晴らしい。

ドライバーをこれでもかとばかりに高揚させてくれる「ピッコロV12」

ドライバーをこれでもかとばかりに高揚させる「ピッコロV12」

アウトストラーダを下り、穏やかな傾斜のカントリーロードをしばらく上ると、徐々に景色が開けてきた。「世界一美しいレース」と称されたミッレミリアのメインステージを飾るだけあり、フータ峠からラティコーザ峠へといたるルートには、幾重にも連なる山々の稜線を遠方に望む、雄大な景色が広がる。フロントスクリーン越しに壮観な光景を楽しみながら、右へ左へと続くさまざまな曲率のコーナーを駆け抜けていく。ここでの296GTSは、まさに水を得た魚である。

まずV6ツインターボ+1モーターのパワーユニットが素晴らしい。峠道ではeマネッティーノをクオリファイにセレクトしたのだが、先ほどまでのハイブリッド・モードとは打って変わって、完全にエンジンが主役、モーターが脇役に徹し、最大のパフォーマンスを発揮しようとする。

コーナーの出口でアクセルペダルをフロアまで踏み込むと、V6ツインターボはそれこそ息が止まるほど強烈な加速Gを発生させながら、一瞬にしてレブリミットの8,500rpmまで吹け上がる。回転数の上昇にシンクロするように強まる甲高いサウンドも刺激的で、ドライバーをこれでもかとばかりに高揚させるのだ。

「我々は開発の初期段階から、このV6エンジンをピッコロ(小さな)V12という愛称で呼んできました」。V6パワートレーンのプロジェクトリーダーであるアッティリオ・ピエトローニ氏はブリーフィングでそう語ったが、実際にこのサウンドを体験すると、彼の言葉に心からうなずける。

実はこれには、120度という広いVバンク角が寄与しているという。このバンク角を採用することで6つのシリンダーの等間隔爆発が可能となり、自然吸気V12エンジンのごとき高周波のサウンドを実現できたのだと、ピエトロー二氏は付け加えた。

フェラーリのエンジニア陣はこのV6ユニットが発するカンツォーネをドライバーに最大限に堪能してもらおうと、ある装置を開発した。「ホットチューブ」と呼ばれるそれは、導管と共振器からなる、ちょうど医者の聴診器のようなもので、オープン、クローズいずれの状態でも最高のハーモニーがキャビンに届くようチューニングしているという。

「モーターのアシストにより、ターボエンジンでありながら自然吸気エンジンと較べても全く遜色がないアクセルレスポンスを実現しています」。ビークルダイナミクス担当エンジニアのアンドレア・ジャコミーニ氏はそう語ったが、確かにアクセルペダルを操作する右足の動きと直結しているがごとき鋭い加速には、モーターが大きな役割を果たしているのだろう。

特筆すべきは、ドライバーがあくまでスーパーレスポンスを誇るハイパワーな内燃機関を操っていると感じられること。こうしたシーンでの電気モーターの脇役ぶりには、ホント感心させられるのだ。

軽量コンパクトなパワーユニットがもたらしたもの

軽量コンパクトなパワーユニットがもたらしたもの

ハンドリングにも従来のフェラーリとは異なる新しさが感じられた。特にこれまでのミドシップ・フェラーリでは、例えばステアリングの切り始めのレスポンスがかなりシャープで、高い運転スキルを持ち合わせていない人にとっては、ドライバーを寄せ付けないようなナーバスさが感じられた。ところが296GTSはドライバーに対して常にフレンドリーで、走り出した瞬間から身体がボディの隅々にまで拡張したような一体感を得られるのだ。

パワーステアリングは電動式、ブレーキはバイワイヤ方式を採用しているのだが、いずれもフィールが極めて自然な感覚で、ドライバーは自信をもって各操作を行える。身のこなしが極めてシャープなのに、すべての挙動に一切の違和感を感じさせない。296GTSのステアリングを握ったら、きっと誰もがこのクルマがもがもたらす最高のドライビングプレジャーをいつまでも堪能していたくなるだろう。

こうした素晴らしい操縦性には、従来のV8ミドシップモデルに比してコンパクトかつ低重心なボディと、それを可能ならしめている新世代のパワーユニットが大きく寄与しているのは間違いないだろう。それにしても、830cvという途方もないパワーとフレンドリーな操縦性を両立させつつ、オープンエアドライビングが楽しめ、さらに高い日常性をも備えている。全方位的に抜かりないスーパースポーツなのだ。

地中海沿いのリゾートからアウトストラーダ、絶景のワインディングロードから市街地の一般道と、約5時間のドライブを経て、マラネロに到着したときには完全に日が暮れていた。気候変動の影響か、10月にしては異例の暖かさもあり、その間、筆者は一度もルーフを閉じることがなかった。

本来ならばクローズ状態での走りも確かめるべきだった。しかし、刻一刻と変わる情景やその土地土地の香り、顔をなでる風、そしてピッコロV12が奏でるサウンドを五感で感じながら296GTSをドライブしていたら、ただただ気持ちが高揚し、ルーフを閉じるのをうっかりしてしまったのだ。

296GTSは、リアルにクルマを操って移動するという純粋な快楽を、ドライバーにとことん味わわせてくれる。自動車を取り巻く世界が100年に1度といわれる変革期を迎える現在においても、こうしたクルマの持つ根源的な喜びというのは捨てがたい。296GTSのドライブを通じて、改めてそんな当たり前のことを実感した。

ところで、今やスーパースポーツとて逃れられない環境性能に目を向けると、F8トリブートが燃費12.9L/100km/h、CO2排出量292kg/km(いずれも複合)なのに対し、296GTSは6.5L/100km/hと153kg/kmを実現している。フェラーリが今後もいかに走ることの喜びとサステナビリティを両立させていくのか、いちファンとしても注目していきたい。



※燃費、CO2排出量はいずれもWLTPによる

Ferrari 296GTS|フェラーリ296GTS

ボディサイズ|全長 4,565 × 全幅 1,958 ×全高1,191 mm

ホイールベース|2,600mm

トレッド前/後|1,665 / 1,632mm

車両乾燥重量|1,540kg 

重量配分 前/後|40.5% / 59.5%

エンジン|2,992 cc 120°V型6気筒DOHC+ターボ

最高出力(ICE)|663cv

最高出力(ハイブリッドシステム)|610kW(830 cv) / 8,000 rpm

最大トルク|740Nm / 6,250rpm

最高許容回転数|8,500rpm

圧縮比|9.4:1

高電圧バッテリー容量|7.45kWh

トランスミッション|8段F1デュアルクラッチ

駆動方式|MR

ブレーキ|398×223×38mm / 360×233×32mm

タイヤ 前/後|245/35ZR20 / 305/35ZR20

乾燥パワーウェイトレシオ|1.86kg/cv

0-100km/h加速|2.9秒

0-200km/h加速|7.3秒

200km/h-0km/h|107m

最高速度|330km/h

フィオラノラップタイム|1分21秒80


フェラーリ

https://auto.ferrari.com/

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みんなのコメント

4件
  • 少しでも悪いこと書けば
    次から乗せてもらえないからな
    それでジャーナリストとは聞いて呆れる
  • フェラーリ社に招待されて、ダメだこりゃ、と、書けるライターはいない。
    清水さん意外は、そもそもフェラーリなんか所有すらしていない借り物経験者ばかり。遊びで乗るなら、イイ!楽しい!、になるわな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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