2018年6月25日に発売されたダイハツの新型軽乗用車「ミラ トコット」は、発売後1ヶ月で計画の3倍となる9000台を受注し、好調なスタートを切っている。開発にあたり、女性だけの企画チームがコンセプトを煮詰めたというミラ トコットに試乗してみた。
エントリー層にアピールするコンセプト
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新登場のトコットは、ミラ・シリーズに属するハッチバック・モデルで、従来のココアの後継モデルともいえるが、ポジショニングとしてはココアの代替わりではなく、新たなブランドとなる。ハッチバック・ボディであることから分かるようにミラ イースと共通のプラットフォームを使用しているが、アッパーボディは専用開発だ。
コンセプトは、若い女性の感性を重視し、キラキラなデコレーションや女性らしさを強調する要素を抑え、シンプルでしかも愛着の湧くデザインを目指した。もうひとつは、普通乗用車より稼働が多く、毎日の通勤や買物に使用される実情を前提に、運転しやすく、取り回しがよく、運転に対する不安感をできるだけ少なくすることも目指している。
つまり、女性だけではなく初めてクルマを購入するエントリー層、運転に不安を自覚している熟年層にもアピールするクルマだ。トコットはダイハツとしては初の試みとなる女性プロジェクト・チームが企画構想、コンセプトメイキングを行なったため、女性用のクルマに特化したモデルと思われがちだが、過剰なデザインを排除しシンプルさや明快さを求め、さらに運転をストレスと感じるユーザー層を意識したクルマで、ある意味でクラスレスであり、想定されるユーザー層は幅広いといえる。
そのため、開発の目標は「誰でもやさしく乗れるエフォートレスなクルマ」とされている。「エフォートレス」という言葉は本来はファッション用語だが、頑張らない、気楽な、肩肘張らないといったニュアンスで、日常的にストレスなく乗ることができることを意味し、ドライビングに集中するスポーツカーなどとは対極の価値観だ。
またトコットは、ダイハツの軽自動車の基本コンセプトである、低燃費、低価格、安全・安心を追求した良品廉価を追求し、初めてクルマを購入する層に、価格面でもアピールする力が与えられている。
インテリアと装備
トコットのボディサイズは、全長3395mm、全幅1475mm、全高1530mm、ホイールベース2455mmで、ミラ イースとの比較では、全高が30mm高められている。これはAピラーの角度を15%ほど立てたためで、その結果室内高も1270mmとミラ イースより30mm高くなり、より広いヘッドクリアランスを確保すると同時に、ボクシーでバランスの良いフォルムを生み出している。
サイドビューでは、サイドウインドウのラインを水平にすることでバックする時の斜め後方の視界や、見切りの良さを生み出している。
つまりトコットはハッチバックの基本要素を重視し、ボディのフォルムも端正で合理的に見え、これがシンプルなデザインとマッチして、軽自動車的ではないこのクルマ独自の存在感を生み出している。
インテリアは、水平基調のインスツルメントパネルにシンプルなカラーリングだ。シート生地のファブリックは、モダンな仕上げになっており、シンプルさと質感の良さがうまく両立している。また細かな点では、ドライバーズシートに座ってボンネットが見えるといった点も運転時の安心感を生み出す技の一つだ。
またチルト式ステアリングや運転席シートリフター(L、L”SAIII”を除く)も装備され、小柄なドライバーでも運転ポジションに不満は出ないだろう。
装備的には、運転支援システムとしてデンソー製のステレオカメラと超音波センサーを組み合わせたスマートアシストIIIを装備。またG”SAIII”は、パノラマモニター対応ナビを選択すると軽自動車初のパノラマモニター(X”SAIII”にオプション設定)、超音波ーコーナーセンサー(SAIIIモデルに標準装備)など、ドライバーの運転をサポートする装備をしている。
パノラマモニターは走行中でもスイッチを押すと前後左右の映像をディスプレイに表示でき、駐車時だけでなく狭い場所でのすれ違いや、見通しの利かない狭い路地からの発進などをサポートできる。
安心感のある走り
搭載するエンジンは従来からのKF型の自然吸気3気筒で、52ps/60Nmの出力。ターボ仕様は設定されていない。トランスミッションはCVTのみだ。トコットのJC08モード燃費はFFで29.8km/L、4WDで27.0km/Lで、燃費チャンピオンを狙ったミラ イースの34.2km/L~35.2km/Lより低めだが、その分だけCVTのチューニングも自然でリニア感のある加速になっているので、中間加速などでの走りやすさの点では、トコットに分がある。
市街地でも郊外路でもアクセルの踏み込みに応じて素直に加速し、CVTの滑り感も少なく気持ちよく走ることができる。また高速道路でもエンジン音がうまく抑えられ、100km/hの巡航でもストレスは大きくない。
トコットもDモノコック構造を採用しており、ボディ全体の剛性感、しっかり感も軽自動車離れしたレベルにあり、こうした点もドライバーにとっては安心感につながっている。ステアリングの操舵力はミラ イースより低速側を軽くしているというが、想像していたような驚くほどの軽さではなく自然に扱うことができる。また60km/hを超えるとステアリングは、より手応えが出るようになっている。
乗り心地とハンドリングのバランスも優れている。タイヤは燃費指向だが荒れた舗装路での入力も大きすぎず、コーナリングでのボディの動きもゆっくりしている。ハンドリングも緩く、おだやかで、市街地でも高速道路でも安心感が感じられた。
このように、トコットは幅広い層のドライバーにとっても乗りやすく、扱いやすいバランスの取れたクルマで、女性ユーザー層に極端にフォーカスしているわけではないことが確認できた。
またトコットは、アナザースタイル・パッケージを好みに応じて選択することもできる。かわいい系のスイートスタイル、都会派系のクールスタイル、ラグジュアリー系のエレガントスタイルという3種類が設定されており、いずれも10万円弱の価格のパッケージ・オプションになっている。自分らしさをカスタマイズしたいユーザーにとって手を出しやすいパッケージだ。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>
ダイハツ ミラ トコット 諸元表
【メーカ希望小売価格(消費税込み)】
ダイハツ ミラ 関連情報
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