4年で終止符が打たれたマテウのビジネス
1953年のポルトガル・グランプリと同時に開催されたスプリントレースでは、1100ccクラスへ15台が参戦。前年以上に熱い戦いが繰り広げられた。
【画像】デビュー戦から「1-2」フィニッシュ! ディマ1100 同時期のスポーツモデルと比較 全139枚
格上といって良かったパナールの他、パワフルなポルトガル勢もグリッドに並んだ。DMからフェラーリ225 Sへ乗り換えたドライバー、ジョアキン・フィリペ・ノゲイラ氏も、ライバルになった。
対するDMは若手ドライバーを招き、4台体制で予選を通過。本戦では、ドゥアルテ・ロペス氏が4位、フェレイラ・バプティスタ氏が8位、フェレイラ ダ・シルバ氏が13位でフィニッシュ。先輩のジュリオ・シマス氏は、機械的な不調でリタイアに喫した。
既に、DMの競争力不足は否めなかった。最後まで下位集団から抜け出せず、750ccクラスのマシンと比べても、1時間15分のレースで2周多く走れただけだった。
リスボン郊外に完成した、新しいモンサント・フォレストパーク・サーキットでも、DMは上位争いに加われなかった。量産モデルを展開するというディオニシオ・マテウ氏のアイデアも、フェードアウトしていった。
1954年は、一層戦いが激化。ポルトガル勢もポルシェを手配し、1.5L以下へ再編されたクラスで、DMが表彰台へ近づける見込みは薄かった。シーズンでの最高位は、クラス6位。僅か4年で、マテウのモータースポーツ・ビジネスには終止符が打たれた。
3台のレーシングカー、DMの行方はわからない。しかし1台だけ、1951年のポルトガル・グランプリで横転した車両は生き残っている。
目指された純粋さを物語る無駄のないカタチ
当初からDMの前身、ディマ1100をドライブしてきたエリシオ・デ・メロ氏は、その後にLF-11-52のナンバーで登録されたマシンを入手。オーナーとなり、20年間ほどポルトガルで開かれるヒルクライムやラリー・イベントへ参戦した。
彼が手放すと、建築家でポルトガル自動車協会会長も務めたアントニオ・カルドーゾ・リマ氏が購入。30年ほど状態を維持し、現在の所有者、マルガリーダ・パトリシオ・コレイア氏とペドロ・フィリペ氏がクラシック・コレクションの1台として譲り受けた。
2人は丁寧なレストアを監督。完璧な状態に復元し、近年もポルトガルの自動車イベントへ積極的に参加している。
1930年代のヒルクライム・イベントの1つ、ランパ・ドス・バレイロスを再現したクラシックカー・リバイバルで、宝石のような姿を目撃することができた。無駄のないフォルムが、開発時に目指された純粋さを物語る。
ドアはとても軽く、ダッシュボードはシンプルなアルミ製。フロントに載る小さな4気筒エンジンが、僅かにボディを震わせる。車重は約500kgと軽く、加速は活発。ショートなギア比で一気に吹け上がり、2速を飛ばして3速を選んでも問題ない。
大西洋に浮かぶマデイラ諸島、フンシャルの町の海岸線を登る。66psと限られたパワーを引き出すには、相応の回転数を保つ必要がある。アクセルとクラッチのペダルは扱いにくい。シフトレバーにも癖があるが、心地よく軽快に走らせられる。
モータースポーツへ向けられた相当な熱量
フィアット由来の4気筒ユニットは、カムに乗るとドライな咆哮を響かせ、平坦な場所なら積極的に加速。スルスルと、200km/hまで加速していきそうな勢いがある。
3速は、緩めのカーブで有用。ところが接地面が細く、ズルズルと外側へ押し出される。ヘアピンへ突っ込むと、フロントタイヤが路面で削られるのがわかる。登り坂なら、アンダーステアは控えめになるが。
前後ともドラム式のブレーキは、予想通りの強さ。レースという条件では、心もとないだろう。カーブでシフトダウンすると、リアアクスルが悶える。加速に備えて落ち着かせるには、挙動へ集中する必要がある。
コクピットはタイト。上半身が露出するが、主要な操作系は自然な位置にある。フロントガラス越しに、盛大に空気が流れ込んでくる。レストアで得た、座り心地の良い肉厚なシートが、ドライバーの風当たりを強くしているようだ。
ボディは再塗装され、内装の一部は仕立て直された。それでも、LF-11-52は驚くほどのオリジナル状態を保っている。
もし、ポルトガルで最初のスポーツカー・メーカーになるべく、予算が割かれていなければ。1.5L以下クラスでの競争力向上のため、DMは大きく姿を変えていた可能性が高い。ポルシェ550 スパイダーのような、ミドシップになっていたかもしれない。
とはいえ、90年前のクルマ好きなポルトガル人がモータースポーツへ向けた情熱は、相当な熱量だったことは間違いない。残された1台が、それをはっきり示している。
協力:マルガリーダ・パトリシオ・コレイア氏、ペドロ・フィリペ氏、マデイラ観光局
撮影:ジョエル・アラウジョ(Joel Araujo)
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