約1ヵ月のサマーブレイクが終わり、各F1チームは今季残りの10戦のうち、最初のオランダGPに臨む。
F1が夏の小休止から目覚めた今、見逃しているかもしれない重要なトピックと、疑問について振り返ってみよう。
■角田裕毅、夏休みでリフレッシュ完了。シーズン後半戦に向けて「序盤の好調を維持したい」
■ペレス続投を決めたレッドブル。大きな過ちとなるのか?
夏休み前最後のレースだったベルギーGPの直後、レッドブルは更迭の噂もあったセルジオ・ペレスの続投を決めた。
ペレスは5月頃から速さと安定性を欠き、大苦戦を強いられている。結果を見てもそれは明らかで、チームメイトでポイントリーダーのマックス・フェルスタッペンの半分以下のポイントしか獲得できていないのだ。
レッドブルはペレスの後任候補のドライバーについて、誰ひとりとして明確かつ即座に昇格できる人材がいないと考え、事態を好転させるためにペレスを支援することを決めた。
motorsport.comの取材に応じたテクニカルディレクターのピエール・ワシェは、レッドブルがペレスにとってより快適なマシンを作るために、残されたアップグレードでできることはすべて行なうと明言した。
ただ現実には、ペレスとレッドブルが困難な立場に置かれていることに変わりはない。2つのF1チームと大規模な若手ドライバー・プログラムを持つレッドブルにおいて、ペレスの後を継ぐのにふさわしいドライバーがいないのは不可解なことだ。
またマクラーレンがコンストラクターズランキング首位のレッドブルに42ポイント差まで迫っており、レッドブルとしてはペレスがペースを上げ、表彰台争いの常連となることを切実に望んでいる。
今のところ、レッドブルはペレスを支持し続けることを決めたが、シーズン後半戦にさらなる動きがあっても不思議ではない。
マクラーレンはタイトルを狙えるのか?
ペレスとレッドブルがつまずく中、マクラーレンは血の匂いを嗅ぎつけている。レッドブルを打倒し、タイトルを獲得することへの期待が強まっているのだ。
チーム代表のアンドレア・ステラの下、マクラーレンは目覚ましい開発曲線を描いており、特定のサーキットでは最速のマシンを手に入れている。一方でミスが相次ぎ、ポテンシャルを十分に引き出せていないレースもあった。
そうしたミスもありながら、過去8戦で最も多くのポイントを獲得したチームがマクラーレンなのだ。同じ傾向が続けば、9月末のシンガポールGPや10月のアメリカGPでレッドブルに追いつく可能性がある。
フェラーリはマクラーレンからわずか21ポイント差でランキング3番手につけているが、最新のアップデートに問題があったため、マクラーレンに2番手を奪われ、6月以降はトップ4で最も得点が低いチームとなっている。高速域でのバウンシング問題解決に力を注いでおり、これが長引けばタイトル獲得は無理だろう。
メルセデスは現状ランキング4番手だが、直近の4戦で3勝をマークするなどレッドブルやマクラーレンと互角に渡り合っている。
かつてF1を支配しながら現行レギュレーション下では苦戦してきたメルセデス。レッドブルに142ポイント、マクラーレンに100ポイント差をつけられていることを考えると、その復活はタイトルを争うには遅すぎるようにも思えるが、トップチームが互いにポイントを奪い合うことで、間接的にライバルの運勢に影響を与えることになるだろう。
レッドブルは重要な柱を失ったのか?
伝説的なデザイナーであるエイドリアン・ニューウェイに続き、レッドブルは現スポーティングディレクターであるジョナサン・ウィートリーを失うことになる。
57歳のウィートリーは今季限りでレッドブルを去り、アウディF1のチーム代表に就任するのだ。
ウィートリー退任の噂が最初に流れたのは5月のマイアミGPの頃で、長年レッドブルを支えてきたウィートリーはまだ新契約に合意していなかった。
ウィートリーがF1でチーム代表になるという野心を抱いていることが知られており、レッドブルはそのような機会が訪れたとしても彼の邪魔はしないと考えられていた。
それが今、元フェラーリ代表のマッティア・ビノットとダブルマネジメントという形で、アウディで実現したのだ。
レッドブルはニューウェイ、そしてウィートリーの離脱によって大きな悪影響はないと断固として主張している。むしろ体制を一新する好機と見て、チーム内部からスポーティングディレクターを起用するつもりだという。
とはいえ、ウィートリーはレッドブルを支えてきたもう1人の重要な柱であり、彼の後任は大きな責任を背負わされることになる。チームはフェルスタッペンを安心させ、次のドミノを倒さないようにしなければいけないのだ。
■アルピーヌまたチーム代表交代
アルピーヌは、ブルーノ・ファミンの後任として新たにオリバー・オークスが新チーム代表に就任した。
オークスは27歳だった2015年からジュニアシリーズの強豪チーム、ハイテックを率いてきた。現在36歳となった彼は、現代F1で最も若いチーム代表のひとりとなる。
技術責任者としてマクラーレンからデビッド・サンチェスを獲得したのに続き、オークスはアルピーヌが現在の窮状を打開するために構築しようとしているパズルの最新のピースだ。
ルノーはフランスでのパワーユニット開発プログラムを中止し、カスタマーとしてメルセデスのパワーユニットを導入すると見られており、復活に向けて大きな一手を打とうとしている。
そんな中でのアルピーヌでの仕事はオークスにとって厳しい試練となるだろう。ルノーのルカ・デ・メオCEOや、アドバイザーとしてチームに戻ってきたフラビオ・ブリアトーレは甘くないはずだ。
2025年のドライバー市場、収束はまもなく?
長らく去就を決めかねていたカルロス・サインツJr.がウイリアムズ入りを決めた。移籍市場のブロッカーとなっていたサインツJr.が動いたことで2025年に向けて残された最後のシートがまもなく埋まると見られている。
アルピーヌはハースに移籍するエステバン・オコンの後任として、ピエール・ガスリーのチームメイトにリザーブドライバーのジャック・ドゥーハンを起用する方向で調整しているようだ。
ザウバーに関しては、現在所属しているバルテリ・ボッタスや周冠宇のどちらかを、すでに起用が決まっているニコ・ヒュルケンベルグと組ませるのではないかと考えられている。
残る2025年のシートはふたつだが、それが埋まるにはまだ時間がかかるかもしれない。
ルイス・ハミルトンの後任が決まっていないメルセデスは、育成ドライバーとしてF2に参戦しているアンドレア・キミ・アントネッリを昇格させるかどうかを判断する時間が十分あり、理論上はシーズン終了まで待つことも可能だ。
■リカルドとローソンはどうなる?
レッドブルも、姉妹チームであるRBのドライバーラインアップをまだ完全には決定していない。
ペレスのレッドブル残留と同様、ホーナーとマルコは角田裕毅のチームメイトとしてダニエル・リカルドをシーズン後半も起用することを決めた。
しかしレッドブルにはまだリザーブドライバーのリアム・ローソンが控えている。2025年にレッドブルが彼にF1シートを与えなければ、ローソンはレッドブルを離れることができるようだ。
負傷したリカルドの代役として、2023年に計5戦に出場したローソンは、レッドブルとRBのドライバーたちにプレッシャーを与える完璧な存在だったが、彼を失うリスクにレッドブルは直面しているのだ。
今後数週間のペレスとリカルドの活躍次第では、ローソンは2025年にRBのシートを獲得し、F1フル参戦を果たすかもしれない。もしそれが実現しなければ、レッドブルは次のリザーブドライバーとしてF2のフロントランナーであるアイザック・ハジャーを指名する可能性がある。
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