限られた開発予算 革新性すら備えたマシン
1945年に第二次大戦が集結すると、英国では10年ほどの間に11か所のサーキットが次々とオープンした。グッドウッドにキャッスルクルーム、スラクストン、スネッタートンなど、その殆どは、不要になった軍の飛行場が転用された。
【画像】ベースは自社初のサルーン ヒーレー・シルバーストン 同時期のスポーツレーサー オースチン・ヒーレー100も 全127枚
1950年代が始まる頃には、本格的な設備も整えられた。国際イベントの開催が可能な場所も登場する一方、アマチュアドライバーによるクラブマンレースも積極的に開かれた。そんな中で、特に注目を集めたのがシルバーストン・サーキットだろう。
グレートブリテン島の中南部に位置し、1950年には初のF1世界選手権として、英国グランプリが開催されている。この記念すべき大会では、イタリアのレーシングドライバー、ジュゼッペ・ファリーナ氏が世界初となるF1のポイントを獲得した。
この場所の名前が与えられた、スポーツレーサーも作られている。今日の筆者がステアリングホイールを握っているのが、まさにそれ。北側のストレートから、コプス・コーナーへ突っ込む。興奮するなといわれても、難しい。
1950年は、2024年とレイアウトがだいぶ違っていた。しかし、ヒーレー・シルバーストンは74年前の姿のまま。生産数は、後にコンバージョンされた3台も含めて108台と多くはなかったが、戦後のクラブレース界へ与えた影響は巨大だった。
パワートレインは、特別とはいえなかった。一般的なアイテムを組み合わせつつ、ドナルド・ヒーレー氏の限られた開発予算で、革新性すら備えるマシンが創出された。
ラリー・モンテカルロで優勝したキャリア
自宅からサーキットまで快適に運転でき、そのままレースイベントへ参戦。完走した後は、再び自宅まで平穏に帰ることができた。英国価格は1000ポンドを切り、アマチュアドライバーにとっては、非常に魅力的な選択肢になった。
グレートブリテン島南西部、コーンウォール州に生まれたヒーレーは、幼い頃から飛行機に憧れていた。第一次大戦では、パイロットとして出撃。任務後は、航空省の地上部隊に就いた。
平和が戻ると、彼は帰郷。コーンウォール州の北岸、ペランポースの町に自身のガレージを開設する。刺激を求めて参戦したラリーイベントで頭角を現し始め、1920年代に実力を磨いていった。
レーシングドライバーとしてキャリアの頂点に達したのは、ラリー・モンテカルロへ挑んだ1931年。過去最も過酷な内容となったが、4.5Lエンジンのインヴィクタで、優勝を掴んでいる。
業界から注目を集めるようになった彼は、自動車メーカーのライレーへ就職。その後、トライアンフへ移ると技術主任へ昇格し、スポーツカーのドロマイト・ストレート8やサザンクロス、グロリアなどの開発へ携わった。
ところが、1939年にトライアンフは倒産し、自動車メーカーのスタンダードが買収。第二次大戦を挟みヒーレーは独立を決め、技術者のアキレ・サンピエトロ氏とベン・ボウデン氏を招き入れ、1946年にドナルド・ヒーレー・モーター社を立ち上げる。
サルーンのエリオットが初の量産モデル
拠点となったのは、グレートブリテン島中部のローワーケープ。使われなくなった英国軍の格納庫が、ワークショップになった。
シャシーは独自に設計され、最終的にはヒーレーのすべての量産モデルで基礎骨格を担った。パワートレインなどのメカニズムは、実績のあるライレー社から調達し、優れた費用対効果を生み出した。
当初のエンジンは、オールスチール製の2.4L直列4気筒。カウンターウェイトでバランス取りされたクランクシャフトを備えるツインカム・ユニットで、オリジナルの最高出力は控え目な86psだった。
しかし、サイドドラフトのSUキャブレターを2基組むなど、各部を改良。105psを引き出し、新しい自動車メーカーとして話題を集めるのに充分な性能を得た。
初の量産モデルとなったのが、流線型のアルミニウム製ボディをまとう美しいサルーン、ヒーレー・エリオット。その頃の自動車雑誌のテストでは、168.4km/hの最高速度を記録している。
ドナルドの長男、ジェフは1948年のイタリア・ミッレ・ミリア・レースへ出場。エリオットのロードスター仕様、ウェストランドで総合9位という好成績を残した。
モータースポーツを前提にしたマシンは、必然的に次のステップとして計画された。公道での乗りやすさを損なうことなく、サーキットで有利な戦いも可能という、絶妙なバランスが狙われた。
コンポーネントの総和以上の仕上がり
かくして、1949年に登場したのがシルバーストン。英国だけでなく、重要な新市場になっていた北米でのクラブレース人気へ同調するように、予算の限られたアマチュアが想定された。普段使いも可能で、高くない価格を正当化した。
見た目は葉巻型のレーシングカー然としているが、その内側はエリオットとほぼ同一。シャシーやパワートレインを流用し、英国価格は975ポンドへ抑えられた。その頃の英国では、1000ポンドを超えると購入税が大幅に増えたことも影響しているが。
シルバーストンは、個々のコンポーネントの総和以上といえる完成度にあった。ライレー由来の4気筒エンジンは、後方部分を削って短縮されたスチール製ボックスセクション・シャシーの中央寄りへ搭載。重量配分が改善されていた。
ホイールベースは、エリオットと同じ2590mm。サスペンションはフロントが独立懸架式で、コイルスプリングにレバーアーム・ダンパー、アルミニウム製スイングアームで構成された。
リア側は、ラジアスアームとコイルスプリング、伸縮式ダンパー、パナールロッドという組み合わせ。扱いやすい操縦性を叶えていた。
ステアリングの設計は、ヒーレーが特許を取得。回転プレートとロッドを用いたもので、高精度を叶えつつキックバックを抑えた。望ましい調整は難しいが。
滑らかなスタイリングは独特。アルミ製の2シーター・ボディを成形したのは、コーチビルダーのアビーパネルズ社で、プロポーションは低い。フロントガラスの高さを調整でき、1番下げると一層低く見える。
この続きは、ヒーレー・シルバーストン(2)にて。
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