シロン、生産車による新しい速度記録
生産車による新しい速度記録304.773mph(490.4846km/h)を達成したブガッティ・シロンがロサンゼルスモーターショー2019で初めて一般公開された。
市販のブガッティ・シロンは420km/hで速度リミッターかかるが、ブガッティ社によってリミッターを解除されたブガッティ・シロンは490.4846km/hの驚異的な速度記録を達成した。
ドイツにあるVWグループのエーラ・レシエンのテストコースにおいて、ルマンの勝者であり、ブガッティの公式テストドライバーである英国人のアンディ・ウォレスがこの速度記録を残した。
この「市販仕様に近い」というブガッティ・シロンには追加のセイフティセルと空力的な変更、よりハイギアな7速に加え、標準の1500psから1600psにパワーアップされた8LのクアッドターボW16エンジンが搭載される。
速度記録車の市販バージョンであるシロン・スーパースポーツ300+は今年初めにイタリアで開催されたブガッティグランドツアーラリーで発表。価格は310万ポンド(4億3469万円)、生産台数は30台に限定され、2021年の中旬には最初の顧客に引き渡される予定である。
ミシュラン・タイヤは特別に開発
482km/hを超える速度では、1分間でタイヤは4100回転。発生する強い力に対応するためミシュラン・パイロット・カップ2タイヤが特別に開発された。
個々のタイヤはラジアルバンドが互いに接触していないことを確認するため、X線で検査された。市販のシロンのスピードでは問題にならないことだが、より高速においてタイヤに望ましくない加熱点を生み出す原因となる。
高速で回転する車輪の大きなジャイロ効果が超高速域で課題になったこともウォレスは認めた。「ジャイロ効果は322km/hではほとんど感じませんが、482km/hでは巨大です」と走行後、AUTOCARに彼は語った。
「主に前輪から感触が伝わるため、ステアリングで感じます。回転するコマのように、動き始めたら、止まらないのです」
空力パーツ、ダラーラ社が設計
ブガッティ・シロンの速度記録のための空力用のパーツは、イタリアのモータースポーツスペシャリストであるダラーラ社が設計した。
速度が高すぎて風洞で試験することができないため、コースで走行する前にシミュレーションはできなかった。
ニュートラルなダウンフォースが目的であったが、車両の構造に起因する力は残る。
ウォレスはエーラ・レシエンの8.8kmにおよぶ長い直線路の最近再舗装された部分でクルマがより高い速度で不安定であることも発見。
「普通のクルマではとんど気づきませんが、その速度ではわかりやすかったですね」と彼は言い、「技術チームで『the jump』という言葉ですぐに浸透しました」
エーラ・レシエンで4日が経過すると、シロンは482.5km/h(299.8mph)の最高速に達し、300mphの壁に徐々に近づいていったが、ウォレスはより速く走るために、苦労していた。
そして、記録をうちたてたラップでは「the jump」が起こった時点でも、怖さより自信が勝ったという。「少し蛇行しましたが、それでもこれまでで最高の状況と思いました。横風は少し弱く、あとは目標達成のためにプッシュするのみでした」
記録達成「やめる」 他の分野に焦点
ウォレスは車上のGPSディスプレイで490km/hを確認し、記録を更新したことを知った。
一方、遠隔での測定は追い付かず、最大で479km/hを示していた。車両がピットエリアにもどってからも数分間は300mphの壁を破ったことにクルーは気付かなかった。
「わたしが無線で大変うれしそうにしている理由をクルーは理解できなかったんですね」とウォレス。その後、シロンのオンボードデーターレコーダーで記録は確認された。
ステファン・ヴィンケルマン社長は究極のスピードを追及する会社の目標は達成されたと述べる。
「わたしたちは世界最速の車をつくることを何度か達成してきました。将来的には他の分野に焦点を当てます」と公式リリースで述べた。
「ブガッティははじめて300mphを超えました。その名は歴史に記され、永遠に残るでしょう」
ウォレスは、以前にマクラーレンF1とジャガーXJ220で速度記録を達成しており、生産車での速度記録は今回で3度目である。
「これはかなりクールなことですね」と彼はAUTOCARに語った。「2年前ですら、わたしは300mphを超えるだろうとはまったく想像できなかった」
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