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海外ライターF1コラム:F1カレンダー24戦の椅子取りゲーム。新規参入を狙う国々と、既存GPの契約状況

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海外ライターF1コラム:F1カレンダー24戦の椅子取りゲーム。新規参入を狙う国々と、既存GPの契約状況

 ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、F1開催を目指す国々と、現グランプリ開催地の現状に焦点を当てた。

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海外ライターF1コラム:F1と中国の20年にわたるラブストーリー。政略結婚から真実の愛が生まれた2024年

 F1は今年、史上最も早いタイミングで翌年のスケジュールを確定、2025年のカレンダーを4月のうちに発表した。比較的簡単にスケジュールがまとまったのは、2025年のカレンダーは2024年と同じ開催地の同じ24戦から構成されるものだったからだ。

 今後はそれほど簡単にスケジュール確定まで持っていくことはできないだろう。新たにF1カレンダー入りを望む国が多いものの、チームとドライバーにとっては合計24戦が譲れない最大数だ。

 カレンダー入りを希望する国の一部をここで挙げてみよう。そのひとつは韓国だ。2010年から2013年に霊岩(ヨンアム)でグランプリが開催されたが、当時は成功を収めることができなかった。今韓国は、ソウル国際空港があるソウル郊外の仁川でカレンダーに復帰したいと考えている。

 インドGPは、2011年から2013年の3回、デリー郊外のブッダ・サーキットで開催された。しかし地方当局が10チームの収入の一部に課税するという動きを見せた後、F1はインドから去った。現在インドは、課税に関して、より現実的な見方をしているともいわれる。ナレンドラ・モディ首相は故郷の西海岸グジャラート州でグランプリを開催するという案を支持している。

 トルコも再びグランプリを開催することを夢見ている。F1は、2005年から2011年まで使用されたイスタンブール・パークに、コロナ禍の2020年と2021年に復帰。野心的な新しい会社がこのトラックをを引き継ぎ、FIA会長モハメド・ビン・スライエムは、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とトルコGP復活について交渉を行っている(ただしFIA会長にカレンダー問題において大きな権限はないと思われる)。

 中国GPの後、F1のCEOステファノ・ドメニカリはタイを訪れ、セター・タウィーシン首相とグランプリ開催の可能性について話し合った。レッドブル・グループの共同オーナーはタイのビジネスマンであることを考えると、タイGPの計画を再燃することは現実的であると考えられる。現在は、バンコクのストリートサーキットで開催する案が検討されている。

 F1は長年にわたり、現在グランプリが開催されていない唯一の大陸であるアフリカでレースを開催しようとしてきた。数年前、南アフリカのキャラミ・サーキットでレースを開催する計画が進んでいたが、最終的に財政上の問題のためにそのアイデアは放棄された。現在は、モロッコ、ルワンダ、マダガスカルがF1への野心を抱いているが、アフリカでのグランプリが実現するのは数年先のことになりそうだ。

 サウジアラビアはすでにジェッダでF1を開催しているが、同国には大きなプランがあり、首都リヤド近郊のキディヤに新設されるコースが2028年か2029年に完成した際には、ここでもグランプリを開催したいと目論んでいる。

 アメリカでは現在3つのレースが開催されている。しかしF1への関心は依然として高まっており、F1のライセンス事務所が「シカゴグランプリ」という名前を登録したことが知られている。

 ヨーロッパ内では、新たにカレンダー入りを望む国はさほど多くない。2026年からはマドリードのストリートサーキットがスペインGPを引き継ぐことになるが、バルセロナ・カタロニア・サーキットは、おそらくは『カタロニア・グランプリ』という名称で、カレンダーにとどまりたいと考えている。

 このように、24戦から成るカレンダーの一席を得たいと考える国が多数あるため、現在グランプリを開催するサーキットには大きなプレッシャーがかかっている。2024年と2025年のカレンダーに含まれている各サーキットの契約状況を以下にまとめた。

■グランプリ/サーキット別F1開催契約状況

■バーレーンGP(バーレーン・インターナショナル・サーキット)
第1回開催:2004年
合計開催数:20回
現在の契約期間:2036年まで

■サウジアラビアGP(ジェッダ・コーニッシュ・サーキット)
第1回開催:2021年
合計開催数:4回
現在の契約期間:2030年まで
 キディヤの新サーキットが完成すれば、開催地はジェッダから移動する予定。しかしサウジアラビアは2戦を開催することを望んでおり、豊富な資金を持つことを考えれば、それが実現する可能性は十分ある。

■オーストラリアGP(アルバートパーク・サーキット)
第1回開催:1996年
合計開催数:27回
現在の契約期間:2037年まで
 現契約下で、オーストラリアは、2025年を含む5回、開幕戦を開催することが決まっている。

■日本GP(鈴鹿サーキット)
第1回開催:1987年
合計開催数:34回
現在の契約期間:2029年まで

■中国GP(上海インターナショナル・サーキット)
第1回開催:2004年
合計開催数:17回
現在の契約期間:2025年まで
 政治的、経済的な面において、F1にとって中国は以前ほど重要ではなくなってきている。中国GPはアジアの他の地域でのレースに置き換えられる可能性がある。

■マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)
第1回開催:2022年
合計開催数:3回
現在の契約期間:2031年まで

■エミリア・ロマーニャGP(イモラ・サーキット)
第1回開催:1980年(イモラでのF1開催)
合計開催数:30回(イモラでのF1開催)
現在の契約期間:2025年まで
 イモラはF1 CEOドメニカリの故郷ではあるが、エミリア・ロマーニャGPは、2025年を最後に消滅するものと考えられている。

■モナコGP(モンテカルロ)
第1回開催:1950年
合計開催数:69回
現在の契約期間:2025年まで
 これまでモナコには特別な待遇が与えられ、モナコ自動車クラブがF1に対して支払う開催料金はどこよりも低い金額だった。しかしシンガポールやラスベガスのように象徴的であり、かつ多額の料金を支払うイベントが出てきた今、モンテカルロでのストリートレースは、早ければ2025年で消滅する可能性がある。

■カナダGP(サーキット・ジル・ビルヌーブ)
第1回開催:1978年
合計開催数:42回
現在の契約期間:2031年まで
 ロジスティクスと気候の面から、F1はカナダGPをマイアミの1週間前か1週間後に開催することを望んでいる。マイアミの開催地ハードロック・スタジアムは5月にしか利用できないため、カナダGPの開催時期が変更される可能性がある。

■スペインGP(サーキット・デ・バルセロナ・カタロニア/マドリード)
第1回開催:1991年
合計開催数:33回
現在の契約期間:2026年まで(マドリードでの開催は2035年まで)
 スペインGPは2026年にマドリードの新しいストリートサーキットに移り、2035年まで開催される契約が結ばれている。数百万ドルを投入して近代化されたばかりのカタロニア・サーキットは存続を望んでいるが、F1カレンダー入りを望む国は多く、スペインで2回の開催が認められる可能性は低いだろう。

■オーストリアGP(レッドブル・リンク)
第1回開催:1970年
合計開催数:35回
現在の契約期間:2030年まで

■イギリスGP(シルバーストン・サーキット)
第1回開催:1950年
合計開催数:57回
現在の契約期間:2034年まで

■ハンガリーGP(ハンガロリンク)
第1回開催:1986年
合計開催数:38回
現在の契約期間:2032年まで

■ベルギーGP(スパ・フランコルシャン)
第1回開催:1950年
合計開催数:56回
現在の契約期間:2025年まで
 アルデンヌ山脈にある伝説的なスパ・フランコルシャンのサーキットは、インフラと財政上の理由から、グランプリ開催の権利を失う危機に長い間、瀕している。カレンダーに残る最大のチャンスは、ザントフォールトと共同で開催契約を結ぶことだろう。

■オランダGP(ザントフォールト)
第1回開催:1952年
合計開催数:33回
現在の契約期間:2025年まで
 観客収容能力が限られており、公的資金がほとんどない。さらに、マックス・フェルスタッペンが永遠にレースを続けるわけではないという認識のもとで、ザントフォールトでの開催継続は確実ではない。スパと共同で契約を結び、それぞれが2年ごとにレースを行うという案が検討されている。

■イタリアGP(モンツァ・サーキット)
第1回開催:1950年
合計開催数:73回
現在の契約期間:2025年まで
 F1はモンツァにプレッシャーをかけるためにイモラを利用してきた。その戦術は功を奏しているようだ。モンツァは、新しい契約を得て、イタリアで唯一のグランプリ開催地になるために、施設全体を近代化するための動きを開始した。

■アゼルバイジャンGP(バクー・シティ・サーキット)
第1回開催:2017年
合計開催数:6回
現在の契約期間:2026年まで
 アゼルバイジャンはF1に最も高額な料金を払っている国のひとつだが、バクーでの開催は、政治的な理由から人気が低い。そのため、2026年がこの市街地サーキットでの最後のグランプリになるかもしれない。

■シンガポールGP(マリーナベイ・ストリート・サーキット)
第1回開催:2008年
合計開催数:14回
現在の契約期間:2028年まで
 シンガポールでのグランプリはF1にすでに強く根付いており、新契約を獲得するのに何の障害もないだろう。

■アメリカGP(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ)
第1回開催:2012年
合計開催数:11回
現在の契約期間:2026年まで
 マイアミやラスベガスは、オースティンよりも人気がある都市であり、他のアメリカの地域がF1を招聘したいと考えた場合、サーキット・オブ・ジ・アメリカズが開催権を維持するのは難しいかもしれない。

■メキシコシティGP(アウトドローモ・エルマノス・ロドリゲス)
第1回開催:1963年
合計開催数:23回
現在の契約期間:2025年まで
 カレンダー上で最も人気の高いグランプリのひとつであり、契約延長には何の問題もないはずだ。中米唯一のグランプリだが、問題は、セルジオ・ペレスが将来F1から去った後も、グランドスタンドが満員になるかどうかだ。

■サンパウロGP(インテルラゴス)
第1回開催:1973年
合計開催数:40回
現在の契約期間:2030年まで
 施設は近年改善されてきたが、依然として時代遅れの部分が多い。しかし南米に代わる開催地がない限り、インテルラゴスはカレンダーに残るだろう。

■ラスベガスGP(ラスベガス・ストリップ・サーキット)
第1回開催:2023年
合計開催数:1回
現在の契約期間:2025年まで
 最初の契約は3年のみだが、このグランプリがあらゆる面で成功を収めていることを考えると、契約は間違いなく延長されるだろう。

■カタールGP(ルサイル・インターナショナル・サーキット)
第1回開催:2021年
合計開催数:2回
現在の契約期間:2032年まで

■アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)
第1回開催:2009年
合計開催数:15回
現在の契約期間:2030年まで

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