ついに迎えたレギュラーシーズン最終戦。泣いても笑ってもプレーオフ進出権獲得の16名が決まる2024年NASCARカップシリーズ第26戦『Cook Out Southern 500(クックアウト・サザン500)』は、今季限りで活動休止を表明しているスチュワート・ハース・レーシング(SHR)で最後の物語を紡ごうと、チェイス・ブリスコ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)が実に73レース連続無勝利記録に終止符を打つ劇的な勝利を記録してみせた。
これで“キャリア19年連続勝利記録”を狙いながら、2戦連続の2位に終わったカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)や、カットライン当落線上にいたクリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)やロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)らの希望が打ち砕かれることに。
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さらにレギュラーチャンピオン争いでは、367周中263周をリードしてステージ連続勝利を記録したカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)に対し、スタートから体調不良と戦いながら10位完走のタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)が、わずか1ポイント差で戴冠を果たしている。
難攻不落のダーリントン・レースウェイで迎えたレギュラー最終戦も、週末走り出しは今季の傾向どおりにトヨタ陣営が先行する展開で始まり、同地2勝エリック・ジョーンズ(レガシー・モーター・クラブ/トヨタ・カムリXSE)のフリープラクティス最速に続き、予選では「今週末こそ、自分自身のキャリアで最高のレースを披露しなければならない」と、チャンピオンシップ進出に向け意気込むダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)が躍動。得意とする1.366マイルの古参オーバル“The Lady in Black(ザ・レディ・イン・ブラック)”で、キャリア通算3回目のポールポジションを奪った。
決勝スタート直後には、同じくカットラインを争うマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)にいきなりの悲劇が襲い、今季限りで引退を表明しているベテランが、わずか3周目にしてウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)にヒット。王者ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)を巻き込むアクシデントの起因となり、この時点でカットラインより58ポイント高い“未勝利ドライバー最上位”の立場が一転、キャリア最後のプレーオフ進出に黄色信号が灯る。
「そうだね、すべては自分のせいだ。24号車(バイロン)に追いついてインサイドに入り、すべて順調だと思ったらクルマが急加速して彼にぶつかった」と、引き続き頻発するエンジン側のトラブルも匂わせたトゥルーエクス。
「もちろん、それは僕の責任だ。チームメイトや(支援者の)バス・プロ・ショップス、トヨタの皆に申し訳ない。素晴らしいレースカーを持っていたし、これが今年一番長いレースだということはわかっていた。ただただ僕の愚かなミスだ」
しかし、ここから粘りを披露した19号車カムリXSEは、ステージ1、ステージ2ともにラーソンが制覇していくなかポイントを重ね、最終ステージを前に自力でプレーオフ出場権を確保していく。
■レギュラーシーズンタイトルはレディック。最終局面ではブリスコが2勝目
同じくトヨタ陣営内では、レースを通じてつねに吐き気に悩まされていたレディックが500マイルを耐え抜き、346周目に発生した最後のコーションでは“4タイヤ”でフレッシュを装着し、リスタートでふたつポジションを上げてトップ10圏内に飛び込むことに。これで4位フィニッシュしたラーソンを上回り、レギュラーシーズンのタイトルを獲得した。
「マシンは最初から本当に強かったが、中盤で5号車(ラーソン)にポイントを奪われたときは、もっと速く走るために何をすべきか考えていた」と疲労困憊の様子で振り返ったレディック。
「そのことに集中するのは本当に大変だった。普段はうまくやれるが、今回はほとんど片手で運転しているような感じで、どう表現したらいいのかわからないほど、クルマの中では本当に大変な状況だったよ……」
終盤、カーソン・ホセヴァー(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が2度目のルーズでマシンを大破させ、残り26周で迎えたリスタート。前を行くチャスティンとラーソンに対し、ターン3でボトムへ飛び出す大胆な動きを見せたブリスコが、ここで首位浮上に成功してみせる。
しかし直後には僚友ジョシュ・ベリー(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)を引き金に、デニー・ハムリンとタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が3ワイドバトルの末に接触。これがマルチタングルに発展し、ここでウォレスの23号車カムリXSEも大きなダメージを被る。
そして残り17周となった351周目に輝きを放ったのは、いち早くフレッシュに換装していたブッシュの8号車で、4列目のリスタートからみるみるポジションを上げ、首位ブリスコの背後にまで到達する。
「リスタートで数人のドライバーを抜き去ったとき、俺たちにはチャンスがあると思った」と振り返ったブッシュ。「でもそこからウェイブを突破するには、あと3~4周分タイヤが新しければよかったと思う。ヤツ(ブリスコ)のエアに出た瞬間、もっと近づくためのパワーが足りなかった。脚元はもう滑り始めていたんだ」
この最終局面で訪れた“2冠”王者とのデュエルを制し、猛烈なプレッシャーを跳ね除けたブリスコが、フェニックスでの2022年3月以来となるキャリア通算2勝目を飾る結末に。これでプレーオフ進出権を自動的に手に入れるとともに、6位入賞のブッシャーを蹴落とし、ギブスとトゥルーエクスJr.にもポイントでのチャンピオンシップ進出権を贈る貴重な勝利となった。
「320人のSHR従業員の全員が、最後の年にチャンピオンシップを争えるなんて信じられないよ!」と、来季はトゥルーエクスJr.の後任としてJGR入りが決まっているブリスコ。
「このチームがもう存在しないことがわかった日、僕たちはファクトリーのフロアに集まり、全員で顔を見合わせて『最後まで頑張る。諦めない』と誓ったんだ。この1週間はずっと『弾丸は1発残っている』と言い続けてきた。まさに、その弾丸が命中したんだ!」
土曜に併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第23戦『Sport Clips Haircuts VFW Help a Hero 200(スポーツ・クリップス・ヘアカットVFWヘルプ・ア・ヒーロー200)』は、日曜のカップでも3位に入賞するクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタGRスープラ)が、コール・カスター(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)との延長最終ラップの肉弾戦を制している。
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