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フォルクスワーゲンらしい味わい ID.7 プロへ試乗 EV技術的にはクラスをリード

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フォルクスワーゲンらしい味わい ID.7 プロへ試乗 EV技術的にはクラスをリード

ターゲットはBMW i5やメルセデスEQE

故フェルディナント・ピエヒ氏が、フォルクスワーゲンのトップにいた時代のモデルへ、ID.7は似ているように思う。アルテオンより大きい電動サルーンがターゲットとするのは、格上のプレミアム、BMW i5やメルセデス・ベンツEQEだからだろう。

【画像】技術的にはクラスをリード フォルクスワーゲンID.7 プロ 競合クラスのEVサルーンは? 全133枚

もちろん、内包する技術は異なるが、込められた野心は近いような気がする。そして、フォルクスワーゲンは新しい技術を我が物にしたようだ。

エネルギー効率に優れ、航続距離の長いバッテリーEVをデザインするなら、背の高いSUVではなく、空力特性で有利なサルーンの方が望ましい。ホイールベースを長くすれば、車内空間も稼げる。実際、ID.7の空気抵抗を示すCd値は、0.23と小さい。

また、同社第2世代の電動パワートレインを搭載し、優れた動力性能を獲得。パッケージングは良く練られ、運転しやすい。インフォテインメント・システムも新世代で、運転支援システムも高機能といえる。

動的な特徴は、フォルクスワーゲンらしいバランス。乗り心地はマイルドで、ステアリングは正確で安定感がある。自然に運転でき、ストレスを感じにくい。上級サルーンに求められる、熟成された完成度にある。

駆動用バッテリーは77kWh。新開発の駆動用モーターとインバーターの効果で、航続距離は616kmがうたわれる。エントリーグレードの「プロ」でも。

2024年後半に登場予定のプロSには、86kWhのバッテリーが載り、航続距離は640kmを超えるという。四輪駆動で340psを発揮する、ID.7 GTXも控えている。

大幅に改善したインフォテインメント・システム

ID.7のプラットフォームは、同社のID.4やID.バズと同じMEB。流線型のシルエットをまとい、全高は印象的なほど抑えられているが、内燃エンジンで走るサルーンと並ぶと腰高に見えてしまうことも事実だ。

車内空間は、しっかり確保されている。着座位置は適度に低く、身長の高い大人でも、フロントシートへ快適に座れる。メルセデス・ベンツEQEのように、サイドウインドウが低めに感じることもない。

リアシート側でも、前かがみになる必要はない。ヒョンデ・アイオニック6は高さ方向で限定的だが、こちらは居心地が良い。大きなリアハッチからアクセスする、荷室容量は532L。床下にも収納空間が設けられている。

ダッシュボードの中央には15.0インチのタッチモニターが据えられ、その下部にエアコン用のタッチセンサーが並ぶ。ドライバーの正面には、メーター用モニターに加えて、カラーで投影される拡張現実対応のヘッドアップ・ディスプレイも備わる。

筆者は、エアコンや運転支援システムのインターフェイスは、タッチモニター内に統合しない方が良いと考えている。それでも、ソフトウエアは大幅に改善され、従来より使いやすくなった。

頻繁に操作する機能は、固定表示のメニューバーへ登録できる。ホーム画面のアイコンも切り替え可能で、必要な項目を常時表示させられる。ちなみに、このシステムは、同社の他のモデルへ順次実装されるそうだ。

走り味は可不足ない、ザ・フォルクスワーゲン

内装の素材は、i5に並ぶとはいえないだろう。高級感を強く感じさせる部分はないといえ、触れてソリッドさを伝えるような、スイッチ類はそもそも少ない。プレミアムモデルというより、ゴルフのトップグレードといった印象がある。

試乗車には、オプションのエルゴアクティブ・シートが据えられていたが、感心する座り心地だった。ソフトでありつつサポート性が高く、ベロア素材で風合いも好ましい。ヒーターとベンチレーションも内蔵する。

発進させてみると、動的な印象は、可不足のないザ・フォルクスワーゲン。駆動用モーターが充分なトルクを発生し、100km/h前後まで意欲的に加速していく。サスペンションはしなやかで、ステアリングは落ち着いていて正確だ。

ただし、回生ブレーキは、さらに開発が必要かもしれない。Bモードを選ぶと、強力な減速感を得られるものの、惰性走行やワンペダルドライブには対応していない。

カーブや交差点が接近すると、自動的に回生ブレーキが強くなるシステムが搭載されている。これを無効にすると、アクセルオフでスルスルと進むことはできる。ブレーキペダルを踏んだ感触は少し人工的ながら、効きは滑らかだ。

シャシーマウントにラバーを採用し、減衰力が変化するアダプティブダンパーが組まれ、乗り心地は上質。硬さは15段階から調整できる。ソフト側へ振ると浮遊感が増し、垂直方向の揺れが若干大きいようだった。

快適性と運動神経との好ましいバランス

ステアリングは、最新の可変レシオシステムにより、切り始めでの機敏さが高まった。デフォルトのドライブモードでは、重み付けや反応の素早さは平均的だ。

履いていたタイヤは、ブリヂストン・ポテンザスポーツ。グリップは高く、高速でコーナーへ侵入しても、ボディは水平を保つ。スタビリティ・コントロールの制御も巧妙で、スポーツ・モードを選ぶと、僅かに後輪駆動だと実感できる。

これらが相乗し、落ち着いた身のこなしと正確で敏捷な操縦性を両立させている。濡れたフランスの路面では、パワーの制御に手を焼いていた印象もあったが、乾燥した英国の一般道では、そんな振る舞いは感取されなかった。

遮音性は高く、クラストップ水準ではないものの、不満はない。手のひらへ伝わる感触は薄めながら、運転も楽しめる。明確に心地良いと表現できるマナーで、多くのドライバーは、快適性と運動神経とのバランスを好ましいと感じるはず。

電費は、今回の試乗では6.1-6.4km/kWh前後。現実的な航続距離は、480km以上と考えていいだろう。BMW i5やアイオニック6を軽く凌駕する数字といえ、アップデートを受けたモデル3に並ぶ。86kWhの容量なら、更に伸びることになる。

試乗車の英国価格は、5万2600ポンド(約978万円)。かなり高価に思えるが、残価設定型の月払い金額で比較すると、クラス内での競争力は低くないようだ。

技術的な完成度は、このクラスをリードする

とてもフォルクスワーゲンらしい印象を残す、ID.7。印象深い特長はないかもしれないが、ゆとりある車内空間を備えた、上質な電動サルーンだと思う。

BMW i4並みの運転の楽しさは味わえないものの、コストパフォーマンスは高い。テスラ・モデル3のように、淡白な白物家電的な印象でもない。より製造品質は高く、洗練されている。技術的な完成度では、このクラスをリードする領域にある。

スター性に欠けるとしても、このブランドらしくパッケージングは充分に練られている。粘り強くバッテリーEVへ取り組んできた同社の成果が、遂にカタチになったといっていいだろう。

◯:ゆったりした車内 従来から改善したインテリアの品質 616kmが主張される航続距離 使いやすくなったインフォテインメント・システム
△:テスラやBYDより遥かに高い価格 プレミアム・ブランドには及ばない内装 車重を隠さない操縦性

フォルクスワーゲンID.7 プロ・マッチ(英国仕様)のスペック

英国価格:5万2600ポンド(約978万円)
全長:4961mm
全幅:1862mm
全高:1538mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:6.5秒
航続距離:603-621km
電費:6.1-7.0km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2172kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:77.0kWh(実容量)
急速充電能力:170kW
最高出力:286ps
最大トルク:55.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)

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