角田裕毅(RB)は、F1オーストリアGPの決勝レースを14位でフィニッシュした。一時13番手を走り、当時ひとつ前の12番手を走っていたチームメイトのダニエル・リカルドが9位入賞を果たした理由を検証すると、その戦略が足枷となった可能性があることが分かる。
RB勢はリカルドが11番グリッド、角田が14番グリッドからオーストリアGPの決勝レースをスタートさせた。2周目を終えた段階ではリカルドが12番手、角田は13番手。うまくいけば、ダブル入賞も不可能ではない、そんな状況に見えた。
■角田裕毅、F1オーストリアGPは14位。リカルドと分けた戦略がうまくいかず……「でも、チームとして理解が深まった」
そんな中リカルドは、ふたつ前のポジションを走るケビン・マグヌッセン(ハース)と共に、10周と予想よりもかなり早い段階で最初のピットストップを実施。一方で角田は第1スティントを引っ張り、21周を走ったところでピットに向かった。
新しいタイヤに履き替えれば、当然ペースが上がる。この上がったペースと、タイヤを履き替える前の遅いペースの差を活かしてポジションを上げることを”アンダーカット”と言う。リカルドはこのアンダーカットを成功させ、アルピーヌ勢の前に出ることに成功。2回目のピットストップも早めに入ることで、ポジションを守り9位入賞に繋げた。
角田は逆に、1回目のピットストップの際にアストンマーティンのフェルナンド・アロンソなど複数台にアンダーカットを許し、さらに2回目のピットストップではもう1台のアストンマーティンであるランス・ストロールらに先行されたことで、結局14位でのフィニッシュとなった。
これだけでも、今回の戦略がうまくいかなかったということが分かる。
■タイヤ交換後のアドバンテージ活かせず
上のグラフは、F1オーストリアGPの決勝レースで、角田の周りを走ったマシンのラップタイム推移をグラフ化したものだ。これを見ると、もうひとつ角田の戦略がうまくいかなかった要素があるのが分かる。
前述の通り、タイヤを交換すればラップタイムは速くなる。ただし2箇所の赤丸で示した部分を見ていただくと分かる通り、ピットストップを終えたばかりの角田のペースは、ずっと前にタイヤを交換したマシンのペースと変わらなかったのだ。これでは、タイヤが新しいことのアドバンテージを活かすことができない。
1回目のピットストップの後にペースが上がらなかったのは、パフォーマンスが優れなかった周冠宇(キック・ザウバー)の真後ろでコースに復帰することになったから。ただ周を抜いた後も、角田のペースが上がらなかったのが気がかりだ。
2回目のピットストップの後も、角田は誰かに抑えられたわけではなかったが、ペースは上がらなかった。
これについて角田はレース後、「ペースが上がらなかった理由を突き止めなければいけない」と語っている。
一方でRBのチーフエンジニアであるクラウディオ・バレストリは、「レース前半の段階で、ふたりの戦略を分けることを決めた」と説明している。ただ戦略を分けるのであれば、逆にするべきだったようにも思う。
決勝レースを迎えた時点で、リカルドはハードタイヤとミディアムタイヤを、それぞれ2セットずつ持っていた。つまり、ミディアム→ハード→ミディアムとタイヤを繋ぐこともできたわけだ(実際にはミディアム→ハード→ハード)だった。ミディアムタイヤを2セット残しているアドバンテージを最大限活かすためには、1スティント目を長く走り、ハードに繋いで、ライバルがハードタイヤを履く最終スティントでミディアムを履き、そのアドバンテージを活かすということも考えられただろう。
一方で角田は、ミディアムタイヤはスタート時に履いた1セットしか残っていなかったので、ミディアム→ハード→ハードと繋ぐしかなかった。その状況では、リカルドのように早めにピットストップし、粘り込みを狙うことが上位を目指す最善策だったように思える。確かにリカルドのようにミディアムが2セット残っていれば、最初のスティントを引っ張ることでアドバンテージを見出すことができたかもしれないが……角田はリカルドとは異なり、スプリント予選のSQ2に進出したことで、新品ミディアムの残り数に1セットの差が生じていたのだ。
もうひとつ考えられるのが、リカルドには正攻法でレースをさせ、セーフティカー出動など何らかの混乱があった時に角田に上位を狙わせるという戦略だ。ただ今回のレースではバーチャル・セーフティカーしか出なかった。
しかし前戦スペインGPでは、入賞など全く狙えそうもなかったRB。ここオーストリアでは復調の兆しを見せ、リカルドが実際に入賞したことは、ポジティブに捉えるべきだろう。ただハースやアルピーヌが戦闘力を増してきているため、シーズン後半に向けては厳しい戦いが続く可能性がある。
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みんなのコメント
それを今まで何回も行って何回も失敗しているのだし。
ミスもそうだし暴言もそう。暴言の方は今後のキャリアを棒に振る可能性すら残してしまいましたね。
真に変われていなかった証拠では?
全てを受け入れ消化して進化して精進出来るかに掛かってますね。
本当に移り変わりの早い厳しい競争の、しかも世界最高峰。踏ん張って乗り越えて日本人の新たな境地を切り拓いて欲しいです。