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【山梨交通】かつて路面電車が走った甲府に、和魂漢才の電気バスは走るか? 中国製バス車体・日本製バッテリー

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【山梨交通】かつて路面電車が走った甲府に、和魂漢才の電気バスは走るか? 中国製バス車体・日本製バッテリー

編集長の新刊『昭和40年頃の山梨の鉄道追想』と山梨交通の『ボロ電』

text&photo:Daisuke Ebisu(戎 大介)

【画像】アルファバスe-City L10、昭和40年頃の山梨の鉄道追想【車両ディテール・ボンネットバスなど】 全25枚

photo:Kenji Sasamoto(笹本健次)

去る9月1日に、AUTOCAR JAPANの笹本健次編集長が『昭和40年頃の山梨の鉄道追想』という写真集を上梓した。

今回の新刊は編集長が幼少の頃から撮り溜めてきた、生まれ故郷、山梨の昭和30~40年代にかけての鉄道の変化の様子を1冊にまとめた写真集だ。

現在、編集長は山梨県甲府市で『常磐ホテル』の社長業も兼任しており、8月末は県下の関係各所へこの本のお披露目に廻っていた。その際、本誌制作に携わった筆者も荷物持ちとしてこの行脚に付き従っていたのだ。

その途中、編集長は山梨交通の本社に立ち寄った。ちなみに新刊の冒頭には、県民から親しまれつつ昭和37年に廃止された、“ボロ電”こと山梨交通鉄道線が収録されている。

ボロ電は明治時代の山梨馬車鉄道に端を発する路面電車で、経済的に発展してゆく甲府とその周辺町村の物資と人員輸送に貢献してきた。

しかし、戦後の復興期を経てバス路線の発達と共に衰退、昭和34年の伊勢湾台風による設備への被害などが引き金となり、昭和37年7月に全線廃止となった。

当時、小学生だった笹本編集長は、甲府駅から出発するボロ電の姿をよく見かけたとのことで、本写真集に収録されているのは、廃線の声を聴いて写真に残しておこうと、初めて手にしたカメラ、フジペット35を持って撮影に出かけた際のものだという。

廃線より50年以上が経過した今、実体験としてボロ電を知る人は少なくなったが、今でも甲府の街中をクルマで走っていると、カーナビの『左折して廃軌道へ』といった案内に、ギョッとしながらもココは昔、電車道だったのかと気付かせられる時がある。

山梨交通本社で、中国製電気バスに遭遇

編集長が山梨交通の代表に新刊を手渡し、50年前に同社が運営していたボロ電や当時のボンネットバスなどの懐かしい話が弾んでいる間、手持ち無沙汰な記者は、本社敷地内に併設された天然ガス・スタンドに25年選手のいすゞ・キュービックと並んで見慣れぬ白ナンバーの路線バスが佇んでいるのを見つけた。

聞けばこの車両、中国アルファバス製の純電気(BEV)バスとのこと。

この『e-City L10』は昨年日本デビューした最新型で、輸入・販売元のアルファバスジャパンによるデモンストレーション来社だった。

日ごろ、並行輸入自動車の改善などを手がける業者さんへも取材に行っている身としては、中国製の車両が日本のナンバープレート(と車検)を取得しているだけでも驚きだったが、この車両は右ハンドルで車内外の架装なども完全に日本の路線バス仕様となっていた。

日本向け仕様の車両の開発に関しては、同社に出資するヴィ・クルー(バス車体製造・架装メーカー)とエクセル(電子デバイス商社)の技術とノウハウが注入され、日本車と見比べても違和感のない見栄えに仕上がっていた。

アルファバスe-City L10 中国製車体に座間のバッテリー

既にバスの電化が進む中国国内で普及し、スペインやイタリアなど欧州での採用実績もあるというアルファバス。

車体に関してはEUの完成車認証を取得するなど一定の信頼性は保証されているともいえるが、BEVの要ともいえる駆動用バッテリーはどうなのだろうか?

車体の最後部、石油燃料のバスならばエンジンルームとなっているコンパートメントには、ゴツい角パイプで4段に組まれたラックに6基のリチウムイオンバッテリーと補機類が鎮座していた。

実はこのバッテリー、日産リーフに搭載されているものと同一のエンビジョンAESCジャパン製セル・モジュールが使用されており(AESCは元・日産の子会社で現在は中国資本)、神奈川県座間市で生産されている。

いうなれば “和魂漢才”の電気バスといえるだろう。

Windowsパソコンと中華パーツの大躍進に似てる?

整備重量で12トン近い車体を約250km走らせる、296kWhのバッテリーを積むe-City L10。電気自動車で問題となる充電に関しても、日本の急速充電ポート規格である『チャデモ2.0』に対応。

また、この充電ポートや装備された家庭用100Vインバーターから建物や家電製品への給電も可能となっている。非常時には電源としても活用できるシステムを備えている。

車内に乗り込めば、日本の路線バスで普通に見かける運賃箱に手すりに降車ボタン。

唯一、運転席の路線バスらしからぬ豪華なサスペンション付きシートや、ヘアライン仕上げ風の化粧パネルが奢られたインストゥルメントパネルに出自の違いを感じたぐらいで、一般の乗客には何の違和感もないだろう。

今回は別の用事で立ち寄ったついでだったため、充分な時間を取った取材や実走などは叶わなかったので、それだけで万事を知ったように語ることはできないが、EVならではの出足からの厚いトルクで走りも悪くないそうだ。

日本の主要なトラック・バス・メーカーも今後10年で完全に電動へとシフトすると表明しているとはいえ、現状では中国メーカーの後塵を拝しているともいえる。

“ジャパン・クオリティ神話”も揺らぎつつある現在、新興メーカーや国にいつまでも油断してはいられないだろう。

今回の取材で記者が思い出したのは25年ほど前、当時使っていたパソコンをNECのPC-9801からショップ製のWindows機に乗り換えた時のこと。50万円の国産パソコンよりも10万チョイの中国製パーツ寄せ集めの方が圧倒的に高性能だったことに驚いた。

実際、この20年でほとんどの日本メーカーはパソコンの製造から撤退、一部の高級機を除いては海外製品が市場を席巻するに至った。

日本メーカー 追いつけるのか

「パソコンとクルマとは違う!」といわれるかも知れないが、制御系の電子化や構成部品の汎用化・モジュラー化が進んできた現代のクルマは多分にパソコン的であり、技術的なノウハウが蓄積されていけば10年・20年後には逆転されていてもおかしくはないだろう。

今回見たアルファバスe-City L10は、隣に並んだいすゞ・キュービックと比べてもかなり大柄であった。

甲府の市街地をクルマで走ってみると道幅の狭さや細い路地が多いことに気付く。実際に常磐ホテルの周辺を走っている山梨交通の路線バスもこのいすゞよりもさらに小さな車体であることが多い。

故にこのL10が全面的に採用されるとは思えないが、今までも他に先駆けてCNG(液化天然ガス)車や水素燃料車の導入を積極的に行ってきた山梨交通である。

かつてボロ電が走った道を近い未来、電気バスが走っていてもおかしくはないだろう……などと甲府に来て1年あまりのAUTOCAR記者は夢想するのであった。

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みんなのコメント

4件
  • 中国を見くびってはいけません。今や電気バスはゴマンと走ってます。ただ、駅のベンチの様なプラ製シートはご愛嬌ですが。
  • 国際興業の子会社ですので、バスの色は国際興業に似てます。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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