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ルノートゥインゴ試乗レポート パリのセンスを共有したフランス車に惚れ込む

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ルノートゥインゴ試乗レポート パリのセンスを共有したフランス車に惚れ込む

ついに、と言うかやっとルノートゥインゴが試乗できる状況になった。ファンは焦らされ、もやもやした日々が長かったのではないだろうか。
<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>

2014年のジュネーブショーでワールドプレミアされ、一気に注目を浴びた。日本ではその翌年の東京モーターショーでジャパン・プレミアされたのだから、これはもうすぐに国内デビューと思ったことだろう。だが国内発表は2016年7月まで待たされ、ようやくこの9月15日の発売にたどり着いたわけだ。実に欧州デビューから2年半もかかったことになる。

これほどまでに時間がかかった理由のひとつに右ハンドル仕様とEDCの採用というのがあるらしい。そこまでして日本仕様を仕上げてきたのだから、期待も高まる。キャッチフレーズ的に使われているのは「パリ」だ。パリが仕立てたトゥインゴで、パリの細かな道をきびきびと走る姿がイメージできる。

国内に導入されたモデルはインテンス・グレードで、キャンバストップ199万円とノーマルルーフ189万円の2機種。いずれも税込みで200万円を切っている。エンジンは0.9Lターボ+6速EDC、つまりツインクラッチの2ペダルだ。出力は90ps/135Nm、JC08モードは21.7km/Lというスペックになる。詳細はこちらで解説しているので見てほしい。

新型トゥインゴは3代目となるAセグメントのコンパクト・シティカー。市街地での使い勝手を重視した実用車でもある。5ドアでリヤにエンジンを搭載するRR方式はキャビンスペースなどの効率も上げている。ボディサイズは全長3620mm×全幅1650mm×全高1545mm、ホイールベース2490mmで横幅を除けば軽自動車サイズだ。

個性的なエクステリア、インテリアはトゥインゴの大きな魅力のひとつだ。すべてにおいて、国産車とは異なり、造り手の考え方やセンス、こだわりなどが日本車にはないことを感じる。だから余計に憧れるし手に入れたくなる。価格も200万円を切り、魅力たっぷりだ。

■デザイン
エクステリアではかつてのルノー5をオマージュしてのデザインというだけあって、リヤが張り出している。この時点で国産車にはないデザインだ。そしてタイヤサイズも前後で太さが異なっている。今の日本車では考えられない遊び心だ。しかも、トゥインゴは大衆量販車であり、多くの人に選ばれ販売されなければいけない宿命を背負いながら、個性的なものを持っているというのは、うらやましい。ちなみにフロントタイヤサイズは165/65R15で、リヤが185/60R15となっている。

後席ドアハンドルは目立たないようにドアパネルに設置されず、ウインドウ部の後端三角窓にあたる部位に付く。窓の周囲は黒のモールとラバーで覆われ、サイドビューが引き締まる。リヤウインドウはなんと!はめ込みガラスで、レギュレーターハンドルで窓を下げることはできない。ほんの僅かに外側に押し出せるだけだ。昔は日本車でもクーペモデルでは一般的な処理であったが、今、デザインのためにこうしたかつての技法を持ち込むあたりがセンスなのかもしれない。ただし使い勝手はよくないのはわかる。が、エアコンが完備される現在、それが不満になるのだろうか。

試乗車はブルードラジェという薄いブルーのキャンバストップ仕様。ボディサイドにストライプが入った爽やかな印象の訴求カラーだ。オートライトや雨滴感応式ワイパー、ストップ&スタート機能にヒルスタートアシスト機能も付いている。

インテリアは白と水色のコンビネーションで統一されている。細部を細かく見れば見るほどアイディアなのだということにも気づく。そしてデザイン処理により、なんでもない、つまらない箇所さえ、魅力的に、おしゃれに見せてしまうセンスの良さを感じる。

日本人には必須?のナビゲーションは装備されない。必要な人はポータブルのナビを後付けすればいい、といったダッシュボードデザインだ。その主張を素直に納得させてしまう説得力のあるデザインとも言える。

実際、パリの街で、コンパクトクラスはポータブルナビが主流。理由としてあまりナビを必要としない都市づくりや道路整備があり、ロードサインだけで目的にたどり着けるという事情がある。また、高級なナビは盗難の危険性を高めるだけなので、敢えて脱着が容易なタイプを好むというのが実情だ。

■走行性能もこれまた魅力的
0.9LターボエンジンとEDCはどうか。これも文句なしだ。パワーも十分で全く問題ない。非常に現代的な印象のするエンジンとトランスミッションという印象を持つ。アイドリングストップが機能しない場面では振動がハンドルでもシートでも感じる。それが逆に魅力にもなるから不思議だ。

ギヤ比は全体にハイギヤードでフランス車らしい。6段もギヤがあるのだから細かくシフトチェンジをすればいいと思うが、粘る設定にしている。ドイツ車をはじめ多段化はもはや常識であるが、最後まで「4速ATでも十分」というのがフランス車だった。が、ついに6速を投入している。もっとも兄弟車のダイムラーの影響が大きいからだろう。

日本車では例えば40km/h、6速で走行したとき、エンジン回転が低すぎて車内にこもり音が出る。全部の日本車メーカーがその音をNGとしていて、ギヤを1速ダウンする仕様にしているが、ルノーに限らずフランス車やイタ車では問題としていない。音に関する基準が違うのもおもしろい。だから、トゥインゴではこもり音を出しながら、ギヤダウンをせず粘って加速するセッティングになっている。もちろん、グッと踏み込めばダウンシフトすることは言うまでもない。

日本ではEDCの6速ツインクラッチが必須であり、パワーもそこそこある仕様でなければならないという条件は難なくクリアしていると思う。本国の1.0L・NAエンジン+5速MTが最初の導入だとしたらこれほどまで、待ち焦がれることはなかったかもしれない。限定車としてこのMT仕様も導入しており、これはルノー・ジャポンが日本の顧客をよく知っているという証拠だろう。ちなみに、ルノートゥインゴサンクSという名前で169万円だ。

RRというレイアウトは操安性には特徴がある。かの高性能スポーツカーポルシェがRRというレイアウトだが、トゥインゴも同様のレイアウトにしている。これは操安性能の追求というよりAセグメントでのユーティリティに重きを置いての選択だと思う。ネガな印象として、フロントに重量物のエンジンがない分、ハンドルも軽く全体に接地感も感じにくい。試乗時レインボーブリッジを強風が吹いていたが直進性には心もとない感じもある。

だが、これもまた愛嬌にも感じさせるから不思議だ。愛情目線がなければネガにしか感じないかもしれないが、あばたもえくぼ、なのである。したがってステア状態から強めのブレーキを踏めばオーバーステアの姿勢になり、アクセルオンではプッシュアンダーになるというわかりやすい挙動をする。

こうしてトゥインゴを試乗してみるとこだわりのデザインとエンジン性能、乗り心地、そして快適なインテリアを確保し、それ以外のものは、そこそこでいいという割り切りを強く感じる。それはナビであったり、静粛性であったり、そしてハンドリングであったり。

すべてに80点以上を求める人には難しいクルマかもしれないが、許せる人、あるいはこのセンスを共有できる人であればドンピシャなモデルだ。


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