自動車関係の用語ではアルファベットの略称を使うことも多いのですが、最近よく目にする「4WS」は、しばしば勘違いしている人を見かける用語かもしれません。
「4WD」は四輪駆動のことですが、4WSは駆動方式とはまったく関係のない用語です。といっても、4W(WはWheel)が「四輪」を示すところまでは共通で、最後のSは「ステアリング」の頭文字、すなわち操舵機構を前後にもったクルマという意味になります。つまり前輪同様に、後輪も向きを変える仕組みをもったクルマということ。
>>メルセデス・ベンツ Sクラスのおすすめグレードとユーザーの評価を見てみる
世界に先駆けて4WSを採用したのは80年代の日本車たち
この4WS自体は目新しいものではなく、日本では世界に先駆けて、1980年代に国産車でブームになったことがありました。「日産 スカイライン」に搭載された「HICAS(ハイキャス)」を筆頭に、「ホンダ プレリュード」や「マツダ カペラ」「三菱 ギャラン」などに採用されていたのです。
筆者はカペラから進化した「マツダ センティア」という4WS搭載車に乗っていた時期がありますが、後輪が前輪と逆方向(逆位相)に動くことにより、大きなボディとは思えないほど小回りが効く様には驚かされました。一方で、縦列駐車などでは不自然な動きもあるなど、違和感を指摘するユーザーから敬遠されるようになり、徐々に廃れていったという経緯があります。
欧州の大型高級車で4WSが見直される
一度は消えた技術となった4WSですが、欧州で再評価されます。ポルシェやルノーなどが4WSを活用して、高速コーナリングでの安定感を増すようなスポーツ性能を高めたのです。
さらに、「メルセデス・ベンツ Sクラス」や「ベントレー フライングスパー」といった超高級車も4WSを採用。とくにSクラスは大柄なボディながら小回り性能を高めたことをアピールしています。クルマの大型化は世界的なトレンドで、特に高級車の場合、ボディをダウンサイジングするというのは商品企画的に難しいものです。そうなると4WS機構によって小回り性能を高めるというのは必然の流れなのかもしれません。
バッテリーが大きな電気自動車で4WSの採用が広まりそう
ところで、こうした最新モデルでは、かつての4WSのように違和感を指摘する声はほとんどなく、違和感などは解決済みの完成された技術として評価されています。このまま4WSは高級車からだんだんと大衆モデルへと広まっていくのでしょうか?
そのヒントは電気自動車(BEV)にあります。BEVは航続距離を稼ぐためには多くのバッテリーを積まなくてはなりません。そして衝突安全性を考えると、バッテリーは前後タイヤの間に配置するのが定石です。
前後タイヤ間の距離のことをホイールベースと呼びますが、このような理由から電気自動車ではホイールベースが長くなりがち。このホイールベースが長くなると回転半径が大きくなってしまうので、電気自動車の時代になると、大衆モデルでも取り回しに難ありというクルマが増えてくることが予想されています。
そうした問題を解決するのが4WS技術です。電子制御を用いて、ハンドル操作に合わせて最適な切れ角で後輪を操舵させることができれば、ホイールベースが伸びてしまったネガは解決できるからです。
タイヤを電気信号とモーターで操舵する技術にも期待
合わせて覚えておきたい技術に「ステアリング・バイワイヤ」があります。
これは、従来のように物理的なステアリングシャフトを介してタイヤを動かすのではなく、ハンドル操作を電気信号に置き換えてモーターでタイヤを操舵する技術で、トヨタ初の量産EVとなる「bZ4X」などが一部地域で採用予定です。
ステアリング・バイワイヤであればハンドル操作に関係なく四輪を自在に制御することができるため、4WSを状況に応じて最適に動かして、操縦性や走行安定性を高めることが期待できるでしょう。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
写真:
1、2枚目:メルセデス・ベンツ Sクラス(4WSを搭載)
3、4枚目:トヨタ bZ4X(ステアリング・バイワイヤを一部地域で搭載予定)
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みんなのコメント
重くなるだけだ
日本車は熟成や継続を嫌う。パクれば良いってメーカーが主流ばかり。中国とそう変わらない。