一部改良を受けたトヨタのコンパクトハッチバック「ヤリス」の、ハイブリッドバージョンに今尾直樹が試乗した。熟成が進んだ走りに迫る!
足もとがよりしっかりしている
2020年2月に発売されたトヨタのコンパクトカー、ヤリスが、派生モデルの「ヤリスクロス」ともども本年1月に一部改良を受けている。その中身は、ホントに一部の改良に過ぎない。ヤリスだとグリルやシート表皮が変更されただけだし、機構面ではヤリスクロスも含めて、上級グレードのメーターが7.0インチの液晶カラーディスプレイになり、単眼カメラとミリ波レーダーを使った運転支援システム、「Toyota Safety Sense」のプリクラッシュセーフティの対象の範囲が広がっただけ。ハンドリングだとか乗り心地だとかブレーキだとか、ドライビングに関するメカニズムについてはなんの発表もなかった。
ところが、である。本年2月に登録された広報車のヤリスZ、ヤリスでいちばん高いハイブリッドのFFに乗ってみたら、とってもいい。クルマ全体が従来と較べキュッとしたような、それまでユルユルで、ほどけそうだったおにぎりを両手でやさしく固めたみたいな、体幹を鍛え直したような感じがした。もしやヨーロッパ車みたいに、明文化はされていないけれど、じつはブッシュ類の変更だとか、細かいチューニングが施されているのかもしれない……。
念のため、トヨタ広報のK氏にメールで問い合わせてみた。結論を申し上げると、上記以外、変更はない。ハイブリッドもいわゆる第4世代そのまま、ということだった。
考えてみたら、私はヤリスのハイブリッドに公道で乗ったことがなかった。GQで1.5リッターのガソリンのMTをテストした記憶はある。記事も書いた。発売のちょっと前に袖ヶ浦フォレストレースウェイで開かれたプロトタイプの試乗会に参加したこともある。とはいえ、全長2.4kmのサーキットを、1.5リッターのガソリンのCVTとMT、そしてハイブリッドのFFとE-Fourで、それぞれ3周しただけで、それ以来、縁がなかった。このとき、もっとも好印象だったのがハイブリッドのFFだった。
今回試乗したのはそのヤリスのハイブリッド、FFの最新モデルである。工場の生産現場はあれから4年の経験を積んでいる。だから、量産試作、あるいは量産初期のプロトタイプよりも、現場の4年分の“カイゼン”が詰め込まれ、熟成が進んでいることは想像に難くない。
さらに試乗車はメーカーオプションの16インチ、前後185/55サイズの扁平タイヤを装着している。プロトタイプ試乗会で乗ったハイブリッドのタイヤは185/60R15だったから、足もとがよりしっかりしている。という印象も一般論として成立する。
ただの1.5リッターガソリンの小型車ではない1490cc直列3気筒DOHCの「ダイナミックフォースエンジン」とモーターの組み合わせが生み出すシステム最高出力は116ps。エンジン単体では 91psと120Nm、モーター単体では80psと141Nmを発揮する。車重1100kgの小型車を走らせるのに十分なパワー&トルクを備えている。
その一方、プラグインではないのに、スタートして数分はリチウムイオン電池のエネルギー残量が許す限り、EV走行する。これはサーキットでは経験できなかったことで、あらためて感心した。このとき、液晶ディスプレイの隅っこにグリーンのEVマークが出てきて、EV走行比率は100%と、新しい液晶ディスプレイに表示される。EV走行中は当然、たいへん静かでスムーズで、このクルマがただの1.5リッターガソリンの小型車ではないことをドライバーに知らしめる。
やがてエンジンが自動的に始動する。EV走行比率は65%に下がり、ハイブリッドであることを再認識する。
16インチを装着しているため、街中で凸凹路面に出くわすと、タイヤがややドタドタする。それでも、そのドタドタはショックが丸められていて、小型車として悪い乗り心地ではない。むしろドタドタも味のうち、である。路面からの衝撃を受けつつ走る。というところがコンパクトカーならではのキビキビ感につながっている。
首都高速を走ると、ボディ剛性も上がっている気がする。さらに高速だと、EV走行比率は71%に上がる。最近のトヨタ式ハイブリッドのEV比率はこんなに高いのだ。首都高速の流れに乗って走行していると、エンジンが隙あらば、という感じで休止と再始動を繰り返してCO2の排出を減らそうとする。ブレーキ時にエネルギー回生しているためだろう、エンジンブレーキはよく効く。
最後に、トヨタ広報のK氏からの返信にあった一文、じつはほとんど全文をコピペして、勝手にご紹介しておきたい。筆者もおなじ感想を抱いたからだ。
「ご連絡頂いた件ですが、機構上もっとも変化が大きかったのはToyota Safety Senseが最新の第三世代に進化したこと、上級モデルのメーター意匠が変わったことなどで、そのほかの機構面の変更はございません(ハイブリッドシステムも、いわゆる第4世代のままとなっております)。
とはいえ、このモデルについては、『新しい車両ほど、乗り味が良い』というご評価を頂くことは多いです。当方としては、その感触を大切にしてください、としか申せません(笑)。スペック上の変更点は特になくとも、熟成が進んでいる、ということは確かだと思います」
私も自らの感触を大切にしたい。そして、思うのである。トヨタの、あるいはニッポンの自動車産業も熟成が進んでいる、と。
文・今尾直樹 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
高めだったタイヤ空気圧が適正に近くなるとダンパーが機能してる感じ日常茶飯事ですね。
合計出力が130hpにアップデートされましたが、
国内はそのまま、価格upを最小限にしたかった
という事かな。