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メルセデス・ベンツならではの1台──新型CLEクーペ試乗記

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メルセデス・ベンツならではの1台──新型CLEクーペ試乗記

メルセデス・ベンツの新型「CLEクーペ」に今尾直樹が試乗した。今や希少な2ドアクーペの魅力とは?

現代のメルセデスのクーペらしいカタチ

愛車の履歴書──Vol34. 吉田栄作さん(後編)

2023年7月にドイツ本国で発表され、本年3月に日本での発売されたメルセデス・ベンツの新しい2ドアクーペ、CLEの試乗会が東京・六本木にあるメルセデス ミー東京を拠点に開かれた。

印象を述べると、新しいCLE200クーペ・スポーツはとっても乗りやすくて実用的な、フル4シーターの2ドアだった。

新型CLEは、これまでのCクラスとEクラス、それぞれのクーペを統合して生まれた新規モデルである。改めてサイズを確認しておくと、全長×全幅×全高=4850×1860×1428mmで、Cクラスクーペよりも1634mm長くて50mm幅広く、23mm高い。Eクラスクーペとの比較では15mm長くて全幅は同じで、2mmだけ低い。2865mmのホイールベースはCクラスクーペより25mm長く、Eクラス・クーペよりは8mm短い。2865mmという数値は現行Cクラスセダンとまったく同じだから、CLEはCクラスのセダンベースということになる。

CLE200の場合、パワー・ユニット(PU)はC200用ではなく、E200用を採用している。どちらも車名は200だけれど、C200の排気量は1.5リッター、E200は2.0リッターで、500cc異なる。ごく簡単に申し上げると、CクラスのシャシーにEクラスのエンジンを載せて、より高い動力性能を得ているのがCLE200なのだ。

で、それがどんなだったか? という具体的なインプレッションに入る前に、話をちょっと戻して、Cクラスセダンとボディ3サイズを較べてみよう。やっぱりクーペの見どころというのは1にデザインだから、である。そうすると、CLEは95mm長くて40mm幅広く、ゲゲッ、7mm高い! そうなのである。長いフロントのボンネットに300SL由来のふたつのパワー・ドーム、フロント・グリルが前傾したシャーク・ノーズに、空力を意識してより寝かされたAピラー、ためらうことなく後方に向かってスーッと降るルーフのライン、そして少々長めのリヤのオーバーハング……。いかにもフロントエンジンの後輪駆動クーペ、を思わせるスポーティでエレガントなプロポーションは、「センシャル・ピュリティ(官能的純粋)」なる最近のメルセデスのデザイン思想に基づく、とされていて、いかにも現代のメルセデスのクーペらしいカタチをしている。

でありながら、大人4人がちゃんと乗れる居住空間を確保している。とりわけ後席は、頭上空間はミニマムながら、足元には比較的余裕がある。座高が低くて足が長いひとならなおさら大丈夫。トランク容量も十分で、メルセデスによるとゴルフバッグが2個入るという。後席背もたれは可倒式でトランクスルーになっており、スキー板等、長尺物を入れることもできる。

後席へは前席の肩口に設けられたストラップを引っ張ることで、より簡単に出入りできる。前席が電動でスーッと前方に移動してくれるからだ。この「イージーエントリー」システムはメルセデス初採用だというから、ちょっと意外である。

だけど、アレです。後席への出入りは4ドアに較べたら当然厄介で、2ドアクーペのオーナーたる者、その不便さを受け入れる度量が必要になる。その点以外は、クーペで不自由なことはなんにもなさそうだ。このかたちが好き。という好き者が選ぶ車型がクーペであっても、一定の実用性を備えている。それがメルセデス・ベンツの伝統ってヤツなのだ。

ほどよくスッキリした乗り心地日本仕様はオプションのAMGラインが標準で、本国仕様よりスポーティに仕立てられている。くわえて試乗車はドライバーズパッケージ(40万円)、レザーエクスクルーシブパッケージ (90万円)、パノラミックスライディングルーフ(22万円)といったオプションを装着している。ドライバーズパッケージには、リヤアクスルステアリング、ダイナミックボディコントロールサスペンション、そして20インチのAMGアルミホイールが含まれている。ボディ色のスペクトラルブルー(8万円)をくわえると、オプション総額160万円となり、車両価格の850万円と足すと1010万円になる。試乗車のインテリアは純白のレザー仕様で、乗るのがもったいないと感じるほど贅沢なしつらえだ。

でも、乗っちゃうのである。乗り心地が低速でも素晴らしくよいことに驚嘆する。タイヤは前245/35、後ろは275/30という太くて極薄のサイズである。銘柄はグッドイヤーのスポーツカー用で、おそらくこのタイヤが硬い。だけど、アクティブにボディをコントロールするこの電子制御のサスペンションがエアスプリングと間違えそうな快適性を実現している。エアクッションのついた革靴、みたいな感じの、ほどよくスッキリした乗り心地を提供してくれる。

1997ccの直列4気筒ガソリンターボは、最高出力こそ204ps/5800rpmながら、1600rpmの低回転から4000rpmにいたるまで320Nmもの最大トルクを発揮する。これを第2世代のISG、エンジンとトランスミッションの間に挟み込まれたモーター&ジェネレーターが17kW(23ps)/1500~2500rpmのパワーと205Nm/0~750rpmのトルクでもってエンジンを加勢する。たいへん静かで、ひと知れず活動している9ATの活躍もあって、レスポンスよく、素早くスムーズに加速する。

ダイナミックセレクトなる、いわゆるドライブモードを装備しており、コンフォートを選べば快適に、スポーツを選ぶと乗り心地が引き締まり、ギヤの選択が1段低くなってエンジン音が大きくなり、スポーティなドライブを楽しめる。コンフォートもスポーツも、どちらもバランスよくまとまっている。ひと粒で2度おいしい。キャラメルとアーモンドという異なる素材の組み合わせではなくて、ミルクキャラメルとチェルシーの違いのような、それに慣れると、自分がどっちを選んだのか忘れちゃうぐらい完成度が高い。

リヤアクスルステアリングは低速では後輪が前輪と逆方向に最大2.5度、高速では同方向に最大2.5度転舵する仕組みだけれど、それに気づくのは交差点を曲がる際、キュイッとお尻が動く感があるときぐらいで、その存在を意識させない。

もしも注意事項があるとすれば、ガバチョと乱暴にアクセルを開けてはいけない。ということだ。9ATがギアをふたつ、3つほど下げ、いわゆるキックダウンによってエンジンがうなりをあげるわけだけれど、それはこのパワー・ユニットにはふさわしくない。とりわけ快音を発するわけでなし。スポーティネスよりエレガンスを楽しむべきなのだ、とりわけCLE200は。早晩、本国では発表済みの6気筒やAMGも日本にやってくる。エンジンのお楽しみはそちらに期待すべきであろう。

低い着座位置から東京~横浜間の高層ビルやらモノレールやら飛行場やらベイブリッジから見える横浜港やらの景色を楽しむ。巡航中はロード・ノイズと風の音しか聞こえてこない。試乗車には17ものスピーカーが奏でるオプションのオーディオが装着されている。ひとりで乗っているときには、「ハイ、メルセデス」と呼びかけずとも、窓を開けて、とか、ちょっと暑いとか、と呟くだけで、車載AIが窓の開閉やエアコンの調整をやってくれる。新型Eクラスで採用されたJust Talk機能も付いている。桜の名所なんかも教えてくれる。

まことに贅沢な時代である。

文・今尾直樹 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

1件
  • mik********
    >改めてサイズを確認しておくと、

    ここからのサイズの件がテキトーすぎて読むのやめた
    自動車ヒョウロンカって本当にテキトーだよね
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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