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【特集】ブランド別スポーツカー動向(9)アストンマーティン DB12がもたらす内燃機関の絶えまなき脈動

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【特集】ブランド別スポーツカー動向(9)アストンマーティン DB12がもたらす内燃機関の絶えまなき脈動

2023年5月24日(現地時間)にカンヌでワールドプレミアされ、その6時間後には日本で初公開。世界中が注目するアストンマーティンDBシリーズ最新作のハンドルを早くも握る機会をモナコで得た。(Motor Magazine2023年9月号より)

0→100km/h加速を3.6秒でこなしきる
「私たちは世界でもっとも望ましいウルトララグジュアリーな英国のパフォーマンスブランドを創造するという簡潔で大胆な目標を持っています」と、プロダクト&マーケット戦略責任者アレックス・ロング氏は試乗前のプレゼンで語った。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

その意味が試乗を終えたあとに理解できた。つまり進化したこのモデルの真価は、パフォーマンスの昇華にあるのだ。

DB12のボンネットフードにはイギリスの有名グラフィックデザイナー、ピーター・サヴィル氏が手がけた新しいブランドバッジがつけられていた。また開口面積が広がったDBグリルは、より大きなパワーを得るために高い冷却効率が求められた結果だという。

高性能ぶりを想起させる迫力と美しさ、すなわちスポーツとエレガントをデザインするセンスもウルトラ級なのである。

DB12の全領域で性能を向上させたという4L V8ツインターボエンジンは、先代にあたるDB11の535ps/675Nm に対し、680ps/800Nm に引き上げられ、0→100km/h加速は約0.5秒短縮した3.6秒を実現した。

そして後輪から圧倒的な加速力を発生するが、ドライバーのアクセルペダルの踏み方次第で情熱的にも穏やかにも自在に扱える。8速ATの変速スピードは上がったが、DCTとは異なり、滑らかだ。

またボディはアルミ製で、剛性はDB11比で7%強化。新採用の「eデフ」は完全なオープンからロックまでミリ秒単位という極めて短時間で切り替わる。サスペンションはDB11より500%も可変率を拡大し、タイヤはミシュランが専用開発した「パイロットスポーツ5S」を履く。

アグレッシブな性能の向上はドライブモードからも見て取れる。ダンパー設定には新たにウエットモードが加わり、低ミュー路走行に集中できたことで、他のモード選択におけるドライ路面の性能をさらに向上。このほかにも、DB12の進化を列挙したらキリがない。

いっそう洗練された新型はスポーツカーの枠を超えた
カチッとした乗り味は進化というよりも変化に近い。優れたレスポンスとダイレクト感をボディやエンジン、サスペンションやさまざまな電子デバイスによって仕立てられた精密さは、かっちりと糊の効いたYシャツに着替えたような硬質な乗り味を生んでいる。

乗り心地は、全般にダイレクト感が増した一方で、荒れた路面や凹凸に対してはより柔軟な所作を身につけていた。おかげで南仏の険しい山間ルートにあるタイトコーナーでも、しなやかさでありながらピタリとラインをトレースして曲がる。

操舵フィールは、決して重くなく中立付近からリニアなレスポンスが得られるうえ柔軟だ。市街地ではクルマからの雑音や振動が抑えられ快適性も向上。エンジンが持つ性能のうち、ほんのわずかのパワーを使いながら、この美しいボディを身にまとって、買い物へ出かけることができたらなんと優雅だろう。

インテリアの進化も著しい。センターコンソールのタッチスクリーンやスタートスイッチの下に移されたシフトセレクター、コクピットのデジタルディスプレイの鮮明さなどから実感できる。ちなみにコネクテッド機能も搭載する。

さらにインテリアの素材やデザイン、仕上げのクオリティは極めて高い。アストンマーティンが厳選したレザーをふんだんに使い、それは天井にまでおよぶ。そのクラフトマンシップに包まれて、心の豊かさや幸福感が増すようだった。

実は、ひとりの女性としてアストンマーティンとの距離を縮めたのがDB11だった。パフォーマンスの高さはもちろん、その上、良い芸術品が持つ気品さえ漂う美しさに引き込まれてしまった。

さらなる進化を遂げたもまた、単なるスポーツカーにあらず。私なんかよりも腕も目も肥えた大人たちを惹きつけるモデルへと昇華したことは間違いない。(文:飯田裕子/写真:アストンマーティン ジャパン)

アストンマーティン DB12主要諸元
●全長×全幅×全高:4725×2060×1295mm
●ホイールベース:2805mm
●車両重量:1685kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●総排気量:3982cc
●最高出力:500kW(680ps)/6000rpm
●最大トルク:800Nm/2750-6000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR

コラム:【ブランド別スポーツカー動向】アストンマーティン
アストンマーティンは2030年までに完全電動化を目標にしている。それに向けて、 2023年6月26日に米国EVメーカー「ルシッド」と提携を結びEVのパワートレーン供給を受けることを発表し、次世代BEVモデルのイメージを公開した。

一方で、2023年7月11日には、最後のエンジン時代を謳歌すべく5.2L V12ツインターボに6速MTを組み合わせた限定車「VALOUR(ヴァラー)」を発表している。

[ アルバム : ブランド別スポーツカー海外試乗&動向<アストンマーティン> はオリジナルサイトでご覧ください ]

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