ハイブリッドパワートレインを搭載したベントレーの新しい「フライングスパーアズール」に、小川フミオが試乗した。新世代の超高級サルーンに迫る。
これぞベントレー!
SUV全盛のいまだけど、セダン好きなひとは少なからずいるはず。一度は乗ってみたい……と、そういう人の憧れは、ベントレーかもしれない。しっかりした個性が魅力的だ。
ベントレーが手がける4ドアセダンは「フライングスパー」と呼ぶ。今回紹介したいのは「フライングスパーアズールハイブリッド」。パワートレインは、V6プラグインハイブリッドで、全輪駆動システムを組み合わせる。
ベントレーに少し詳しい人は、“アズール”といえばかつてはカブリオレのことだったよね、と、覚えているかもしれない。今アズールは、快適装備を充実させた仕様なのだ。
たとえば「シートコンフォートスぺシフィケーション」は標準装備で、「長距離のドライブも、乗員全員にとって今までにないほどエフォートレスな旅になる」と、ベントレー。
ヒーター、ベンチレーション、リラクゼーション機能、コンフォートヘッドレスト等装備で、さらに22段階の調節が可能。リヤシートも、14段階にわたって電動で調節が可能だ。
フライングスパーの、そもそもの魅力は、リヤフェンダーを強調したキャラクターラインと、あえて前後長を短めに見せたブート(トランク)によるファストバック的なスタイルにある。
そもそもベントレーは、車高はスポーツカーみたいに低くないけれど、スポーティな走行も出来てしまうセダン&クーペという、独自のキャラクターが特徴的だった。
昨今では、SUV「ベンテイガ」がもっとも売れ線で、往年のラインナップは崩れてしまった感があるものの、後席も重視したフライングスパーに乗ると、これぞベントレー! と、気分がアガる。
セダンの長所をすべて備えているベントレーは、2030年にラインナップの完全電動化を表明しており、2025年にまずピュアEVとして開発されたモデルの第一弾が発表される。その後は4年ごとに新型BEVが登場するとか。
このなかには、フライングスパーの後継も含まれているそうだけれど、現行モデルがそのまま電動化されることはない、と、ベントレー。いつ、その後継車が発売されるかも定かでなく、それまではフライングスパーが現行のまま生産続行されるはずだ。
今回のフライングスパーアズールハイブリッドは、2894ccV6ツインターボ搭載で、400kW(544ps)の最高出力と、750Nmの最大トルク(ともにシステム合計)を誇る。たしかにすごい数値だ。かつてのV8エンジンより2気筒も少ないが、デメリットは感じなかった。V6+モーターの組み合わせでも、巨艦を静々と走らせる。さきに登場したベンテイガのプラグイン・ハイブリッドとは異なるV6で、ゆえに出力もフライングスパーのほうがかなり高めだ。
フライングスパーアズールハイブリッドは、静止から100km/hまで4.3秒で加速するというパワフルなモデルだ。しかし“その気になれば(速い)”というのがいい点。
市街地でドライブしているときは、約40km/hまでは電気モーター優先で走れるので、モーターのトルク感の恩恵を受けられるし、エンジンが始動しても、速く走れとドライバーをせっつくことはない。
その気になれば、速度計の針が壊れたんじゃないか? というぐらい、上まで跳ね上がるような加速を味わえるものの、まっとうな速度域を、大変気持よくクルーズできるところが最大の良さであると感じられる。
車重は2.5tあるので、とくに高速道路での乗り心地はしっとりして、快適。たっぷりしたクッションのシートに身をあずけて、ハンドルを握っていると、じつにいい気分だ。
後席も同時に居心地がよい空間に仕立てられている。レッグルームもヘッドルームも充分に余裕があり、シートはやはり快適だ。
内装の素材や色は、かなり自由にパーソナライゼーションが可能とのこと。試乗した車両では、前のドアと後ろのドアと、内張のカラーコンビネーションが逆になるようなデザインで、ベントレーはこういうところがうまい! と、感心した。
ウッドパネルも、色合いも使いかたも、雰囲気を出していて、特別感がたっぷり味わえる。同時にオーディオの再生能力もなかなか高くて、私にとっては、じつに快適性が高かった。
セダンは、そもそも一般論としてSUVよりサスペンションの自由度が高くて乗り心地がよく、乗降性も高く、スタイリッシュだ。フライングスパーは、ベントレーのラインナップにおいて、まさにセダンの長所をすべてそなえていた。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
あそこに出てくるオーナー達を彩る小道具のひとつがベントレー。
クルー工場でオーダー仕様を頼むのが彼らのスタイル。
クルマだけ突出してるのが中国人、日本人。
ベントレー凄いね。