■小さなボディで「3列シート」を成立させたマジックとは
今でこそ軽自動車も立派なモデルが増えており、ファーストカーとして十分使用できる車種も珍しくありませんが、1990年代から2000年代前半くらいまでは、まだまだ軽はあくまで軽であり、ステップアップして普通車に乗り換えるというのが当たり前と考えられていました。
そんな当時、全長3.4m級の軽自動車ボディ骨格をベースとしながらも、より大きな排気量のエンジンを搭載した「軽自動車ベースの普通車」というものが多数存在していました。
【画像】わっ!「めっちゃ軽なのに3列!?」 全長3.7m級「超狭小」ミニバンを写真で見る(39枚)
そのなかでも、実は各社がラインナップしていたのが、軽ワンボックスワゴン・バンをベースとした超小型「3列シート」ミニバンでした。
軽自動車規格は最大でも4人までしか乗ることができませんが、普通車となればその縛りはなくなり、多人数乗車が可能となるため、メリットも大きかったのです。
そのため道路や駐車場事情などで車体の大きなミニバンの購入をあきらめていた層などから、一定の支持を集めたといいます。
今回はそんな軽自動車ベースの3列シート車を振り返ってみたいと思います。
●スバル「ドミンゴ」(初代:1983年~1994年/2代目1994年~1998年)
軽自動車ベースの3列シート車の先陣を切ったのが、1983年9月に登場したスバル「ドミンゴ」でした。
4世代目の軽ワンボックス「サンバートライ」をベースに、1リッターエンジンを搭載し、乗車定員7名の3列シートを備えたモデルです。
ボディサイズこそ大型バンパーなどでベース車より拡大されていましたが、室内空間は軽のサンバートライと同じ。
そこに巧みにシートをレイアウトし、広々とはいえないもののしっかり7人が乗ることができるスペースを確保しており、4WDモデルが設定されていたこともあって道の狭い山間部のユーザーや降雪地帯のユーザーに支持を集めたのでした。
1994年6月には11年ぶりのフルモデルチェンジを実施し、ベースを5代目の「サンバーディアス」に変更。エンジンは先代の途中に追加された1.2リッターに統一し、初代には設定のなかったATモデル(ECVTを採用)も設定するなど着実に進化しました。
ポップアップルーフを備えた「車中泊」仕様の「アラジン」も設定していましたが、初代ほどの人気を獲得するには至らず、他のライバル車が登場する前の1998年末に姿を消すこととなりました。
●三菱「タウンボックスワイド」(1999年~2001年)
1999年に登場した「ミニキャブ」ベースの乗用モデルである「タウンボックス」をベースに、ブリスターフェンダー風のボディパネルや、タウンボックスとは異なる個性的な顔をプラスし、1.1リッターエンジンと3列・6人乗りのレイアウトで軽自動車の枠を飛び出した「タウンボックスワイド」。
あくまで乗用車的な作りとなっていたライバル車に対し、タウンボックスワイドはビジネスユースも考慮していたのか、3列目シートはマイクロバスの補助席のような折りたたみ式となっており、あくまでエマージェンシー用といったもの。
またエンジンもライバルが1.3リッターを搭載していたのに対し、1.1リッターという点もあり、さらにエクステリアも良くも悪くも当時の三菱らしいアクの強いものだったこともあってか、2001年には早々と販売を終了。およそ2年間の販売台数は3500台弱に留まってしまいました。
■フロアを延伸しロングボディ化したモデルも
●スズキ「エブリイ+」/「エブリイランディ」(1999年~2005年)
1999年1月にフルモデルチェンジを果たした「エブリイ」をベースに、張り出したフェンダーと衝突安全性能も考慮したボンネット部分を追加し、1.3リッターエンジンを搭載して登場した「エブリイ+(プラス)」。
2列目はキャプテンシートとし、3列目には3人掛けのベンチシートを備えた7人乗りレイアウトとなっており、すべてのシートにリクライニング機構が備わるなど、乗用車らしさは「エブリイワゴン」よりも高められたものとなっていました。
2001年5月のマイナーチェンジでは車名を「エブリイランディ」に改めただけではなく、フロアに備わっていたシフトをインパネに移設し使い勝手や室内の広々感を向上させたほか、電動オートステップや2列目シートに折りたたみ式テーブルを設定するなど、使い勝手も向上させています。
その後、ベースのエブリイがフルモデルチェンジを実施すると、エブリイランディは姿を消すこととなりますが、「ランディ」の名前は2007年に登場する、日産「セレナ」OEMの普通車3列シートミニバンへ引き継がれました。
●ダイハツ「アトレー7」(2000年~2004年)/トヨタ「スパーキー」(2000年~2003年)
ダイハツの軽ワゴンである「アトレーワゴン」をベースに1.3リッターエンジンを搭載して普通車とした「アトレー7」は、その車名の通り7人乗りの3列シート車となっていました。
ボディ外板にエアロパーツを装着して軽自動車枠を超えていたのは他のライバルと同様ですが、アトレー7はサードシートのフロアをアトレーワゴンよりも230mmも延長したほか、ホイールベースも10mm延長し、より快適性の高い室内空間を実現していたことが特徴です。
そのため、広い荷室を活かした商用モデルの「ハイゼットグランカーゴ」もラインナップしていたのが、ライバル車とは異なるポイントとなっていました。
なおトヨタ版「スパーキー」はアトレー7のOEMモデルとなっており、クルマとしての成り立ちは共通でしたが、装備をトヨタ準拠にしたところスタート価格がアトレー7よりも高くなり、販売台数が伸び悩んで先に終売するという悲劇も巻き起こっています。
※ ※ ※
このように現在では各メーカーのラインナップから消えてしまった軽自動車ベースの3列シート車。
軽自動車が進化したことはもちろんですが、2000年代にはコンパクトクラスにもトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」といった、しっかりゼロから開発された3列シート車が存在するようになったことで、軽自動車ベースの3列シート車は姿を消してしまったといえるでしょう。
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駐車スペースが狭い都市部の一軒家とかに需要があるって中古車屋の方が言ってたのを思い出す。