「リバイバル」とは、「一度すたれたものが、見直され、再びもてはやされること」とある。クルマ界においては、かつて販売されていたモデルが、当時のデザインを再現しながら、現代の技術で復活を遂げたモデルを「リバイバルカー」「リバイバルモデル」などと呼んでいる。
近年では、アルピーヌの復活があったり、ミニはもちろん、ビートル、フィアット500といったリバイバルカーが登場し、人気を博している。国産車に目を向ければ、かつてスバルが同社の「スバル360」を模した「R1」を発売して以降、過去の名車をオマージュしたモデルは発売されていない。
後方支援もゴムボート運搬もおまかせ!! 1台で2台ぶん働く最新の消防車両がめちゃ頼もしい!!
そこで今回は、スバルマニアとして知られる自動車ライターのマリオ高野氏に、「R1」を誕生させたスバルにリバイバルを期待するモデル、過去の名車のなかから現代の技術で作り直して発売して欲しい車種を挙げてもらった。はたしてマニアが期待するリバイバルカーとはなんなのか?
文/マリオ高野
写真/スバル
■WRCでも活躍したあのモデルを!
スバルマニアのひとりとして、いま最もリバイバルしてほしいのは「初代インプレッサWRX」だ。型式で「GC8」と呼ばれるモデルで、5ナンバー規格内の軽量コンパクトなボディにハイパワーターボエンジンを搭載。WRCなどモータースポーツにおいても無類の強さを発揮し、歴代スバル車のなかでも人気度の高さではナンバーワンを誇る。
量販車としてのインプレッサにハイパフォーマンスを求めた初代インプレッサWRXは1992年に誕生した
そのため、近年中古車相場の高騰が著しい国産スポーツモデルと比べても、特に値上がりが激しく、伝説の限定車「22B」に関しては、4ケタ万円で売られていることも珍しくない。標準モデルでも後期型の程度が良好な物件に関しては、当時の新車価格の倍以上(基本「ASK」が多い)で流通しており、とても手が出せない状況だ。現在所有するオーナーも中古車相場の高騰に伴う盗難リスクの激増ぶりに怯え、消耗パーツの相次ぐ欠品や廃番に、先の見えない日々を過ごしている(筆者もそのひとり)。
この窮状を救うためにも、GC8をリバイバルモデルとしてなんとか復活させてほしい。リバイバルというか、本音としては価格が当時の倍になってもいいから、”そのまま”再生産してもらうというのが究極の理想だが(笑)、環境性能や安全性の面でやはり難しい。
■BEVならすべてオーケー!
そこで比較的実現が可能っぽいリバイバルプランとしては、やはりBEV(バッテリー電気自動車)化が理想的だろう。電気モーターの出力特性を「GC8時代のEJ20」にかぎりなく近い味付けとし(過給タイムラグの大きな高回転型ドッカンターボ)、不等長排気時代のドロドロ系ボクサーサウンドを電子音で再現(騒音規制クリアのため車内に聴かせるだけでよい)。
四輪の電動駆動制御も、現代のハイテクを駆使すれば「ビスカスLSD付きセンターデフ」あるいは「ドライバーズコントロールセンターデフ(DCCD)」の運転フィールを再現することは不可能ではないはず。挙動やフィーリングの再現にあたっては、グランツーリスモの技術を取り入れるのが効果的だ。ポリフォニー・デジタル社と共同開発し、アプライドやグレード、限定車ごとの違いもリアルに再現してほしい!
スバル初の量産市販BEVとなるソルテラの技術を活かすことができるのか!?
運転フィールの再現において最大のネックになりそうなのは、「TY75」と呼ばれる5速マニュアルトランスミッションをどうするかだ。MTのシフトフィールの再現はグランツーリスモでもまだできていないし、BEVで5速MTの操作フィールを電子的に再現するのはかなり難しいだろう。最悪、ミッションは妥協して疑似的なものとし、変速操作はパドルシフトでもいい。WRCのグループAでもパドルシフトが採用されたので、古参のマニアも納得できなくもないはずだ。
さらに現状の技術でネックとなるのは、やはりサイズと重量。GC8の魅力である5ナンバー以下のボディサイズと1200kg前後の軽い車重をBEVで実現するのは困難を極めそうだが、将来的に今の数倍軽量コンパクトな駆動用バッテリーが生み出されれば不可能ではなくなると期待している。衝突安全性確保のためなら、若干のボディ拡幅はやむを得ないところか。
BEVならスバル車の宿命でもあるフロントの重さを劇的に解消し、重量配分を最適化してオリジナルのGC8を凌駕するハンドリングマシンに仕立てることも夢ではない。さらに、BEV化すれば、直しても直してもすぐに再発を繰り返すエンジンオイルやパワステフルードの漏れなど、GC8昔年の難点もことごとく解消されるので、夢のようである。まさに究極の理想のGC8として生まれ変わることができるはずだ。運転支援システムのアイサイトも当然、装備できるだろう。
■マニアが歓喜する昭和の名車たち
あるいは、クルマそのものではなく、今もスバルファンが愛してやまない「EJ20エンジン」のリバイバルはどうだろうか。水素エンジンやバイオマス由来の新世代燃料などで内燃機関ユニットの将来性が広がるなら、惜しまれまくって退役したEJ20を新世代燃料に対応させ、次世代または既存の現行モデルに搭載するのだ。
さらに、別の車種のリバイバルモデルを期待するなら、FF小型セダン&ワゴンの「スバル1000」、同1000のプラットフォームを継承した「スバル1300G」、レガシィの祖となる「レオーネ」などを挙げたい。どれがリバイバルされても、スバルファンなら涙を流して喜ぶに違いない。大成功するはずの(?)GC8のBEVモデル化を皮切りに、昭和のスバル車たちのリバイバルモデルも続々と市販化してほしい。
当時FFであることが画期的だった「スバル1000」(1965年)
初代WRX(GC8)の後継モデルは3世代続いているが、やはりどの世代も中古車は軒並み高騰中。発売が期待される新型が登場しても500万円前後の高額車になるのは確実で、すべてのWRXは高嶺の花になってしまった。GC8は昔を懐かしむ中高年はもちろん、ゲームや漫画、ネット動画などで存在を知った若者まで幅広く支持されているので、20年後あたりには何とか実現してほしいと願う。それまで長生きをせねば。
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