ランボルギーニの「ウルス ペルフォルマンテ」は、スパルタンなスーパーSUVだった! 小川フミオがリポートする。
人ひとり分の軽量化
走らせてとにかく楽しい……そんなSUVが欲しいならランボルギーニのウルス ペルフォルマンテがイイ! 2023年8月に発表された、走り屋のためのモデルで、軽量かつ高性能がセリングポイント。実際に、楽しい!
ウルスって、いまさらながらだけど、スーパースポーツカーでならすランボルギーニが送り出した傑作であると思う。なににも似ていないシャープなスタイリングと、“コクピット”と呼びたくなる凝ったデザインのダッシュボード。エンジンをかけるのにも、赤いフタと親指ではじいてからスターターボタンを押すという儀式もまた嬉しい。
サブネームのペルフォルマンテは、察しのいい読者なら先刻気づいているとおり、クルマだと高性能を意味するパフォーマンス。490kWの最高出力と850Nmの最大トルク。「マジ?」と、問い返ししたくなる高性能スペックだ。
ペルフォルマンテは、標準モデルより車高を20mm落としたばかりか、軽量炭素樹脂をボンネット、リヤスポイラー、ホイールアーチカバーなどに採用。49kgと小柄な人ならひとり分に相当する軽量化を実現している。
スポイラー形状変更など車体の空力を見直したことで、高速で車体の浮き上がりを防ぎ、さらなるスピードをかせぐためのダウンフォースが38%向上しているとされる。
ウルスはそもそも、スマートなスタイルが魅力的だ。5137mmの全長に対して、1618mmの全高。プロファイル(側面)でみると、グリーンハウスの高さが抑えられていることもあり、クーペライクで、そこが競合と一線を画している。2017年発表だが、古くささはなく、見るたびに「いいなぁ」と、思う。
避けられない電動化を前に、2024年初頭のラインナップはかなり整理されていて、今回のウルス・ペルフォルマンテと、同じ性能を持つ3996ccV型8気筒エンジンに、フルタイム4WDの組合せのウルスSの2本立てだ。
ペルフォルマンテのほうが約50kg軽く、ボディ全高も20mm低められている。そのぶん、加速性能がわずかだけれど、Sより高い。静止から時速100kmまでの加速を比較すると、ペルフォルマンテはSよりコンマ2秒速い、3.3秒と驚くべき速さなのだ。
ペルフォルマンテとSとではインテリアの方向性もことなる。Sがレザーシートなど、ちょっとラグジュアリアスな仕立てなのに対して、ペルフォルマンテは人工スウェードで、レーシー(レースカーののような仕立て)である。
薄くて、かつ乗員のからだをサポートする部分がしっかり張りだしたペルフォルマンテのシート。クッションはすこし硬めだけれど、包みこまれるようだし、コーナーをまわっていくときは、身体をしっかり支えてくれて、じつによい。
色づかいも、試乗した個体の仕様は、ブラック基調で、外装色と同じビビッドなオレンジが挿し色として大胆に使われている。この洒落た感覚がランボルギーニの、もうひとつの魅力だと私は思っている。ドアを開けた瞬間に気分がぱっと昂揚する。そんなクルマはそうそうないんじゃないだろうか。
よくまわるV8エンジンエンジンの素晴らしさは期待どおり。V型8気筒ツインターボユニットは、とにかく力強い。車重が2150kgあるとはとうてい思えないほど、スムーズな加速で、それが途切れることなくずっと続いていく感覚には、あらためて感銘を受けた。
ペルフォルマンテとSとのもうひとつ大きな違いは、Sがエアサスであるのに対して、ペルフォルマンテは金属バネ。軽量であり、かつセッティングが容易だからだろう。ペルフォルマンテはとりわけスポーティな走りが身上なので、金属バネでよいのだ。
乗り心地は、そのため、Sよりずっと硬め。路面によっては、突き上げを感じるほどだ。そのぶん、ステアリングの反応はシャープで、ドライブモードでスポーツを選ぶと、アクセルペダルへの反応のより速くなり、ドライブを楽しむために乗るクルマ、という印象が強くなる。
ウルス ペルフォルマンテのスポーティな操縦感覚は、きっとクセになる。もちろんストラーダ(ストリート)モードでもじゅうぶんに気持ちいいのだけれど、よくまわるV8と、カバーする範囲が広そうなターボチャージャーがせっかく装備されているのだから、これを堪能しない手はない、と私は勝手に納得してしまった。
ウルスは私にとって思い出ぶかいクルマだ。ローマのサーキットも走ったし、当時のCEOとともにアイスランドを走りまわったこともある。つねに痛快さと、いっぽうで安心を与えてくれるクルマだった。このクルマのモデルチェンジは難しそうだ。
まだ新車で買えるうちに、いまのモデルを購入するのもアリだと思う。
文・小川フミオ 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)
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