「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、BMW 6シリーズ グランクーペだ。
BMW 6シリーズ グランクーペ(2012年:ニューモデル)
BMW 6シリーズに4ドアクーペが加わった。その名は「グランクーペ」。メルセデス・ベンツのCLSやアウディのA7に対抗するモデルだが、BMWらしく「駆け抜ける歓び」も忘れてはいない。日本導入を前にイタリアで開かれた国際試乗会でのレポートをお届けしよう。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
メルセデス・ベンツが2004年に発表した「CLS」は。Eクラスをベースにした4ドアクーペだったが、リアシートはクーペスタイルの犠牲になり、居住性はけっして良いとはいえなかった。しかし、居住性よりもカッコよさを重視するユーザーからは支持され、世界的にヒット作となった。実際、日本の路上でもその姿を見かけることは多い。
さすがにここまでヒットすると、ライバルメーカーたちも見過ごすことはできない。そこでさっそく同じカテゴリーのクルマ作りに着手し、アウディはA6セダンをベースにA7という4ドアクーペをデビューさせた。
そして今回紹介するBMW初の4ドアクーペが、「6シリーズ グランクーペ」だ。その存在は、昨春(編集部註:2011年)の6シリーズ カブリオレ海外試乗会のときに、チーフデザイナーがその存在をもらしたことで明らかになっていた。その6シリーズ グランクーペが日本デビューする前に行われた国際試乗会の舞台は、イタリアのシチリア島。まずは、実車をチェックしていこう。
室内やトランクの広さはライバルのCLSを凌ぐ
今回の試乗車は、3Lの直6ターボエンジンを搭載した、640i(ガソリン)と640d(ディーゼル)。さらにガソリンのV8ツインターボを搭載した650iと、その4WD版となる650i Xドライブが設定される。今のところ、日本仕様は640iと650iが設定される予定だ。
まず、640iでスタートする前に、居住空間をチェックしてみよう。というのも、試乗前に行われたプレスカンファレンスの会場に置かれていた、ライバルであるメルセデス・ベンツ CLSよりも広く感じられたからだ。さっそくリアシートに座ってみる。全高はCLSより20mm以上も低いのに、乗降時にドア上縁に頭をぶつけることはない。座った感じも、着座位置はやや高めなのに、ヘッドスペースや顔の横の圧迫感がなく、ドアウインドーを開ければ顔を出すこともできる。トランクも広い。奥行きは1110mm、左右幅は1380mmあるので、ゴルフバッグを3セットは収納できる。確実にライバルを上回る広さだ。
運転席に座り、スタートする。ストレート6のエンジンはBMWらしく、相変わらずスムーズだ。8速ATとのマッチングも良く、トルクは1500rpmから太く、イッキに7000rpmまで上昇する。しかも、エンジン音は6000rpmを超えても室内への侵入はおさえられている。本当にBMWのストレート6は、いつ乗っても素晴らしいエンジンだ。
そして、100km/h巡航のエンジン回転数はDレンジで1700rpmときわめておとなしいが、ここからアクセルペダルを踏み込んでもストレスなく加速していく。アイドリングストップ機能も装備されるので、エコ性能も高い。ちなみに今回の試乗中の平均燃費は、8.2km/Lだった。このクルマの性格を考えれば、十分に満足できる数値といえるだろう。
日本仕様の車両価格(税込)は、640iが986万円、650Iは1257万円となっている。性能や装備、そして価格などを考えても、CLSやA7に比肩するか、それ以上の人気を集めそうだ。
BMW 640i グランクーペ(日本仕様) 主要諸元
●全長×全幅×全高:5010×1895×1390mm
●ホイールベース:2970mm
●車両重量:1860kg
●エンジン:直6 DOHCターボ
●総排気量:2979cc
●最高出力:235kW(320ps)/5800rpm
●最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1300-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・70L
●JC08モード燃費:12.4km/L
●タイヤサイズ:245/45R18
●当時の車両価格(税込):986万円
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そして、この現代の4ドアクーペの先鞭を付けたのは、ヨーロッパのメーカーではないGMのポンテアック・グランプリなのですが、誰もそこには言及しないんですよね。アメリカ車は「アメ車」という蔑称のもとに差別されているので。