欧州COTY大賞に輝くコンパクト電動ジープ! 日本導入前に〇と×をまとめた
掲載 carview! 文:木村 好宏 3
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2023年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーの最終リストに選抜された7台のニューモデルは「ジープ アベンジャー」「キア ニロ」「ニッサン アリア」「プジョー 408」「ルノー オーストラル」「スバル ソルテラ/トヨタ bZ4X」「VW ID.BUZZ」であった。いずれもトップの座に選ばれても遜色のない魅力をもったモデルであったが、大賞に選出されたのはジープのサブコンパクトカー「アベンジャー」だった。
ステランティスグループのジープブランドから2022年のパリサロンで発表されたアべンジャーには、同グループ初のBEVも存在。成り立ちはまさにヨーロピアンでPSAの電動化プラットフォーム「eCMP」を使ってイタリア、トリノでデザインが始まり、生産はポーランドのティフィである。ステランティス・ジャパンもすでにBEVバージョンの実車を公開、日本での販売に意欲的だ。
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注目の試乗会はスペインのマラガで開催された。ジープのアイコンである7スロットグリルと四角いヘッドライトをもつアベンジャーは、「コンパス」や「グランドチェロキー」を小さくしたようなデザインが与えられている。ホイールハウスとボディを取り囲む黒いハードプラスチック製のプロテクトモールがいかにもジープブランドらしいが、オフロードよりも都会のスーパーマーケットなどで金属製の買い物カートが直接ボディにあたるのを防ぐ役割のようにも見える。
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フロントに搭載されるパワートレーンは156psと260Nmを発生する電気モーターで前輪を駆動する。
カタログ上のスペックでは0-100km/hが9秒、最高速度は150km/hと控えめである。床下に搭載されるバッテリーは400Vで102個のセルをもち容量はネットで50.8kWh、航続距離は最大でおよそ400kmと十分だ。さらに比較的小さなバッテリー故に充電時間も11kWの家庭用電源(AC)で5時間30分、100kWの急速充電(DC)では24分(80%)と比較的短時間で満充電となる。
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ドライバー正面のモニターとダッシュボード中央のタッチスクリーンと、現代のスタンダードに則ったインテリアデザインはアナログスイッチも残しているので視認性と操作性に優れており、大画面のタッチスクリーンにアレルギーを持っているドライバーにとっては救いだ。さらにダッシュボードの横長の小物入れをはじめ車内には有用な収納場所がたくさんあってとても便利である。
空車重量約1.6トンのボディに対してパワーは必要にして十分で、電気モーター独特の立ち上がりから直ぐに得られるトルクのお陰で発進はクイック、高速道路の進入でも不安は全くなく、スペインの法定速度110km/hにはすぐに到達する。乗り心地はフランス車風のソフトなクッションをもつシートのおかげで快適である。また、コンパクトなボディの最大回転直径は10.5メートルと市街地では取り回しが良かった。
全体的に軽いステアリングフィールがちょっと気になるが、コーナーでもしっかりと路面感覚を失うことなくラインをトレースできた。ちょっとオーバースピードでカーブに入ると早めにESC(横滑り防止装置)が介入するが、その作動は穏やかで唐突ではなく安心感がある。
ところでジープブランドでありながらこのアべンジャーの駆動系は“FFのみ”で、4WDの計画はない。ただし短い前後のオーバーハングと20cmの最低地上高によってアプローチアングルは20度、デパーチャーアングルは32度もある。さらにアンチスリップコントロールや、雪や砂地向けなど3種類のドライブモードでオフロードへのポテンシャルも隠しもっている。
一方、リアシートの居住性も試したが、普通サイズの日本人(1.7m程度)であれば3人でのドライブも短距離なら可能で、当然中央にヘッドレストも用意されている。またトランク容量はリアシートを立てた状態で355リッターと、ファミリーのショッピングはもちろんショートツアーにも十分であろう。
冒頭に述べたようにこのアべンジャーはヨーロッパで誕生したアメリカンブランドという国際商品である。BEVにも関わらずジーンズのようのように奇をてらわず、実用的でフレキシブル、普段着のような魅力がある。全長およそ4メートルのジープデザインを纏ったサブコンパクトBEVは、日本でも人気を得る要素を十分に備えている。ただし問題は価格で、テストしたファーストエディションはドイツで3万9900ユーロ、円安の影響もあって約600万円にも達するのだ。
そしてそれにも関わらず、ステランティス・ヨーロッパによれば欧州における6月からの発売を前に既に2万台を超える受注が届いているようだ。
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テキスト:キムラ・オフィス/木村好宏/TG
写真:ステランティス
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