ホンダが取り組んでいる技術開発などをメディア関係者にお披露目する「Honda Meeting 2019」が開催され、今後の市販車に搭載される新たな技術を一足お先に目にすることができました。
「ホンダe」に赤いボディカラーが設定されるのは日本仕様だけ そのなかでも、筆者(工藤貴宏)がとくに気になった展示のひとつが、「Honda e(ホンダ イー)」の実車です。
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ホンダeとは、2020年から発売が予定されているEV(電気自動車)で、すでに2019年春のジュネーブモーターショーでプロトタイプが公開されました。全長は4mを下回るコンパクトなサイズで、多くの人から支持を得そうな遊び心のあるデザインも特徴といえるでしょう。
そんなホンダeですが、まず驚いたのは、会場に展示されていた車両のボディカラーが赤だったことです。ジュネーブモーターショーに出展された車両のボディカラーは白、欧州メディア向けのプロトタイプ試乗会ではイエローが使われていますが、赤が公開されたのは今回が初めでした。
すでに予約受付が開始されている欧州のホンダeの予約専用のウェブサイトを見ると、「プラチナムホワイトパール」や「チャージイエロー」のほか、「クリスタルブラック」、「モダンスチールメタリック」、「クリスタルブルーメタリック」が設定されているものの、赤はありません。
赤は日本仕様の専用色という情報もあり、しかもホンダeによく似合っているので、海外のファンからはうらやましがられることになりそうです。
今回報道陣に公開された車両を見ると、ジュネーブモーターショーに出展された車両とはフロントグリルの細部が異なる(プロトタイプはホンダエンブレムが光るが市販モデルは光らない)ので、市販モデルであると推測できます。
さらに室内を見ると、右ハンドルかつウインカーレバーが右に組み込まれ、インパネの一部に漢字の表記もありました。ホンダからの正式な発表はありませんが、それらの仕立てから判断すると、日本仕様そのものであることは間違いないでしょう。
インパネは、運転席から助手席の前まで広範囲にわたって大型液晶が設置された先進的なデザインです。また、ドアミラーは、市販モデルでも全車がカメラ式となるようです。
このカメラ式ミラーは、車両からの張り出しが少なく、しかもドライバーからは見えない場所にあるので、まったく死角を作らないのが美点。ドアミラーの概念を超えた作りといえます。
さらに、ドアに備わる後方確認用カメラの下には、全方位モニター用のカメラも組み込まれていました。
今後のEVは後輪駆動を基本として走りとパッケージングを両立 そんな期待大のホンダeですが、驚いたのはその駆動方式。なんと後輪駆動なのです。もちろん市販仕様も、そのまま後輪駆動で発売されます。
くつろぎの空間が広がる「ホンダe」の内装 このボディタイプでは一般的な前輪駆動ではなく、後輪駆動とした理由について、開発をまとめているホンダ四輪R&Dセンター LPL主任研究員の人見康平氏は次のように説明します。
「ホンダeは、走りを楽しめるEVを目指しています。パワーもしっかりあるので、後輪駆動のほうが楽しく走れますよね。
また、車体サイズの割に径の大きなタイヤ(17インチ)を履いているので、後輪駆動としたほうがハンドルの切れ角を大きくすることができ、小回りを利かせられるというメリットもあります」
現在のホンダのラインナップは、軽の「S660」と「アクティ」は後輪駆動ですが、普通乗用車は前輪駆動もしくは4WDで、後輪駆動車はありません。ホンダeは、FRスポーツカー「S2000」以来の後輪駆動車となるのです。
Honda Meeting 2019では、今後の電気自動車用の考え方も示されました。そこで興味深かったのが、今回公開されたホンダeに限らず、ホンダの次世代EVは後輪駆動をベースとするという表明でした。
前輪駆動ではなく、後輪駆動もしくは後輪駆動をベースにフロントにもモーターを加えた4WDにするというのです。これは驚きました。
説明担当のエンジニアにあえて後輪駆動とする理由を尋ねてみたところ、次のような回答が得られました。
「後輪駆動とすることで、走りが爽快になりますよね。重量配分も(ハンドリングのために理想とされる)50:50に近づきます。
そしてモーターはエンジンより小さいので荷室床下へ搭載することが可能で、パッケージングも効率化できます。
タイヤも大きく切ることができるし、フロント部分(ボンネット内)の空間に余裕ができるので、変わったデザインのクルマも作れます」
考え方としては、荷室下にエンジンを搭載する後輪駆動とし、抜群のタイヤ切れ角を誇るルノー「トゥインゴ」に近いともいえます。
ホンダにはメカニズムのスペースを最小限にして居住空間を広げる考えの「MM(マンマキシマム・メカミニマム)思想」が根底にあり、これまではパッケージングの高効率化を実現するために前輪駆動を多く採用していました。
ところがEVでは、走りとパッケージングのために後輪駆動を基本とする方向へ大転換するというのだから驚かずにはいられません。
EV化はクルマのパッケージングも根本的に変えてしまう可能性があるのです。
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