スバリストさえリスペクトした歴代トップ3!
90年代当時、初代スバル・インプレッサWRXに乗るスバリストにとって、ランエボこと三菱ランサーエボリューションはまさに不倶戴天の敵。WRCでも市販車でも、「ランエボに勝つこと」はインプレッサWRXに求める最重要課題のひとつであり、ランエボと交差点で横に並ぼうものなら互いに火花を散らさずにはいられない存在。ときには憎悪の対象ですらあった。
【今さら聞けない】カタログにある「ブレンボ」や「ビルシュタイン」って何?
しかし、今となっては激戦地から生還した戦友のような情愛を覚える。もしこの世にランエボがなかったら、WRXもあまり進化しなかったはず。いつしかランエボは、多くのスバリストにとって感謝とリスペクトをしてやまない、敬愛すべき存在となった。
真っ向勝負を展開していた当時は否定的に見下しながらも、じつは内心では羨ましく思っていた性能やメカニズムも多々あるので、スバリスト的に衝撃を受けた歴代ランエボベスト3を挙げつつ、最強のランエボを讃えたい。
第3位:ランサーエボリューションIII
ランエボもI、IIに対しては性能、競技戦績ともにWRXの方が明らかに上といえる余裕があったが、IIIの登場は極めて衝撃的だった。
まずはド派手なエアロパーツ。いかにも大量の空気を吸い込めそうな開口部の大きいフロントスポイラーとでかいリヤウイング、そしてそれらのエアロの迫力を増強させるダンデライオンイエローのソリッドな黄色いボディによる威圧感はハンパなく、歴代もっともバックミラーに映るのが嫌なランエボとして今も記憶に刻まれている。 最高出力はWRX STIバージョンの方が5馬力も上だったにもかかわらず、クルマ雑誌が実施した0-400mタイム計測で負けることが多いなど、ランエボI、IIまでとは異なり、IIIの登場以降は「WRXよりランエボのほうが速い」と評されることが増えるなど、メディアの評価がわかれるようになったこともショックであった。
ランエボIIIはWRCでも大活躍し、1996年は5勝も挙げてドライバーズチャンピオンをスバルから奪取するなど、三菱のWRC大躍進の象徴に。1996年のスバルは3勝してマニュファクチャラーズタイトルは守ったが、「ランエボIII&トミ・マキネン」は、まさに驚異の存在として今も記憶に焼き付いて離れないでいる。
トップに輝いたのはWRCで成功を収めたアノ最強マシン!
第2位:ランサーエボリューションVIII
ランエボマニア諸兄からは異論が出そうだが、2位として称えたいのはWRXにはない「AYC」という武器を極めたランエボVIII。
「AYC」はランエボIVで初めて採用されて以来進化熟成を重ね、ランエボVIIIで左右後輪駆動トルクの移動量を2倍に高めた「スーパーAYC」となり、ひとつの完成系に達している。
WRXでも前後の駆動配分は積極的に電子制御化してきたが、IV以降のランエボはAYCで後輪駆動トルクの左右制御で旋回性能を上げるシャーシ制御を磨き、とくにフィーリング面においてはWRXとのもっとも大きな違いをもたらしていた。
WRX派としては、初期世代のAYCは「横置きFF車ベースのバランスの悪さを補う苦肉の策」などと蔑み、むしろそんなメカに頼らずとも同等以上の速さを発揮するスバルのシンメトリカルAWDの優位性を感じたものであるが、実は内心では気になって仕方のないメカであった。
専門家による比較でも、「自然なフィーリングで楽しいのはWRX」という評価が続いていたが、ランエボVIIIのスーパーAYCではフィーリング面での違和感の類いが解消され、「ストリート最強はランエボ」と評する声が多くなるという、WRX派にとってはショッキングな結果に。
実際、自分で乗ってみても異次元の旋回フィールに衝撃を受け、AYCの凄さを痛切に実感させられた。
第1位:ランサーエボリューションV
「最良」ならば進化の頂点にあるランエボXを1位に推したいところだが、WRX派として「最強」といえばランエボVを推さずにはいられない。
WRCへの参戦はグループAにこだわったことから市販車でもワイドボディとなり、エクステリアの威圧感がさらに増強。オーバーフェンダー化により、1998年当時のWRXでは純正装着できなかった17インチタイヤ(1998年3月発売のワイドボディの限定車22Bのみ17インチ装着)やブレンボブレーキを採用するなど、WRX派としてはハード面の細部において先を越された感の強いモデルであった。
ワイドボディ化は市販車でも戦闘力を高めたが、やはりモータースポーツで本領を発揮。WRCではWRカーで参戦するスバルをより市販車に近いグループAで破り、1998年にはドライバーズ/マニュファクチャラーズの両方でチャンピオンを獲得。ランエボVで初めて獲得したドライバーズタイトルは4連覇の偉業となるなど、WRCにおいてはスバルにもっとも大きな壁として立ちはだかったランエボとして記録にも記憶にも刻まれている。ランエボVの圧倒的な強さは3世代目のWRXの開発にも大きな影響を与えた。
当時のWRXがなかなか勝てなかったという意味においては、2002~2006年の全日本ラリーを席巻したランエボVIIも最強イメージが強い。(文:マリオ高野)
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