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「対極的な分野」で能力を発揮 ロータス・シックス(2) 現代へ受け継がれる軽量なコンセプト

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「対極的な分野」で能力を発揮 ロータス・シックス(2) 現代へ受け継がれる軽量なコンセプト

しなやかにタイヤを接地させる長いサス

ロータス・シックスのトライアルレーサーは、1960年代から眠りについていた。だが2010年に、ヒストリック・スポーツ・トライアル協会(HSTA)を立ち上げたマーティン・ハリデー氏が発見。徹底的なレストアが施され、現在に至る。

【画像】傑作はオフロードも強かった ロータス・シックス ケータハム・セブンと最新エミーラも 全175枚

ボディを復元したのは、英国のローチ・マニュファクチャリング社。可能な限りオリジナルが保たれているが、ボンネットはボロボロで再生できず、新品に置き換わった。本来のボンネットは、ハリデーのガレージに誇らしく飾られている。

サイドバルブのE93Aユニットとトランスミッションも、オリジナル。「ネメシス・レーシング社のジェレミー・ベネットさんが、ブロックのヒビを治すなど、素晴らしい仕事をしてくれました。彼は、古いF3用エンジンのリビルドも手掛けているんです」

ハリデー自身は、リアアクスルを再生させた。「新古品のクラウンホイールとピニオンは、以前から所有していました。ハーフシャフトは弱いことを知っていたので、高品質な素材で作り直してもらっています」

車重は、オースチン・セブンより軽く、小さなフロントブレーキでも制動力は驚くほど。ビーム式のフロントアクスルはシンプルで、軽く足まわりを仕上げている。

ハリデーが路肩の斜面へシックスを進めるが、苦労なしで走破する。柔らかくストロークの長いサスペンションが、しなやかにタイヤを接地させる。凹凸の多い路面で運転してみると、足まわりが柔軟に動く様子を感じ取れる。

驚くほどフレンドリーなクラシックカー

レストアは2022年に終了し、HSTAが主催するヘリテージ・スポーツ・トライアルレースへ出場。HEL 46としては58年ぶりの競技だったが、見事に優勝を掴んだ。2023年4月にも、別のトライアルレースで勝利している。

「現在モータースポーツに参加している中で、優勝を残した最古のロータスだと思いますよ。自分と妻は80歳になりますが、その2人が乗る70年も昔のクルマとしては、悪くない成績だと思いませんか?」

乗り心地は柔らかく、シフトチェンジは簡単。確かに、驚くほどフレンドリーなクラシックカーだ。トライアルレース用の備えとして積まれた、ジャッキとエアポンプ、2本のスペアタイヤが、不思議な組み合わせにも見える。

対して、アルミニウムの素地が鈍く輝くロードレーサーは、かなりシリアス。トライアルレースのシックスと見比べると、長く広く低く、ブガッティ・タイプ35にも似た雰囲気を漂わせる。

フロント・トレッドの方が、リアより広い。前後のタイヤは、逆ハの字のポジティブキャンバーで支える。

飛んでくる虫の一部を除ける程度の、小さく立ち上がったエアロスクリーンの後ろに、体を滑り込ませる。適度にタイトで、居心地が良い。

エンジンターン模様が施されたダッシュボードの中央に、美しいスミス社製のレブカウンターが納まる。エルバ・エンジニアリング社製のオーバーヘッド・バルブ・キットが組まれ、エンジンは8000rpmまで許容するという。

感心するほど扱いやすいエンジン

4気筒エンジンは一発始動。レスポンスは鋭く、アイドリング時から勇ましい。クラッチペダルは重めで、ストロークは短い。アクセルペダルのストロークは更に短く、積極的に運転するしかない。

最高出力は78psがうたわれる。トライアルレーサーより2倍以上もパワフルだ。「1172ccと少し大きいのが問題ですね。1100ccクラスへ出場するため、排気量を削ったドライバーも過去にいたようです」。とハリデーが説明する。

クロスレシオへ変更されているが、2速と3速のギア比は離れている。シフトアップまで、しっかり引っ張る。シートポジションはリアアクスルの直前で、挙動が手に取るようにわかる。

フロントアクスルは、驚くほどソリッド。調整式のコイルオーバーダンパーが組まれ、姿勢制御は上品。コーリン・チャップマン氏が見たら、強い関心を示すだろう。

チューニングレベルを考えると、エンジンは感心するほど扱いやすい。2000rpmでも粘り強く走り、3500rpmからカムが乗ってくる感じ。今日は6500rpmまでに制限しているが、さらに回ろうとする。

リンケージを介するシフトレバーは硬め。正確に腕を動かせば、狙い通りに操れる。シフトダウン時には、ダブルクラッチが欠かせない。

フォード由来のブレーキは、爽快なほど強力。ピレリ・チンチュラート・タイヤを鳴かせる勢いだ。ドラムの状態は完璧ではないらしく、サーキット・イベント前に交換する必要があるだろう。

美しく磨かれたアルミ製ボディは、1950年代のレーシングカーそのもの。ハリデーは、リアタイヤにスパッツを被せない姿が好きだという。

対極的な分野で確かな強さを発揮

シャシー番号は60番。1955年にナンバーを取得し、1957年から1958年まで、作家でレーシングドライバーのジョン・ウィットモア氏が所有していた。彼はシルバーストーンやブランズハッチなどでのイベントへ参戦し、最高2位の結果を残している。

1958年に手放され、1969年からはスコットランドに放置されていた。1992年に発見され、FJ.フェアマン氏によってフレームとボディが修復。2000年に仕上がった。

オーナーがスチュワート・カウチ氏へ代わり、エンジンはポール・フォックス氏によってリビルド。2001年に、ヒストリック・スポーツ・カー・クラブ主催のイベントへ出場している。

2002年にベルギーへ移り、2003年から2020年までヒルクライム・レースへ参戦。スウェーデンを経て、2021年のシルバーストーン・オークションへ出品され、ハリデーが購入するに至った。

「ヒルクライムやサーキットでのレースへ出られる、シックスをずっと探していたんです。シェブロンのF3マシンを売却したばかりで、丁度いいタイミングでの落札でした」

聡明なチャップマンのアイデアによるシックスは、モータースポーツの対極的な分野で、確かな強さを発揮した。北ロンドンのワークショップで誕生した小さなスポーツカーの、多能ぶりを証明する事実といえるだろう。

彼が発案した軽量なコンセプトは、ロータス・セブンへ受け継がれた。さらにケータハムとして、現在も多くのドライバーを魅了し続けている。その偉大さを、この2台が改めて教えてくれた。

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