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中身はやっぱりネコ科の大型肉食獣──新型ジャガーI-PACE試乗記

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中身はやっぱりネコ科の大型肉食獣──新型ジャガーI-PACE試乗記

進化したジャガーのピュアEV(電気自動車)「I-PACE」、期待を裏切らない1台だった。

ジャガーの信念を貫く

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2018年にジャガー初のピュアEVとして登場したI-PACEは、2023年秋に初めてのマイナーチェンジを受けている。その進化版I-PACEの試乗会が、富士スピードウェイのショートサーキットでおこなわれた。

なぜ、サーキットで? おそらく、ジャガーのBEVはただのBEVではなく、サーキットの過酷なバトルで性能を磨いているBEVだということをアピールするためだろう。

フォーミュラEの2024年シーズン、第4戦を終えた時点でジャガーTSCレーシングはチーム、ドライバーともに首位を快走中。この世界最高峰のBEVレースで得たノウハウや技術が、市販モデルであるI-PACEにも注ぎ込まれているのだ。

思えばジャガーは、1950年代のルマン24時間レースで3度優勝したことで名声を高めたブランド。モータースポーツで技術力を磨くという伝統は、BEVの時代にも引き継がれているのだ。

余談だが、ジャガーTSCレーシングのエースドライバーであるニック・キャシディは、SUPER GTやスーパーフォーミュラといった日本のレースでもチャンピオンに輝いており、大の親日家として知られる。3月末に東京・有明の市街地コースで開催されるフォーミュラE第5戦「TOKYO E-Prix」は、陽気なナイスガイ、ニックに注目!

デビューから6年を経たというのに、ショートサーキットのパドックで見たジャガーI-PACEのデザインは全然古くなっていない。それはおそらく、カッコをつけるのではなく、BEVとしての本質的な造形を追求しているからだろう。

エンジンを積まないんだからボンネットは短くていい。バッテリーを床下に敷き詰めるから少し車高が高くなって、それをSUV的なフォルムで包括する。といった具合に、無駄に飾るのではなく、すべての形に理由があるデザインだから、古くならない

システムを起動して、コースイン。ショートサーキットといっても、日本人で初めてルマン24時間レースを制した伝説のドライバー、関谷正徳が監修したコースレイアウトだけに、テクニカルで手ごわい。

約230mのメインストレートでは軽く100km/hを超え、そこからフルブレーキング。前につんのめるのではなく、水平な姿勢を保ったまま地面に吸い付くように速度を落としていくフィーリングに感銘を受ける。車体の前部に重たいエンジンを配置する内燃機関車では、なかなか味わえない感覚だ。

続くS字コーナーでは、左へ、右へと軽やかに舞う。ここでも重たいバッテリーが車体中央部に集まっていることに由来する、鼻先の軽さを体感する。

S字を抜けた先のタイトな左コーナー、その立ち上がりでアクセルペダルを踏み込むと、入力した瞬間にモーターがバチッと反応する。曖昧さのかけらもない、デジタルな加速だ。

そういえば以前、某メーカーの広報車両のBEVを大黒パーキングエリアで充電していた時に、ポルシェ「タイカン」でやって来た好青年が話しかけてくれたことがわる。いわく、「一度BEVに行ったら、エンジンには戻れない」とのことで、I-PACEのステアリングホイールを握りながら、彼の気持ちがよ~くわかった。

もうひとつよ~くわかったのが、SUVをつくろうが、BEVの時代になろうが、やっぱりジャガーはスポーツカーのブランドという点だ。豪快に加速するだけでなく繊細なアクセルワークに応えるパワートレイン、コーナーで踏ん張る強靭な足腰、圧巻のブレーキ性能──。街ではクールに振る舞うI-PACEであるけれど、その中身はネコ科の大型肉食獣なのだ。

試乗を終えてから、ワンメイクレース「ジャガーI-PACE eTROPHY」用車両を、プロフェッショナルドライバーの助手席で体験した。身体がシートに押し付けられるような加速G、血流が偏るのを感じるほどの横G、そして路面に噛みつくかのような減速Gを体感しながら、レースの経験を市販車の開発に活かすというのは、ただの宣伝文句ではなく、ジャガーの信念なのだと理解した。

文・サトータケシ 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)

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