70psアップを実現した稀有なKKKターボ仕様
現行スポーツモデルに匹敵する動力性能を獲得
世にも珍しいAMG C36(W202)のボルトオンターボ仕様! ポルシェKKKタービン搭載で350psを発揮!
AMGとメルセデスベンツがタッグを組んで開発した初めてのモデル、日本へは1994年から導入されたW202型『C36』。スポーツセダンの規範と絶賛された作品だ。
そんな名車を、フルコン制御のターボチューンで武装してしまったのが大阪のチューニングショップ「トライアル」だ。
国産チューニングカーさながらのニスモ風ダクトが追加されたフロントバンパーと、その奥に装備されたインタークーラーがチューンドを物語るAMG C36。
エンジン本体はヘッドも腰下もノーマル(ガスケットは抜け対策でメタル製をワンオフ)で、ワンオフEXマニを介してポルシェ930ターボ純正のKKK製3LDZが装着される。もともと排気量3.3Lのフラット6エンジンに組みあわされるタービンだから、C36の3.6L直6ではピークパワーだけでなく、低中速トルクの向上も図れるということでチョイスされたものだ。
また、タービンの過給効果を高めるため、パイピングまで含めたワンオフの前置きインタークーラーをセット。モーテックM48&イグニッションエキスパンダーによるDジェトロのフルコン制御で、最大ブースト圧0.6キロ時にノーマル比70psアップとなる350psを発揮する。
かつてAMGはエンジン本体に手を加えるNAチューンを基本としていたが、このところターボやスーパーチャージャーなど過給機チューンを推し進めてきている。モアパワーを求めたC36オーナーがターボ化に踏みきったことは、図らずも今時のAMG流エンジンチューンに合致していたりする。
エキゾースト環境もターボチューンに合わせて最適化されている。マフラーはノーマル触媒後のセンターパイプから作り直され、テールエンドはノーマルのデュアルスクエアから一般的なシングル出しに変更。排気音は車格にあわせて低く抑えられ、十分な快適性を確保。適度にスポーティなサウンドで、街乗りで耳ざわりに感じることはない。
室内に入ると、ステアリングやパネル類にウッドが使われた落ちついた雰囲気のインテリアが包み込む。ハイパフォーマンスカーでありながら、C36はラグジュアリーセダンとしての側面も持っているのだ。ダッシュボード中央部に装着されるのはオートゲージの油温、ブースト、排気温計だ。
さっそく試乗。15年落ちで走行距離も10数万kmに達してるのに、今時のメルセデスベンツやAMGではずいぶん希薄になった硬い金属質なドア開閉音は健在だし、走ってもボディのヤレを感じることはない。さすが当時、ホワイトボディ状態でスポット溶接ましや各部補強が施されただけのことはある。かつて、開発費を販売予定台数で割って車両価格を決めていたと言われる、コストは二の次と考えていたメルセデスベンツのクルマ作り。その最後の世代がW202…という話は、新車時から20数年が経った今だからこそ理解できる。
足まわりはストックのままだ。とはいえ、C36 AMGはノーマルでビルシュタイン製AMG専用ダンパー&スプリングが装着され、アーム類の取り付け位置なども変更されている。ハンドリングと乗り心地を高いレベルでまとめ上げたワークス系メーカーならではと言えるセッティングで、ボルトオンターボ化にあたってもストリートを走るぶんには不満はない。また、ブレーキもノーマルでフロントにSクラス12気筒モデル用4ポットキャリパー、リヤにE400用2ポットキャリパーがセットされるなど容量アップが図られている。
エンジンは、過給が立ち上がる3000rpmあたりからノーマルを大きく上まわる力強さを披露。エンジン本体に手を加えていないボルトオンターボ仕様で設定ブースト圧も低めに抑えられてるから、パワー特性はマイルドで、扱いにくさを感じることは皆無。いや、むしろノーマルより乗りやすくなってるに違いない。
V6エンジンが幅を効かせている今、世界的に見ても直6エンジンは稀少で、高回転域までよどみのない回転フィールや調律の取れたサウンドなどが独自の魅力。それがAMG製となれば、なおさらだ。
パフォーマンス的にはノーマルでも十分なエンジンをターボで武装。フィーリングの変化を最小限に抑えながら速さが格段に向上したC36は、過去の名車として語られる存在ではなく、今でも通用する一線級の性能を持った1台として生まれ変わったのだ。
取材協力:トライアル TEL:072-369-3539
TEXT:Kentaro HIROSHIMA
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