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1990年代名車&迷車烈伝Vol.09 三菱「2代目RVR」新ジャンルの開拓者もキープコンセプトが仇に

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1990年代名車&迷車烈伝Vol.09 三菱「2代目RVR」新ジャンルの開拓者もキープコンセプトが仇に

運営元:旧車王
著者 :木谷 宗義

1990年代名車&迷車烈伝Vol.08 スズキ「2代目エスクード」まっとうゆえの葛藤とともに

「パジェロ」や「デリカスターワゴン」のヒットにより、RVブームの先陣を切ってきた1980年代の三菱。

RVが一般に浸透するとともに、高級化や乗用車化が求められるようになります。

そこで三菱は、RVテイストの外観を持つコンパクトなワゴンを誕生させました。

1991年に登場した「RVR」です。

3列シートワゴン「シャリオ」のボディを短縮し、パジェロのような2トーンボディカラーと小さなグリルガードで外観を仕上げたこのモデルは、価格が手頃なこともあり、たちまちヒットモデルとなります。

▲2代目RVRスポーツギア

しかし、今回の1990年代名車&迷車烈伝で取り上げるのは、この初代ではなく、1997年にフルモデルチェンジした2代目のほう。

この2代目、なんとも迷車性が高いのです。

■乗用車ライクなパジェロ風ワゴン1991年に登場した初代RVRは、カープラザ店のみの扱いだったにも関わらず(当時はギャラン店とカープラザ店の2系列があった)、他社ユーザーも誘引し、一躍ヒットモデルとなりました。

どこかパジェロを思わせるアクティブな外観と、4,280mmの全長に片側スライドドア、2列シート(しかも主力は4人乗り)というユニークなパッケージングは新しく、楽しく豊かなカーライフを想起させてくれたものです(バックスバニーが登場したCMも楽しさを感じさせてくれた)。

▲初代RVRスポーツギア

さらにRVテイストを強めた「RVRスポーツギア」に加え、「ギャランVR-4」や「ランサーエボリューション」とベースを同じくする4G63ターボエンジンのハイパワーモデル、さらにはオープンルーフ仕様の「RVRオープンギア」を追加するなど、初代RVRのモデルライフは“乗りに乗った”ものでありました。

■キープコンセプトで登場した2代目はしかし……件の2代目RVRは登場するのは、1997年。

大ヒットしたパジェロや「デリカ・スペースギア」が後期型になり、「RAV4」や「CR-V」がヒットしていたころのことです。

RVRは5ナンバーサイズのボディに片側スライドドアという基本パッケージングを変えず、キープコンセプトで作られました(シャリオはこのとき3ナンバーのシャリオグランディスに進化)。

▲2代目RVR(GDI RVR)

▲シャリオグランディス

標準車(新たにGDI RVRと名乗った)とRVテイストを強めたRVRスポーツギアの2本立てであることも、初代を踏襲。

オーバーフェンダーにより3ナンバーサイズとなるスポーツギアには、新たに2.4リッターGDIエンジンが搭載されました。

では、なぜ迷車となっていったのでしょうか?

この連載でたびたびお伝えしている「ヒット車の次の難しさ」がここにあります。

初代RVRは、シンプルなスタイリングがヒットの一因でした(シンプルだからこそスポーツギアも際立った)。

それが、先代よりスポーティに仕立てられた2代目は、凝った造形が裏目に出てやや中途半端な印象に……。

特にモノトーンカラーとした標準車Xは、ホイールベースやトレッドが狭く見え(実際には大きく変わっていないのに)、スポーツギアは衝突安全性の高まりから大型グリルガードを廃止したことで、「らしさ」が薄れてしまったのです。

シャリオグランディスと同形状のインストルメントパネルは、高級感と使い勝手をうまく両立させたデザインである一方、RVRに求められる(今でいう)ギア感に乏しい印象となってしまいました。

▲2代目RVRスポーツギアのインテリア

■RVも多種多様なカタチに変化RVブームも一段落し、多様化が進んでいたことも、2代目 RVRを迷車の道へと導いた一因です。

それまでパジェロや「ハイラックスサーフ」を筆頭とする本格的なクロスカントリー4WDがRVの代表格だった時代は終わり、RAV4をはじめとしたライトクロカンや「レガシィグランドワゴン」のような乗用車派生のクロスオーバー、ワンボックスワゴンのドレスアップ仕様など、多種多様なRVが誕生。

RVRも当初は多様化するRVニーズの一翼を担っていたわけですが、キープコンセプトで戦えるほど1990年代後半の「ニーズの多様化」は甘くありませんでした。

同じ三菱の中に「パジェロイオ」や「チャレンジャー」が登場したことも、ニーズの多様化が表れています。

▲チャレンジャー

同時に、RV一辺倒だったニーズの変化も起きていました。

RVとは真逆のローダウン/エアロパーツというスタイルも、徐々に浸透してきていたのです。

RVライクな乗用車というスタイルを浸透させたのはRVRでしたが、そのスタイルを守ったばかりに時代においていかれる状況となった、ともいえます。

■RVからエアロ仕様に大胆チェンジ変わりゆく時代を生き抜くために、2代目RVRはたびたび改良を行います。

1999年にはシャリオグランディスのようなラグジュアリーな仕立ての「スーパーエクシード」を加え、同年のマイナーチェンジでスポーツギアをエアロ仕様に一新。

このマイナーチェンジでは、グレード体系が見直された他、これまで片側のみだったスライドドアが両側に装着されました。

▲RVRスポーツギアエアロ

▲RVRスーパーエクシード

しかし、日産「キューブ」や「エルグランド」、トヨタ「ハリアー」、マツダ「デミオ」など、新しい価値観のクルマが続々と登場するなかで、RVRが再び注目を集めることは叶いませんでした。

以後は大きな改良を受けることなく、2001年に登場した「エアトレック」にバトンを渡すようにして、2002年に生産を終えることとなります。

なお、現在のRVRは2010年に登場した3代目。

約10年のブランクを経ての復活となったモデルです。

とはいえ、こちらもマイナーチェンジを繰り返し、10年以上も生産が続いています。

▲現行RVR

「ASX」の名で販売されていた欧州仕様は、2022年にフルモデルチェンジし、なんとルノー「キャプチャー」のOEMとなりました。

日本国内で販売される現行RVRは、早くも迷車の匂いがしてきますね……。

■RVR不遇の時代は今も?販売面では成功しなかった2代目RVR。

しかし、クルマそのものをよく見てると、実にユニークなキャラクターを持っていることがわかります。

ネオクラシックの入口に差し掛かっている今、乗っていたらオシャレかもしれません……と、中古車情報サイトを見てみると、なんと掲載はわずか3台でした。

2002年まで作られていながら早くも絶滅危惧種とは、迷車度の高い迷車といえそうです。

4G63ターボを搭載するスポーツギアなんて、なかなか良さそうな気がしますけどね。

[ライター・木谷 宗義 / 画像・三菱自動車]

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