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人気車から絶版へ! プリウスα なぜ衰退? 時代とともにHVの「価値」変化

掲載 更新 24
人気車から絶版へ! プリウスα なぜ衰退? 時代とともにHVの「価値」変化

 トヨタがプリウスαの生産終了を発表。2013年に年間10万4000台を売り上げ、本家プリウスに迫る人気を誇ったモデルは、なぜ衰退した?

 最近のトヨタは、車種の廃止に乗り出している。直近でもマークX、ルーミーの姉妹車になるタンク、商用車ではタウンエースの姉妹車となるライトエース、プロボックスの姉妹車になるサクシードなどを廃止した。

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 トヨタは2020年5月から、4系列の全販売店が全車種を販売する体制を全国的に実施しており、姉妹車を用意するメリットが消滅した。そこで売れ行きの乏しい車種を中心に、廃止が始まっている。

文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA

【画像ギャラリー】実はスポーツモデルもあった! プリウスαと歴代プリウス全派生車の歴史

■最盛期は年間10万台超! プリウスαは来年3月生産終了に

2021年3月をもって生産終了となるプリウスα。先代プリウスをベースとした使い勝手に優れるモデルとして人気を博したが、近年は販売が減少していた

 そして、プリウスαも廃止されることになった。トヨタの公式ウェブサイトには「2021年3月末をもって生産終了」と記載されている。

 プリウスαは、先代プリウスをベースに開発されたワゴン風のハイブリッド専用車だ。先代プリウスに比べると全長を170mm、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)を80mm拡大して、リアゲートの角度も立てた。

 このボディ形状により、後席の足元空間と荷室容量が拡大している。先代プリウスは後席の頭上空間が少し狭い5ドアハッチバックだったが、プリウスαは、4名乗車の快適なワゴンになっている。

 さらに、プリウスαでは、荷室に折り畳み式の補助席を装着する7人乗りも用意した。大人が多人数で乗車すると、3列目の乗員は膝の持ち上がった窮屈な着座姿勢を強いられる。多人数の移動は、片道15分程度が限界だが、最寄の駅まで送迎する時などは役に立つ。

プリウスα 7人乗り仕様の室内。3列目を取り払った5人乗り仕様もラインナップし、居住性の面ではプリウスシリーズ随一だった

 プリウスαは2011年に発売され、発売後1か月の受注台数が5万2000台に達した。2013年の時点でも、年間10万4000台/月平均約8700台を販売して、プリウス全体の約40%を占めていた。

 この後も堅調に売れたが、徐々に下がり始め、2015年に5ドアハッチバックのプリウスが現行型にフルモデルチェンジすると、さらに低迷していく。2019年の登録台数は、月平均で約1000台だから、2013年の11%まで下がった。

■なぜ人気車だったプリウスαの販売は激減?

写真はシエンタハイブリッド。プリウスα登場時にはなかったユーティリティ性の高いハイブリッド車は飛躍的に増えた

 プリウスαの売れ行きについて販売店に尋ねると、以下のように返答された。

「以前はプリウスでは荷室が狭く、プリウスαを購入されるお客様も多かったです。それが今は、カローラツーリング、シエンタ、ヴォクシー/ノア/エスクァイアなどにもハイブリッドがあり、プリウスαを選ぶお客様は減っています」

 プリウスαが登場した2011年頃は、車内の広いハイブリッドの車種数は少なかった。ミニバンのハイブリッドは、トヨタではアルファード&ヴェルファイアとエスティマ程度で、価格は400万円前後に達した。

 そのためにプリウスαは、各種のレジャーやビジネスにも幅広く使われた。5ドアハッチバックのプリウスに狭さを感じた時、車内を広げたプリウスαは、250万~300万円という価格を含めて魅力的な存在であった。

 ところが今は、前述の通りシエンタ、ヴォクシー系3姉妹車、カローラツーリング&フィールダー、商用車のプロボックスなど、空間効率の優れた大半の車種にハイブリッドが割安な価格で用意されている。プリウスαの需要はこれらの車種でも満たされるようになり、売れ行きも下がった。

■HV専売車としての「プリウス」の価値も変化

先代モデルの3代目プリウス。トヨタのハイブリッド=プリウスという図式のなか歴代でも屈指の販売台数を誇ったが、現在はその立ち位置に変化が生じてきている

 また、プリウスという車種の存在感も変化した。

 プリウスαのベースになった先代プリウスは絶大な人気を誇り、発売された翌年の2010年には月平均で約2万6000台を販売した。この台数には、2代目の継続生産型になるプリウスEXも少数含まれていたが、当時のプリウスは圧倒的な人気車であった。

 高人気の背景には、動力性能、燃費、安全装備などを大幅に向上させ、2代目インサイトに対抗すべく価格は安く抑えたことがある。さらに2代目を扱う販売系列は、トヨタ店とトヨペット店だったが、3代目の先代型ではトヨタカローラ店とネッツトヨタ店を加えて4系列になった。

 これらの要素に加えて、当時はトヨタの中でもハイブリッド搭載車が限られ(先代プリウスの発売時点ではアクアも登場していなかった)、先代プリウスは絶好調に売れた。その派生車種だから、プリウスαも注目された事情がある。

 しかし、今は前述の通り大半のトヨタ車にハイブリッドが用意され、もはや珍しい環境技術ではない。そうなると、どこから見てもハイブリッドだと分かる「ハイブリッド専用車」の価値(ありがたみ)も薄れる。

■次期型の登場は本当にない?

プリウスαは改良を経て2011年から売り続けられたロングランモデル。プリウス本体が2015年にモデルチェンジした後も新型への刷新とはならず、このまま次期型の登場はない?

 現行プリウスの国内登録台数は、コロナ禍の影響を受ける前の2019年において、プリウスαやプラグインハイブリッドのPHVまで含めて月平均が約1万500台であった。この販売実績は2010年の約40%に留まる。

 数多くのトヨタ車に、ハイブリッドを搭載するグレードを用意すれば、ハイブリッド専用車となるプリウスやプリウスαの売れ行きが下がるのは当然だ。

 以前から予想できたことなので、車種を減らす方針もあり、プリウスαのフルモデルチェンジは行われず生産を終える。

 当然の成り行きといえるが、車種の廃止は寂しい。

「プリウス」をハイブリッドの先進シリーズに位置付け、燃費効率を追求したスペシャルティなモデル、快適かつ上質なワゴン、運転の楽しいスポーツモデルなどをラインナップする方法もあるだろう。

 プリウスは、クラウンと並ぶ存在感の強いブランドで、ユーザー、トヨタ、さらに自動車業界全体に与えた影響も大きい。このまま埋もれさせるのは惜しいブランドだ。

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みんなのコメント

24件
  • 全ては飯塚のG様のせいでプリウスに悪いイメージがついた
  • モデル末期なのに月あたり1000台(2019年)近く売れてた事がすごい気がするが。さすがに設計が古いし他の車を売りたいのでメーカーとしてさっさと終わらせたいんだろうな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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