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アルファロメオ ジュリエッタは伝統のネーミングを復活させるだけの自信にあふれていた【10年ひと昔の新車】

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アルファロメオ ジュリエッタは伝統のネーミングを復活させるだけの自信にあふれていた【10年ひと昔の新車】

2010年3月のジュネーブ国際モーターショーでアルファロメオ147の実質的な後継車となる「ジュリエッタ」が発表された。そしてその年の春にはイタリアで販売が開始されている。Motor Magazine誌では早くからこのモデルに注目、もちろんイタリア・トリノで行われた国際試乗会にも参加している。ここではその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年8月号より)

単純に「カッコいい。これ欲しい」と思った
最近、そのスタイリングだけで「欲しい」と思わせるクルマがない。なぜなのか。クルマの総合力を語るとき、スタイリングの占める割合が減ってきたということか。スタイリング以外に語りたくなるクルマの技術的な魅力が増えてきたからなのか。そんな理屈をこね回しているのがバカバカしくなるほど、単純に「カッコいい。これ欲しい」と思ったのがジュリエッタ。こういう感覚を持つのは久々だ。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

今年3月のジュネーブ国際モーターショーでデビューして以来、とにかく気になっていた。早く写真ではなく、実物を見てみたいと念願していたのだが、それが今回、叶った。初対面はイタリア、トリノ郊外にあるフィアットグループのバロッコテストコース内だった。

このスタイリングの最大の魅力はリアまわりだと思う。8Cコンペティツィオーネからミトへと引き継がれたデザインテイストが、また新たなものへと進化している。

左右に各36個のLEDを使い、数字の「6」を寝かしたようにアレンジ、そのリアコンビライトが実に豊かな表情を見せる。さらに、実質的な先代モデルである147と同じ手法でリアのドアハンドルを目立たないようにすることなどで、リアまわり全体をすっきりさせ、スポーティに仕立てている。

このところ、アルファロメオのリアデザインのうまさには感心するばかりだ。ブレラあたりから、このジュリエッタに至るモデルたちのリアのボリューム感とラグジュアリームードの演出の仕方は素晴らしい。

フロントは弟分のミトによく似ている。しかし、ヘッドライトがミトよりも前後に長い楕円であり、またそもそもボンネットが長いので、伸びやかな印象を受ける。愛嬌がたっぷりのミトに比べて、兄貴らしく精悍だ。

1.4マルチエアターボをメインとして伝統の1.75も用意
さて、スタイルだけでも十二分に魅力的なのだが、実はこのクルマ、中身も凄い。

まずはプラットフォームだが、高張力鋼板を多用した新設計だ。これはモジュラー方式で作られているので、様々なホイールベースに対応できるという。今後はこのプラットフォームが、フィアットグループのコンパクトモデル全般を担うことになるはずだ。サスペンションも新しい。フロントはストラット、リアがマルチリンクで、これも随所にアルミを用いることなどで、軽量化を実現している。

そして、エンジンもオールニューとなった。ガソリンエンジンの主力となるのは、1.4Lマルチエアエンジンというタイプで、170psを発揮する4気筒の直噴ターボだ。このスペックからして、デビュー当初のフォルクスワーゲンTSIエンジンを思い浮かべる人も多いだろう。そう「1.4L+過給器=170ps」ということでは同一だ。ところで「マルチエア」とは何かというと、スロットルではなく電子制御式の油圧駆動の吸気バルブでエアの吸入量を制御するという技術だ。これにより、低燃費でハイパワーを実現したという。

さらにアルファロメオの伝統を引き継ぐ排気量記号の「1750」こと1.75Lの直噴ターボ(最高出力235ps)と、マルチエアなしの1.4Lターボ(最高出力120ps)を用意している。また当初、組み合わされるトランスミッションは6速MTのみ。そして、1.75Lエンジン以外には、「スタート&ストップ(アイドリングストップ)システム」が標準装備される。

その他、ダンピングを抑え、アジリティを優先したという電動パワーステアリングを採用。ステアリングのギアレシオは、ゴルフやアウディA3より20~30%クイックにしている。

また、エンジン、トランスミッション、ステアリングフィール、ブレーキフィール、フロントデファレンシャルなどを総合的に制御して3つのモード設定ができるアルファDNA(ダイミック/ノーマル/オールウエザー)は最新世代とされている。

全体的バランスに優れたスポーツCセグメント
まず、試乗したのは1.75Lエンジンを搭載する「1750TBi」だ。コクピットはスタイリング同様に8cコンペティツィオーネの流れを汲むもので、非常にスポーティな雰囲気。アルミ素材が随所に輝きを見せ、全体のデザインは横方向の広がりを感じさせる水平基調だ。その中に丸型のメーターやスイッチ類が並ぶ。スタイリングはエレガントさとスポーティムードがうまく融合した素晴らしいものだが、インパネまりはエレガントさよりも、スポーツムードがかなり勝っているという印象だ。

バロッコのテストコースからトリノへ向けて、まずはカントリーロードを走った。道幅は広くなく、緩やかなカーブが続くところだが、そこを60~70km/hくらいで流していると感じるのは「クルマの軽さ」だ。

最高出力が235ps、最大トルクが340Nmのエンジンで車両重量は1395kgだから軽く感じて当然なのだが、もう少し、どっしりしたところも欲しい。これはアルファDNAがノーマル状態のときの印象だが、ダイナミックにするとかなり変わる。ハンドルの手応えは明らかに重くなり、エンジンはアクセルペダルの踏み込みに対して敏感に反応するようになる。好みの問題ではあるが、これなら基本をダイナミックモードにして、時と場合に応じてノーマルモードにするという方がしっくりくる。

その後、高速道路に入ったが、静粛性は高く、高速走行時の安定性もかなり高い。この辺りは新型プラットフォームの恩恵だろう。さらにハンドルに不快な突き上げがほとんど伝わってこない点などにも好印象を受けた。

また、235psのエンジンは80~120km/hの範囲の機敏な中間加速もこなしてくれるので、混雑気味の高速道路も走りやすかった。

トリノ市内に入ると時折、石畳の路面が出現するが、こういうときにはアルファDNAをノーマルにするといい。ダイナミックでは不快な突き上げもノーマルならば許せる範囲に収まる。

翌日、1.4TBマルチエアに試乗した。前述のように最高出力は170psで、タイヤは175TBiが225/40R18だったのに対し、これは225/45R17サイズだ。

試乗場所は、まず高低差がかなりあるワインディングロードだったが、かなりよく走る。はじめてゴルフTSIに乗ったときも、ワインディングを走るのに夢中になってしまったが、そのときと同じような印象を受けた。スペックが同じであるという先入観が、そう感じさせる面もあるのかも知れないが、何回か走ってもその好印象は変わらなかった。もちろん、こうしたときはアルファDNAはダイナミックがいい。

同じコースを1750TBiでも走ってみたが、明らかにパワフルで速く走ることはできるが、クルマ全体のまとまりは1.4TBの方がしっくりくる。1750TBiには「もう少し、どっしりしたところも欲しい」と書いたが、1.4TBの方がその点では好みだ。Cセグメントのスポーツモデルとしては、こちらの方がバランスがいい。

1.4TBマルチエアにTCTが装着された後に日本導入へ
ジュリエッタは当面、6速MTのみの設定となるが、来年までにはデュアルクラッチトランスミッションのアルファTCT(ツインクラッチテクノロジー)が追加される。組み合わされるエンジンは当初、1.4Lマルチエアになるようだが、これにはかなり期待できる。

この1.4Lマルチエア+アルファTCTという組み合わせはすでにミトで実現しており、非常にいい出来映えだ。ジュリエッタにアルファTCTを採用した場合、1.4Lマルチエアの仕様は試乗したミトと同じ135psではなく、170ps仕様になる可能性もある。そうなればベストバランスになるだろう。

そして、パワースペックはわからないが、ジュリエッタの日本への導入は、1.4Lマルチエアに、アルファTCTが搭載されてからになるそうだ。これまでアルファロメオはMTモデルを先行して日本へ導入し、その後、2ペダルを用意するという展開が多かった。しかし、そうしたことでデビュー時に市場へ大きなインパクトを与えられなかったという反省があるのだろう。そこでジュリエッタはデビューと同時に一気呵成に出るというわけだ。

ジュリエッタにはそのスタイリングだけで、欲しいと思わせる魅力があるわけだから、デビューと同時に2ペダルを用意することで、販売に勢いがつくことは間違いないだろう。しかも、その2ペダルは実質的に先代モデルであるアルファ147の2ペダル、シングルクラッチの「セレスピード」のように、扱いにコツがいるようなタイプではない。トルコン式ATに近いイージードライブから、MTのようなスポーツドライブまで可能なものなのだから、期待はさらに高まる。

来年はジュリエッタがこのセグメントに旋風を巻き起こすことになる。156や147が日本へ導入されたときのように、アルファロメオがブームになることは間違いないだろう。このところドイツ車の独壇場だったこのセグメントだが、変化は確実に起こる。(文:Motor Magazine編集部 荒川雅之)

アルファロメオ ジュリエッタ 1.4TB マルチエア 主要諸元
●全長×全幅×全高:4351×1798×1465mm
●ホイールベース:2634mm 
●車両重量:1365kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1368cc
●最高出力:125kW(170ps)/5500rpm
●最大トルク:250Nm/2500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●最高速:218km/h
●0→100km/h加速:7.8秒
※EU準拠

アルファロメオ ジュリエッタ 1750TBi 主要諸元
●全長×全幅×全高:4351×1798×1465mm
●ホイールベース:2634mm 
●車両重量:1395kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1742cc
●最高出力:173kW(235ps)/5500rpm
●最大トルク:340Nm/1900rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●最高速:242km/h
●0→100km/h加速:6.8秒
※EU準拠

[ アルバム : アルファロメオ ジュリエッタ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

3件
  • そして、そんなにデザインの違わないベース車のフィアット・ブラーボ(第二期)のことはひた隠しに……。
  • I AM ジュリエッタ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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