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エレガントの意味をあらためて思い知るメルセデスAMG「SL43」の魅力

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エレガントの意味をあらためて思い知るメルセデスAMG「SL43」の魅力

SLとはドイツ語で軽量スポーツカーを意味する「Sport Leicht (シュポルト・ライヒト)」の頭文字に由来する車名。そんなSLに乗るということは、エレガンスを身に纏うことだと思ったのは1954年に初代が誕生したSL カブリオレを見てからだろうか。2代目SL以降もその感覚は大きく変わらなかったが、途中でエレガントさの要であると思っていたソフトトップが消えていた。しかし現行モデルの7代目、メルセデスAMG・SLはソフトトップを復活させてデビュー。新型たる最先端の技術はもとよりだが、新しさと古さを融合させた新しいエレガンスに触れるため、まずはエンジンをスタートさせてみた。

SLとして10年ぶりにすべてが刷新された7代目新型SLは設計開発も高性能スポーツ専業ブランドのメルセデスAMGが担当。伝統的なロングノーズ&ショートデッキのスタイルに、AMG専用の「パナメリカーナグリル」をしっかりと融合させている。

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実はクローズドにしているときこそ、オープンにとっては重要

「フランス語の名詞はすべて男性名詞と女性名詞に分かれ、車は女性名詞だから兄弟車ではなく、姉妹車と呼ぶのが正解だし、それ故、エレガントという表現も似合うもの」。そんな話をしながら故・徳大寺有恒さん(以下、徳さん)と試乗会場に向かうときのこと、我々を1台の真っ白なR129型4代目メルセデス・ベンツSL(以下、SL)が抜き去っていった。

「やっぱりオープンはソフトトップが似合うね」と徳さん。確かこの時、SLの弟分、いやここでは妹たるSLK(現在のSLCクラス)が、すでに「バリオルーフ」という折りたたみ式のハードトップをメルセデス車としては初めて採用。クーペカブリオレとも言われて、その作動時間の早さや耐候性の良さが話題となっていた。

そんな折であっても徳さんは、オープンのエレガンスはソフトトップだからこそ表現できるもの、とよく話していた。30秒以内でオープンからクーペへと早変わりするバリオルーフ(電動格納式ハードトップ)のメカニズムに対して評価を与えながらも、「オープン本来の魅力はそこだけにあらず」と言っていた。

確かにどんなオープンカーであっても、屋根が開き、季節ごとの陽光と風と匂いと音をダイレクトに感じることに置いては平等である。しかしながらオープンカーとしての魅力的な佇まいを言うのであれば、機能的すぎるのもまた正解ではないのかもしれない。そして徳さんは「屋根を開けているときなど、それほど快適なものではない。いやむしろ埃で汚れるし、太陽の光は存外熱いものだし、うるさいし……」と。冷静に考えれば1年のうちでオープンカーがオープンカーとして機能できる時間は、それほど長くはないもの。

「だからこそ、ルーフを閉じているときの佇まいが大切であり、なおかつエレガントでなければいけない」ということなのだ。以来、私も「オープンにはソフトトップこそふさわしい」と考えるようになった。

ところがSLは、2001年に登場する5代目モデルよりバリオルーフを採用し、メインマーケットであるアメリカはもちろんのこと、世界中で売れ、商業的に成功を収めるのである。そして当然であるかのように先代モデルの6代目SLも、バリオルーフを受け継いだ。もはやオープンのエレガンスを表現するならソフトトップは必須条件、というのは前時代的な感覚なのだろうか? 

わずかに生じた不安という亀裂を埋めてくれたのは、2021年に登場した現行の7代目SLだった。メルセデス・ベンツにとってはハイパフォーマンスカーを扱うサブブランド、メルセデスAMGにはなっていたがロングノーズ&ショートデッキという称だから受け継がれた基本フォルムはそのままに、ソフトトップを復活させてデビューしてきたのだ。

ソフトトップが与えてくれる安堵感こそがエレガントに通じる

これからステアリングを握ろうとしているのは、リアエンドにAMGとSL43のエンブレムを戴くモデル。これまでの決まり事からすれば、「43」とあるならば4.3リットルV8エンジン搭載か、などと少々古い基準を持ち出してきて思わず興奮したくなるところ。だが小排気量化やハイブリッド化が進んでいる現在はそうした基準があてはまらず、エンジン出力に応じたグレードを表す数字と考えていい。その流儀に従えば43とあれば2Lの直列4気筒ターボエンジンとアシストモーターを組み合わせた48VのマイルドHVシステムを構成している。そのパフォーマンスは最高出力381PS、最大トルク480N・mであり、2Lエンジンとすれば相当な数字をたたき出している。

当然ながらこのターボエンジンはF1テクノロジーなどモータースポーツからのフィードバックによって開発されている。少々ややこしくなるが、たとえば排気用タービンと吸気用コンプレッサーの間にモーターを搭載することでターボラグ(遅れ)を減らし、低回転から瞬時にパワーが立ち上がる強烈な加速を実現してくれる。その加速感に物足りなさなど感じることはなかったが、メルセデスAMGにとってSL43は入門用。

現在、日本にも導入されているSL 63 ・4MATIC+に搭載されている4.LのV型8気筒直噴エンジンの最高出力585PS、最大トルク800N・mと比べれば、確かに物足りなさは感じるだろう。だが一方で、SL43の出力があればオープンカーの魅力を存分に楽しむためには何ら不足を感じることがないハズだ。

だが今回の関心事はそこではなく、メルセデスのSLにいかにもオープンカー的なソフトトップが帰ってきたことである。速さをとことん突き詰め、丸みを帯びたこの先進的シルエットに、ソフトトップが加わることで、どこか優しく、エレガントで、大人の色香さえ感じさせる佇まいになっている。仮に今回もバリオルーフを採用し、硬質なルーフを与えたとしたら、スピード感は十分に強調されるだろうが、一方でここまでのエレガンスはスタイルにはなかった。そうした意味からすればソフトトップがほどよい“箸休め”となっていて、どこかホッできる。オープンカーは走りを突き詰めるためにストイックすぎると確実に無理が来る。速く、強くあろうとすれば、エレガントな味わいは希薄にならざるを得ない。

ルーフを開け放ち、そんなことを考えながらゆったりとシーサイドラインを流していた。するとその横を、一気にポルシェ911が抜き去っていった。

「お、やるな!」。いつもの悪い癖である。一気にアクセルを踏み込むと、驚くほど暴力的な加速とともに追撃。速度計はタコメーターのごとく上昇していくのだ。

「なにが入門用だ、凄いじゃないか……」。同時にそのエレガントさなど微塵もない行動に恥かしくなり、一気にエレガンスとはほど遠い気持ちになった。だが天国にいる徳さんはきっと「気にすることはないよ、“暴力”も女性名詞だから」と笑っているはずである。

Z字に折りたたまれる伝統的な構造のソフトトップ。高速でもばたつくこともなく遮音性も驚くほど高い。このぷっくりとした形状とソフトトップの質感が、SLにエレガントさを与えている。

リアに向かってなだらかに落ちていくボディラインはルーフを開け放ってもエレガントさを失うことがない。

AMGパフォーマンスステアリングと縦型の11.9インチのセンターディスプレイを備えたインパネ。見るからにフィット感のあるキャビンの風景。

座面の安定感とシートバックのしっかりとしたホールド感によって、ロングドライブにも躊躇なく使いたくなる座り心地。

リアシートは緊急用で有+2的な使用で考えるべきだが、それでも手荷物を置くなど実用面での使い勝手は2シーターより格段に高く、重宝する。

20インチの「AMG 5ツインスポーク アルミホイール」が標準装備される。

液晶メーターパネルはシンプルにして視認性がいい。丸型メーターだけでなく数字だけで情報を表示する画面など、いくつかのパターンを選択できる。

画面はソフトトップの開閉画面だが、この他にも多くの操作をセンターディスプレイの画面上で行う。

(価格)
17,000,000円~(メルセデスAMG・SL43/税込み)
2024モデルは17,500,000円~
(スペック)
全長×全幅×全高=4,700×1,915×1,370mm
ホイールベース:2,700mm
車重:1,780kg
最小回転半径:6.1m
最低地上高:115mm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:FR
エンジン:直列4気筒ターボエンジン
排気量:1,991cc
最高出力:280kW(381PS)/6,750rpm
最大トルク:480N・m(48.9kgf・m)/3,250~5,000rpm
モーター:
最高出力:8kW(10PS)
最大トルク:58N・m(5.9kgf・m)
WLTCモード燃費:10.8km/L
問い合わせ先: メルセデスコール電話: 0120-600-066

TEXT:佐藤篤司
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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みんなのコメント

2件
  • hot********
    4発で2リッター
    暴力的な加速? 気は確かか? 笑
    911はそれを知っているから鼻であしらっているのに 笑

  • くろすけ
    スタイリングで言えば、R129が頂点。
    その後は没落。「エレガント」なんて、見る影もない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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