2022年7月のワールドプレミアで4種類の「群」をお披露目したり、「専門店」をオープンしたり、第16代めの「クラウンたち」はいろんな意味で話題の存在。バラエティに富んだキャラクター設定を通して、「挑戦と革新」という伝統の間口を一気に広げた観があります。もっとも今回、公道で試乗する機会を得たクラウンセダンは、正統的先祖返りと言えるモデル。「上質なFRセダン」に対する憧れ心を、改めてくすぐってくれました。
直線基調で際立つエッジ感。尖がり具合が違う
4種類の第16世代「クラウン群」の中でも、セダンは異質な存在です。何しろ背が低い。はい、ご覧のとおり。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
加えて、1年以上先行した「クロスオーバー」、ちょっと先行した「スポーツ」、ちょっと遅れて登場する「エステート」という兄弟たちとは、まとわせた色気のニュアンスも異なっています。
SUV系列がそれぞれに柔らかな面使いとマッスルなフォルムで妖艶ぶりをアピールしているのに対して、セダンはエッジの効いた直線感がきわめて潔よし。しかも3000mmというシリーズ随一のロングホイールベース、天地方向に薄いシルエットなど、2ボックスのSUVとはひと味違う伸びやかさが魅力です。
タイヤ&ホイールは他が21インチですが、セダンは19~20インチと少しばかり控えめです。それでも、フェンダーぎりぎりまでタイヤの隙間を攻めることで低さを強調、力強い踏ん張り感ではけっして負けていません。
昭和世代の筆者は、こういう「カッコよさ」にもまた懐かしさを覚えてしまったのでした。
プレミアムFRセダンの正統を継ぐプラットフォーム
クラウン群第一弾「クロスオーバー」は、SUV×セダンの融合を具現化することで、16世代目にして取り組んだ「多様性」という課題にたいする最適解を印象付けました。開発者によれば続く3タイプのクラウン群は、そこから「何かを伸ばし、何かを控える」ことで「クラウンに求められるもの」の幅を広げていったのだそうです。
そこで、新型クラウンセダンの開発陣が狙ったのが、「セダン再発見」「これからの時代のクラウンらしさ」「ニューフォーマル」という独自のキーワード。このスタイリングの完成度だけを見ても、クロスオーバーからSUV的要素を取り除いただけの、妥協の産物ではないことがわかってきました。
新型クラウンセダンはシリーズの中にあって、メカニズムもちょっと「個性的」です。何しろ「群」の中で唯一、エンジンが縦置きなんです。
プラットフォームは他のクラウン群がTNGAのGA-Kプラットフォームをベースとしている結果、4WDの設定はなく後輪駆動のみとなります。このあたりもはっきり高級FR車向け、ということが理解してもらえると思います。
そのため、搭載されるエンジン2種もセダン専用となります。ひとつはMIRAI譲りの燃料電池×電気モーターのコンビ、もうひとつはトヨタブランドとしては初となる2.5L 自然吸気エンジンと電気モーター、4速ATを組み合わせた「マルチステージハイブリッドシステム」が搭載されました。つまりはそもそも高級なレクサス向け、ということです。
こうした「差別化」によって、新型クラウン(セダン)は今、トヨタが持つ技術の粋を駆使して開発者が全力疾走で鍛え上げたら「セダンはここまで凄い存在になる」という事実を、証明することになりました。
パッセンジャーをもてなす快適な乗り心地はショーファーにも◎
新型クラウンセダンは、ショーファーカーニーズをテーマに開発が進められたそうです。快適な乗り心地と上質な走り、そしてゆとりの空間が、後席のパッセンジャーにくつろぎの移動時間をもたらすことを目指しています。
ロングホイールベースのおかげで、新型クラウンセダンは前席と後席のカップルディスタンスを約1000mm確保、先代のマジェスタと同等の足元空間を確保しています。ベースとなるMIRAIよりも広く、ショーファーニーズへのこだわりが垣間見えるところしょう。
ものは試しとまずは後席に乗り込んでみたところ、確かに足元にはゆとりがある印象。ただ低い車高はSUVスタイルに比べるとやはり、乗り降りの時に少々腰をかがめるようにしなければなりません。とくにサンルーフを装備した仕様では、開放感という意味でももう少しヘッドクリアランスが欲しい、と感じました。
もっともそう思えてしまう理由もまたこのところ、SUVやミニバンに慣れ親しんできたから、なのかもしれません。実際、新型クラウンのリアシートに座っていると、「乗せて(あるいは載せて)もらっている」というショーファーさんにおまかせ的感覚よりも、ともにドライブを楽しんでいるというある種、クルマとの一体感をしっかり味わうことができるような気がします。
ほどよく締まった印象の乗り心地もまた、一体感を覚えるひとつの理由かもしれません。開発陣が「フラットボディコントロール」と呼ぶリアサスまわりの「いなし」を加えたセッティングは、柔らかすぎず、けれど不快な振動や揺れをうまく抑えてくれます。下手にふわふわした腰の弱い乗り味よりも確実に「後席クルマ酔い」を防いでくれます。
もしも「少し硬いかな・・・」とパッセンジャーがぼやいた時には、ドライブモードセレクトで「リアコンフォートモード」を選んでみましょう。乗り心地重視に寄せたAVS制御によって、たとえるなら緩衝材をシート下や足元に1枚、追加したようなより優しい乗り味が生まれます。
こうした新型クラウンセダンの「リアシートコンシャス」な躾の良さは、そのまま前席のナビゲーターはもちろんドライバーにも、しっかり居心地の良さとなって伝わってくるものでした。
ほどよく重厚な「直6感」が感じられる・・・ような気がする
今回の試乗会では、FCEVのZ(830万円)とマルチステージハイブリッドのZ(730万円)を乗り比べることができました。どちらも標準装着のタイヤは235/55R19ですが、後者は「ブラックパッケージ」を装備しているため245/45ZR20を履いていました。
横浜のみなとみらいを中心にした試乗時間は、それぞれ実質30分ほど。短い時間ですが、一般道と首都高速道路で乗り心地とドライバビリティ、そして自慢のエンターテインメントの仕上がりを試してみることにしました。
ここからはあくまでドライバー目線で語ります。
MIRAIと同じく水素を使う燃料電池で発電、電気モーターで駆動するFCEVは、静かでスムーズ。このあたりはEVとして普遍的な魅力を備えています。1回あたり約3分の水素充填で約820kmのロングディスタンスも実現しました。
加えて新型クラウンセダンは、きわめて紳士的なパワーフィールが印象的。わざとラフにアクセルペダルを踏み込んでも、トルクの出方はあくまで滑らかかつフラットなものです。それはけっして、もどかしさを覚えるようなおとなしいフィーリングではありません。
最高出力は182ps、最大トルクは300Nmと実はしっかり力に余裕があるのに、無駄なく効率的に、ほどよい力強さを生み出している感じです。実際、スピードの乗りも非常にリニアでコントロールしやすいものでした。
それはさながら、長きに渡ってクラウン系列に展開されていた直列6気筒エンジンを彷彿とさせるフィーリング。それも、ターボが装着される前の大排気量NA版。その「ゆとり」を現代風に洗練させたら、もしかするとこんな感じ?
そういえば・・・パワーフィールだけでなく、ハンドリングにもまた、ほどよく重厚な「直6感」が感じられるような気が。速度域高めのカーブでは、わずかにフロントの重さを感じさせながらも、基本的にはニュートラルなコーナリング姿勢を保ちます。
ちょっとだけ積極的にアクセルやハンドルの操作を加えると、挙動変化がやはりとてもスムーズかつ自然で気持ちいい!特性的にはサーキットをがんがん攻めるような走りには向いていないかもしれませんが、緊張感を感じさせることなく意のままに操ることができる「なんとも贅沢な味わい」なのでした。
ダイレクト感が高められたマルチステージハイブリッド
一方、おそらくは販売の主力となる2.5Lマルチステージハイブリッドシステムを搭載したモデルは、やはりまた異なる味わいです。エンジンの出力特性改良やCVTではなく4段変速機構を備えることで、発進時から内燃機関らしい脈動感を感じることができました。
さすがに「直6」なシルキータッチでこそないものの、4発らしいパンチ感と伝達効率が高められた電気モーターによるアシストが、ほどよくスムーズかつスポーティなパフォーマンスを発揮しています。フィーリング的にHEVは、よりドライバーズセダン寄りのキャラクターが与えられているようです。
エンジンスペックは185ps/225Nm、電気モーターは182ps/300Nmを発揮しています。とはいえフィーリングはFCEVと同様に紳士的で、安心感に満ちています。本質的に新型クラウンセダンは、四輪駆動の特性を最大限生かしているクラウンクロスオーバーほどには、アグレッシブな走りを狙っていないのかもしれません。
ドライブモードを「スポーツ」に変えればまた印象が変わってくるのかと思いますが、こうしたしっとりとした乗り味は、セダンらしい上質感を感じさせてくれる重要なポイントと言えるでしょう。
もうひとつ、タンク容量が82Lもあるのは、もともと水素タンクを3本も積めるプラットフォームを使っているおかげかも。WLTCモード燃費は18.0km/Lなので、単純計算では航続距離が1400kmを越えちゃってますね。もちろんレギュラーなので、お財布にも優しいし。
あくまでさりげないPDAのサポート。違和感はほぼなし
実はこうしたキャラクター設定を完成させているのが、さまざまなシーンで安全なドライビングをアシストしてくれる、ADASの数々です。
とくに注目して欲しいのが、クラウンセダン全モデルに標準採用されている「プロアクティブドライビングアシスト:PDA」。これは、一般道や高速道路で運転状況と走行状況に応じたステアリング、ブレーキ操作を支援するシステムですが、デフォルト状態から機能しているところがACCとは異なっています。
中でも今回の試乗で恩恵をはっきり体感できたのは、前走車との距離に合わせて減速力を調整してくれる機能でした。けっして唐突にブレーキがかかるようなものでは、もちろんありません。あくまでアシスト。ドライバーがアクセルOFFにした段階から、ちょうど良い感覚でほどよい間隔を保つように、確実に減速を支援してくれます。
先述したジェントルなハンドリングも、PDAによる車線内走行時常時操舵支援が、縁の下の力持ち的な役割を果たしてくれているようです。一般道の交差点でも減速などのアシストは入っているようですが、こちらはまったく体感することができませんでした。けっして出しゃばることのない品の良いサポートぶりには、はっきり言って脱帽です。
「こういうクラウン」を待っていた人、想定以上?
試乗を通じて感じられたのは、かつて一世を風靡していた「上質なFRセダン」という価値観を、今の時代に復活させようという技術陣の本気ぶりです。
新型クラウンセダンは、スタイルも居住性も走りの味付けにいたるまで、どこか懐かしくけれどしっかり洗練された「セダンらしさ」を実感させてくれたのでした。
ちなみにKINTOが、本体より一足先に、クラウンの取り扱い状況についてデータを公表しています。それによれば、ほぼ同時に発売されたクラウンスポーツ(SPORT Z)の納期メドは3~4カ月程度、とのこと。一方のクラウンセダン(HEV Z)は、12カ月以上の待ちとなっているそうです(12月4日現在)。「こういうクラウン」を待っていた層は、けっして少数派ではないみたいですね。
ここまで緻密で成熟したセッティングが施せるのなら、もうひとつわがままを。次はぜひハイパフォーマンスに振った仕様の追加を期待したいところです。たとえばGRバッヂがついた凄いやつ、楽しみにしていてもいいかな?(写真:佐藤正巳)
トヨタ クラウンセダン Z FCEV 主要諸元
●全長×全幅×全高:5030×1890×1475mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2000kg
●パワーユニット:永久磁石式同期型モーター
●定格出力:48.0kW
●最高出力:134kW(182ps)/6940rpm
●最大トルク:300Nm(30.6kgm)/0−3267rpm
●駆動方式:RWD
●燃料・タンク容量:水素・141(64+52+25)L
●WLTCモード燃費:148km/kg
●タイヤサイズ:235/55R19
●車両価格(税込):830万円
トヨタ クラウンセダン Z HEV 主要諸元(オプションのブラックパッケージを装備)
●全長×全幅×全高:5030×1890×1475mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2020kg
●エンジン:直4 DOHC+モーター
●総排気量:2487cc
●最高出力:136kW(185ps)/6000rpm
●最大トルク:225Nm(22.9kgm)/4200−5000rpm
●モーター最高出力:132kW(180ps)
●モーター最大トルク:300Nm(30.6kgm)
●トランスミッション:マルチステージハイブリッドトランスミッション
●駆動方式:RWD
●燃料・タンク容量:レギュラー・82L
●WLTCモード燃費:18.0km/L
●タイヤサイズ:245/45ZR20(ブラックパッケージ装備)
●車両価格(税込/オプションを除く):730万円
[ アルバム : 新型クラウンセダン 試乗記 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
俺達が信じるものはネットのコメントだけだ。
ガーシー、統一教会、ロシアプーチンをまず救いなさい。
トヨタ、ウクライナに聖なる制裁を。
俺達貧困層はスイスポがあればクラウンなんかいらない。