現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 不評でもオープンは気持ちイイ トライアンフTR7 ジェンセン・ヒーレー 1970年代の苦悩 前編

ここから本文です

不評でもオープンは気持ちイイ トライアンフTR7 ジェンセン・ヒーレー 1970年代の苦悩 前編

掲載
不評でもオープンは気持ちイイ トライアンフTR7 ジェンセン・ヒーレー 1970年代の苦悩 前編

伝統のブランドへ最後のひと花

トライアンフTR7とジェンセン・ヒーレーは、ブリティッシュ・スポーツの1つの節目を飾った。伝統のブランドへ最後のひと花を咲かせた存在といえたが、英国で量産されるスチール製ボディのスポーツカーへ、一旦終止符を打つモデルにもなった。

【画像】不評でも気持ちイイ トライアンフTR7 ジェンセン・ヒーレー TR4にTR8、3000も 全116枚

どちらも、1970年代の混迷する自動車産業を象徴するように、多くの批判にさらされた。クラシックカーになった現在でも、好意的な評価を与える人は多くないだろう。

少々ぎこちないスタイリングだけではない。製造品質や信頼性は低く、ボディは簡単に錆びた。とはいえ、献身的なブランド・ファンがいなかったわけではない。数10年という時間を経て、見事な状態で生き残る例があるのだから。

2台が生まれたキッカケを遡ると、英国が抱えていた同じ課題へ辿り着く。1968年に誕生したブリティッシュ・レイランド・モーター・コーポレーション(BLMC)の前身となる、1952年のブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)だ。

BMCの弱点は少なくなかったが、最大の1つといえたのが、開発車両へコストを投じすぎる傾向があったこと。1車種のモデルチェンジのために、異なる設計で複数の試作車が作られることも多かった。そのうえ、量産へ結びつかない場合もあったほど。

ジェンセンとのコラボでモデルチェンジ

特にBMC傘下のブランドの1つ、オースチン・ヒーレーでは、そんな苦悩が珍しくなかった。例えば、ファイアボールXL5という高性能スポーツカーの試作へ100万ポンドも費やしながら、量産車としては実っていない。

オースチン・ヒーレー3000 MkIIIの後任としてMk IVが開発されるものの、ヒーレー・ブランド創業者、ドナルド・ヒーレー氏は仕上がりに納得せず、販売はされなかった。BMCの既存モデル、MGBへ余りにも近すぎた。

ドナルドの息子、ジェフ・ヒーレー氏によれば、Mk IV用の新エンジンは重くトラブルが少なくなかったようだ。それまでのユニットと比べて、トルクも細かったという。

それでも、3000を置き換えるスポーツカーをオースチン・ヒーレーは必要としていた。北米市場への輸入代理店を営んでいた、ジェル・クヴェール氏も同様だった。彼は、MGCを気に入っていなかった。

そこで導かれた解決策が、ジェンセン・モータースとのコラボレーション。3000のボディを生産し、サンビーム・タイガーの製造を請け負っていた、その小さな自動車メーカーも新しい生産契約を必要としていた。

クヴェールは、ジェンセン・インターセプターを北米で販売して欲しいと要求されてもいた。当時のジェンセン・モータースは経営が厳しく、労働者との問題を抱えていた。彼は同社の株式の80%を取得し、ドナルドが会長に就くという、深い関係性にあった。

ツインカムのロータス907ユニットを搭載

計画が実行へ移されると、従来のモデルと同様に、他メーカーの多様なコンポーネントを検討。英国オペル、ヴォグゾールのサスペンションとドライブトレインを利用することで決着した。

コードネームX500と呼ばれたモノコック構造は、ジェフと技術者のバリー・ビルビー氏が設計。ヒューゴ・プール氏が担当したスタイリングには、クヴェールも多くの意見を寄せている。インテリアは、ウィリアム・タウンズ氏が担当した。

エンジンは数種類が試されたが、北米の排出ガス規制へ合致させながら、目標とした132ps以上の最高出力を得ることに難航。軽さや大きさ、コストなども問題になった。オイルショックが重なり、良好な燃費を得るために4気筒は必至だった。

そんな折、コーリン・チャップマン氏が開発した2.0L 16バルブ・ツインカムのオールアルミ4気筒、ロータス907ユニットという候補が出現。チャップマンは開発コストの相殺に意欲的で、早期の完成を望んでいたクヴェールも前向きだった。

果たして、1972年に発売されたジェンセン・ヒーレーは、907ユニットを搭載した初の量産車に。しかし、これは完璧ではなく不具合が多かった。ロータスは品質を保証せず、ドナルドがジェンセン・モータースの経営から退く原因の1つを作ってしまう。

モデルの生産自体は、ジェンセン・モータースが破綻する1976年まで続けられた。それでも、オースチン・ヒーレーの再起には至らなかった。

斬新だったウェッジシェイプのスタイリング

対するトライアンフも、1968年に発売したTR6の後継モデルを必要としていた。オースチン・ヒーレーと同じ理由で、TR4A以来となる、PE104S型4気筒エンジンの変更が求められていた。MGBの直接的な競合になるという、副作用もはらんでいたのだが。

トライアンフは、ビュレットという名の新モデルの開発をスタート。並行して、同じBMC傘下にあったMGは、MGBの次期モデルとしてミドシップ・レイアウトのスポーツカー開発へ取り組んでいた。

初期の段階でビュレットの保守的なスタイリングを担当したのは、スペン・キング氏。横転時の安全性に対する規制が強化される北米市場を意識し、Tバールーフ・ボディが検討されていた。

エンジンルームは広く、トライアンフSD2という次期型サルーンの試作車とフロント・サスペンションを共有し、完成度は高かった。メカニズムはシンプルで、ポルシェ914にも似たスタイリングはハンサムだった。

反してMG側のミドシップ・モデルは、ハリス・マン氏のスタイリングは斬新だったものの、残念な方向へ進んでいた。そこでトライアンフのビュレットにマンのスタイリングが与えられるという、難解な決定がくだされる。

フロントエンジン・リアドライブの従来的なレイアウトに、エキゾチックなウェッジシェイプのボディで量産仕様は完成。BMCはトライアンフとMGの両ブランドでの販売も視野に入れたが、実現はしていない。

当初は、タレットトップと呼ばれるクーペのみでリリース。1979年にコンバーチブルが追加されている。

この続きは後編にて。

こんな記事も読まれています

初代からコスパめっちゃよかったのよ!!  「最強のオールマイティカー」電撃見参!!! 三菱初代アウトランダーPHEVの魅力
初代からコスパめっちゃよかったのよ!! 「最強のオールマイティカー」電撃見参!!! 三菱初代アウトランダーPHEVの魅力
ベストカーWeb
迷彩カラーは4タイプ! 12台限定のランボルギーニ「ウラカン ステラート」が登場。「オールテレイン アド・ペルソナム」の気になるカラーは?
迷彩カラーは4タイプ! 12台限定のランボルギーニ「ウラカン ステラート」が登場。「オールテレイン アド・ペルソナム」の気になるカラーは?
Auto Messe Web
F1アカデミー、アメリカン・エキスプレスをオフィシャルパートナーに迎える
F1アカデミー、アメリカン・エキスプレスをオフィシャルパートナーに迎える
AUTOSPORT web
ミニ・カントリーマン 詳細データテスト ミニらしく活発 SUVらしからぬタイトな挙動 車体は大柄
ミニ・カントリーマン 詳細データテスト ミニらしく活発 SUVらしからぬタイトな挙動 車体は大柄
AUTOCAR JAPAN
[ヤリスクロス]より爆安!! [初代アウトランダー]みたいなクルマを今こそ!!  230万円台で3列シートって!!  しかも三菱渾身の4WD技術でバカ安だった
[ヤリスクロス]より爆安!! [初代アウトランダー]みたいなクルマを今こそ!!  230万円台で3列シートって!!  しかも三菱渾身の4WD技術でバカ安だった
ベストカーWeb
「レンジローバー スポーツSV」はBMW M製V8ツインターボを搭載! エンジン屋「X5M/X6M」「M5」の強心臓とのマッチングはいかに
「レンジローバー スポーツSV」はBMW M製V8ツインターボを搭載! エンジン屋「X5M/X6M」「M5」の強心臓とのマッチングはいかに
Auto Messe Web
9年目の大アプデで一層楽しい! マツダ・ロードスターへ英国試乗 新LSDとトラック・モード獲得
9年目の大アプデで一層楽しい! マツダ・ロードスターへ英国試乗 新LSDとトラック・モード獲得
AUTOCAR JAPAN
幻の「ケンメリGT-Rレーシング」を「スカイライン」で再現! メインステージは「もちろん富士スピードウェイです」
幻の「ケンメリGT-Rレーシング」を「スカイライン」で再現! メインステージは「もちろん富士スピードウェイです」
Auto Messe Web
バニャイヤ、王者同士の激戦制し今季2勝目! マルケスがドゥカティ陣営移籍後初の表彰台獲得|MotoGPスペインGP決勝
バニャイヤ、王者同士の激戦制し今季2勝目! マルケスがドゥカティ陣営移籍後初の表彰台獲得|MotoGPスペインGP決勝
motorsport.com 日本版
はたらくクルマ図鑑「ヤマグチのレッカー車たち」2
はたらくクルマ図鑑「ヤマグチのレッカー車たち」2
グーネット
【動画】マツダが開くレーシングドライバーへの道! 「MAZDA SPIRIT RACING」筑波サーキットのドライバー選考会に潜入した
【動画】マツダが開くレーシングドライバーへの道! 「MAZDA SPIRIT RACING」筑波サーキットのドライバー選考会に潜入した
WEB CARTOP
平川亮が驚いたF1マシンの速さとブレーキ。マクラーレンでのテストにはWECやSFの経験が活きる部分も
平川亮が驚いたF1マシンの速さとブレーキ。マクラーレンでのテストにはWECやSFの経験が活きる部分も
AUTOSPORT web
2024年版 「速い+快適」な高級スーパースポーツカー 10選 日常使いもできる高性能モデル
2024年版 「速い+快適」な高級スーパースポーツカー 10選 日常使いもできる高性能モデル
AUTOCAR JAPAN
美しすぎるホイール「アンテラ」が復活!「ミラノデザインウィーク2024」でロベルト・バッジョ氏がブランド・アンバサダーに就任
美しすぎるホイール「アンテラ」が復活!「ミラノデザインウィーク2024」でロベルト・バッジョ氏がブランド・アンバサダーに就任
Auto Messe Web
もとはV12エンジンのGPマシン! ドライエ・タイプ145 シャプロン・ボディのスーパークーペ(2)
もとはV12エンジンのGPマシン! ドライエ・タイプ145 シャプロン・ボディのスーパークーペ(2)
AUTOCAR JAPAN
フェラーリに8年先行したロードカー ドライエ・タイプ145 シャプロン・ボディのスーパークーペ(1)
フェラーリに8年先行したロードカー ドライエ・タイプ145 シャプロン・ボディのスーパークーペ(1)
AUTOCAR JAPAN
全長4m級! 新型「200馬力超えハッチバック」公開!  誕生から“25周年”の「スポーツハッチ」! 迫力フェイスもカッコイイ「ポロGTI」発売
全長4m級! 新型「200馬力超えハッチバック」公開! 誕生から“25周年”の「スポーツハッチ」! 迫力フェイスもカッコイイ「ポロGTI」発売
くるまのニュース
大型トラックに休憩義務はあれどSA・PAは慢性的な駐車枠不足! 対策で出てきた「駐車有料案」はハッキリいって愚策そのもの!!
大型トラックに休憩義務はあれどSA・PAは慢性的な駐車枠不足! 対策で出てきた「駐車有料案」はハッキリいって愚策そのもの!!
WEB CARTOP

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

222.5312.6万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
セプターの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

222.5312.6万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村