その昔パジェロにランクルといった本格クロカンといえばフロントフェイスを丸っと覆うカンガルーバーが当たり前の装備でもあった。現在はSUV全盛にもかかわらずまったく見かけなくなってしまったが、一体なぜか!?
文:小鮒康一/写真:ベストカーWeb編集部
SUVめっちゃ流行っているのに全然見なくない!? カンガルーバーが衰退したワケ
■カンガルーと衝突で廃車も!? オシャレじゃなくて被害軽減が目的だった
純正オプションはもちろん4駆の名門ジャオスなどアフターパーツも超豊富だったあの頃。とにかくRV車買ったら付けるのが当たり前だったのだ
1980年代中盤から90年代にかけて生まれたRVブーム。今のクロスオーバーSUVよりはちょっと硬派なクロスカントリー車を始めとしたRV車(レクリエーションビークル)に乗ることがオシャレともてはやされた時代の出来事だ。
その頃のRV車と言えば、今でも高い人気を誇るランドクルーザーはもちろん、すでに日本市場からは姿を消してしまった日産 サファリや三菱 パジェロ、いすゞ ビッグホーンなど、ゴツめな角ばったスタイルの車種が人気となっていた。
そしてそれらのRV車の多くに装着されていたのが、フロント周りを強固なパイプで覆った「カンガルーバー」というアイテムだった。
その名の通りカンガルーに対する装備であり、カンガルーの生息地の筆頭であるオーストラリアで生まれたものと言われている。
野生のカンガルーが多く生息するオーストラリアは、走行中の車両と野生動物との衝突事故が多発。カンガルーは大きなものでは100kgに迫る巨体であり、強靭な脚力によって時速40km以上の速度で移動することも可能なため、衝突時の衝撃はかなりのものとなってしまう。
場合によっては一発で廃車になってしまう可能性もあるため、その被害を最小限にするためにフロント周りに強固なガードバーを装着したというワケなのである。
■今のSUVには似合わず!? 衰退の要因は歩行者保護と燃費悪化!?
本格クロカンのみならずクロスオーバーの初代RVRやギャランスポーツなどにも採用。時代はまさにカンガルーバー全盛だったのだ
破損すると自走不可能となるラジエーター周辺をガードするものはもちろん、ライト周りまでカバーする大型のものもあり、基本的にはフレームにガッチリと固定されてかなりの強度を持つものとなっていた。
ただ日本ではそもそもカンガルーは生息しておらず、北海道の郊外など一部の地域を除けば走行中に大型の野生動物と衝突してしまうという可能性は極めて低い。
逆にその強固なカンガルーバーが万が一歩行者と接触したときに大きなダメージを与えかねないということで、本格的なカンガルーバーは徐々に姿を消していったというワケなのだ。
RVブームのころの車両はどちらかというと角ばった無骨なスタイルのものがおおかったため、カンガルーバーも似合っていたのだが、近年流行中のクロスオーバーSUVは流麗なクーペスタイルを持ったものも多く、無骨なカンガルーバーがアンマッチという理由もあるだろう。
また本格的なカンガルーバーは強固な作りが故に重量もそれなりにあった。その重量物が車両の最先端部に備わるということで、運動性能の低下は火を見るよりも明らか。
また空気抵抗も増大するため、燃費性能も無視できない現在のクルマには歓迎しにくい要素が多いというのも理由のひとつかもしれない。
■今なお日本でも健在!! 昔と違って完全にオシャレアイテム化
とはいえ、今でもジムニーなど角ばったスタイルの車種向けを中心にカンガルーバー的なアイテムはリリースされているし、中にはパイプなどを加工した自作品を装着している人も存在している。
というのもカンガルーバー自体は特に法規制がなされたものではないので、突起物とみなされるような危険な形状をしていない限りは問題なく装着できるのだ。
ただ注意したいのが装着方法。ボルトナットで装着している場合はルーフキャリアなどと同じく脱着可能な装備として扱われる。
だが、溶接などでガッチリ固定してしまうと車体の一部とみなされ、全長が3cm、全幅が2cm以上車検証の記載サイズよりも変わる場合は記載変更の手続きが必要となってしまう。
また近年市販されているカンガルーバーは、昔のもののように強固な作りではなく、あくまでドレスアップパーツの一部として作られているものも多いため、万が一野生動物と衝突した際も確実にボディを守ってくれるワケでないということも頭に入れておきたいところである。
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みんなのコメント
それを台無しにして歩行者を危険に晒すだけの身勝手なアイテム。何がオシャレだ。