ダイハツはトヨタの完全子会社となり、軽自動車に特化したメーカーというイメージが強い。同じように軽自動車に力を入れているスズキがユニークでチャレンジングなクルマを出してくるのに対し、ダイハツは堅実で地味、というイメージを持っている人も多い。
しかし100年以上の長い歴史を持つダイハツはこれまでに個性的かつチャレンジングなモデルを数多く市場投入してきた。
【なんちゃって軽クロスオーバー車の真実】どの車が本物のSUVに近い?
ダイハツのチャレンジングなクルマは、不遇なモデルも多く、その結果として1代限りで車名が消滅したモデルも少なくない。
ダイハツの車名変更はチャレンジングの証と言えるだろう。そんな1代限りで消滅したダイハツ車を振り返る。
文:永田恵一/写真:DAIHATSU、ベストカー編集部
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ロッキー
販売期間:1990~1997年
後席部分のレジントップは脱着が可能で、クローズド、セミオープンが自在に楽しめた。武骨なエクステリアとATがなかったのが販売に影響
ダイハツは2019年10月に開催される東京モーターショーに参考出品した後の11月からコンパクトSUVを発売開始する。車名についてはビーゴとなるのか、コンセプトカーのDNトレックとなるのかはまだ判明していないが、非常に楽しみな1台といえる。
ダイハツのSUV(昔はクロカンと呼んでいた)は系譜は途絶えず続いているが、どれもが1代限りで終わっている。ここではそのなかからロッキーを取り上げる。
ロッキーはラダーフレームを採用した貴重なコンパクトサイズのクロカンで、エスクードから遅れること2年の1990年にデビュー。
エンジンはエスクード同様に1.6Lで、駆動方式はトランスファー付きのパートタイム4WDとセンターでフロック付きのフルタイム4WDをラインナップ。
写真は2017年の東京モーターショーに出展されたDN-TREKで、ほぼこのままのデザインで2019年11月から販売を開始するというから楽しみ
エスクードよりも後発ながらエクステリアデザインは古風なクロカンをイメージさせる武骨なもので、エスクードのように売れなかった最大の要因と言える。
ただし、取り外し可能なレジントップは魅力的だった。ハードトップ装着時はクローズド、取り外せばセミオープンと変化するし、オプションでソフトトップも用意されていたのでシチュエーションに合わせて変幻自在が売りだった。
エスクードが開拓したシティクロカンと同じコンセプトで実際に街乗りも不満はなかったが、ATが設定されていなかったのもマニア以外には厳しかった。
1997年に上級クロカンのラガーに吸収される形で消滅となってしまった。
RAV4などに比べると武骨なデザインと言われるエスクードもロッキーと見比べると洗練されているように映る。ライバルだったが販売は好対照の結果になった
アプローズ
販売期間:1989~2000年
ダイハツの独自開発セダンとして期待感満点だったが、地味なエクステリアデザイン、リコール問題などにより販売面で苦戦
ダイハツのセダンと言えば提携相手であるトヨタのカローラのプラットフォームを使ったシャルマンが有名だ。
シャルマンが完全自社開発ではないのに対し、アプローズは記念すべきダイハツが独自開発したセダンで、1989年のジュネーブショーに参考出品されたのち発売開始したことからもわかるとおりアプローズはダイハツの自信作だった。
エクステリアは当時としてはラジエターグリルを備えた王道的フロントマスクに、丸みを帯びた全体的なプロポーションを持つコンパクトセダンだったが、トランクとリアゲートが一緒に開くスーパーリッドを採用したのがアプローズの最大の特徴といえる。
エンジンは1.6L、直4SOHC(120ps/14.3kgm)というコンパクトセダンでダイハツは軽自動車以外の新たなユーザーの獲得を目論んでいたが、燃料タンクに起因する事故・トラブルによりリコール。これが大きな足かせとなったのは否定できない。
ライバルのカローラと比べても豪華に仕上げられたインテリアの質感は高かった。それだけに売れなかったのは残念
アプローズはダイハツの最後の独自開発セダンであるシャレードソシアルと同時に2000年に生産を終了し、ダイハツの独自セダンの系譜が途絶えた。
拍手喝采を意味するアプローズという車名どおりにはいかなかった。
オーソドックスな3BOXセダンに見えるが、トランクとハッチが一緒に開く5ドアハッチバックタイプに分類されるアプローズ
YRV
発売時期:2000~2005年
エクステリアデザインはターボはボンネットにエアインテークが設けられる。前後のサイドウィンドウが独立したラインとなっているのはデザイン上のポイント
ストーリアをベースに背の高いコンパクトカーに仕上げたのがYRV。車名のYRVは「Youthful(若々しい)」、「Robust(たくましい)」、「ViVid(活気あふれる)」という意味が込められている。
エンジンは1L、直3DOHC&1.3L、直4DOHCのNAと1.3L、直4DOHCターボの3種類で、1.3Lターボは当時クラス最強の140psを誇った。
YRVのコンセプトは『走る背高ワゴン』という当時としては斬新なもので、それを最も具現化したのが1.3Lターボを搭載したYRVターボだ。
クリアタイプのリアコンビも当時は人気でしっかりと押さえている。全高も高めなので使い勝手にも優れていた。実用面と走りを両立していた
YRVターボはヨーロッパで鍛え上げた足が自慢のヨーロピアンテイストの走りが自慢だったが、アシが硬すぎた。当時はスポーティ=硬いというのが定石だったが……。
エクステリアデザインでは前後のサイドウィンドウのラインが独立して競り上がっているところで、これもYRVの自慢のひとつで、キビキビ感を演出していた。
そのほかルーフのガラスエリアを広くしたパノラミックルーフを設定し、オープンではないがオープンエアを満喫できた。
コンパクトカーに一石を投じようとしたYRVだったが2005年に消滅。最終的にはブーンに吸収される形になったと思われる。
YRVのインパネはスピードメーター、タコメーターの配置などデザイン面でもこだわっていた。スポーティな雰囲気がよかった
パイザー
発売時期:1996~2002年
セダンとハイト系ワゴンのクロスオーバーカーを目指したのがパイザーだったが、没個性のエクステリアデザインが地味さを強調するかたちになった
シャレードソシアルをベースに、『セダンより使いやすく、ワゴンより楽しい』というコンセプトで1996年にデビュー。このコンセプトからわかるとおり、当時のダイハツは今でいうところのクロスオーバーカーにチャレンジしていたのだ。
パイザーは全高1595mmという今でいうハイトワゴン系コンパクトカーのパイオニア的存在だったが、同じように背の高いコンパクトカーとして登場した初代マツダデミオが大ヒットしたのとは対照的に地味な存在だった。
失礼ながらCMキャラクターにアグネス・ラムと双子の息子たちを登場させたのが最大の話題で、クルマそのものよりも「おっ、パイザー」のキャッチフレーズが目立っていた。今ではセクハラ云々と騒がれそうだったが、まだおおらかだった時代が懐かしい。
存在は地味ながらエアロモデルのカスタムを追加したり、本革シートを設定したりとまじめに作っていた印象。マイチェンでエクステリアデザインを変えてリフレッシュを図ったものの奏功せず、2002年に消滅。
ハイトワゴン系コンパクトカーの先鞭をつけたといっていいパイザー。使い勝手はよかったが、後発のマツダデミオに販売面で完敗して消滅
ソニカ
販売期間:2006~2009年
ムーヴよりも160mm低い全高こそがソニカのチャレンジだった。走りの気持ちよさは当時の軽自動車では群を抜いていたが、ユーザーはそこまで求めていなかった
2005年の東京モーターショーに出展されたSKツアラーの市販バージョンがソニカだ。
当時はワゴンR、ムーヴを筆頭にハイトワゴン系が大人気で、1600~1630mmの車高を生かしたユーティリティが受けていた。
それに対しソニカの全高は1470mmと同時代のムーヴよりも160mmも低い。トレンドに逆行してまで低い全高を採用したのは、走りの気持ちよさを追求するためだ。
コンセプトカーのSKツアラーは爽快(Sou-Kai)をもとにネーミングされていて、それを市販化したソニカはコンセプトを忠実に守り市販化された。
独特の形状をしたセンターコンソールにより先進的なイメージに仕上げられているソニカのインパネ。momoのステアリングはスポーツアイテムの定番
塊感のあるプロポーションに躍動感みなぎるせりあがるデザインのサイドウィンドウ、シンプルながら凝ったデザインのリアコンビなどにより見る者をワクワクさせてくれた。
実際には知らせても当時の軽自動車としては実力ナンバーワンで、当然走って楽しく、爽快感に浸れた。走りを追求すると同時に燃費性能にもこだわったのは評価されるべき点だ。
しかし、ユーザーは走りに特化したソニカよりも、スペースユーティリティに優れ、走り、燃費などすべてについてのバランスがいいハイト系を選んだのだ。そのため思うように販売は伸びず1代限りで消滅してしまった。
ダイハツのソニカでのセダン復権のチャレンジは失敗に終わったが、ダイハツには今後も懲りずにチャレンジを続けてほしい。
フロントからリアにかけてのワンモーションフォルムが美しい。サイドウィンドウの形状にもこだわりスポーティ感を演出。リアコンビもシャープでカッコいい
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