走りの評価に厳しい鈴木利男氏に「このクルマは最高だ」と言わせたい! という、忘れた頃にやってくるこの企画。今回は日本トヨタ、中国BYD、そして韓国ヒョンデと、三つの国の三つのメーカーが送り出すEVに乗っていただいた!!
※本稿は2024年2月のものです
文/鈴木 利男、写真/TOYOTA、BYD、HYUNDAI
初出:『ベストカー』2024年3月26日号
BYDドルフィンは安くて高性能!? bZ4Xは好印象も足りない部分って? 日中韓EVを直接比較
■本日の対局はEVアジア選手権!
EVはモーターのパワーフィールに差はないが、トルク感やロードノイズ、風切り音などの静粛性で違いが出てくる。同じ場所で同時に乗り比べることで、その差がよくわかる
日本を代表するレジェンドレーサーにして、R35 GT-Rの開発ドライバーとしても大活躍した鈴木利男氏に、編集部が選んだクルマに乗ってもらい「参りました!」と言わせたいこの企画。今回は日本、中国、韓国の最新EVを評価するEVアジア選手権となった。
■EV大国・中国からやってきた電気仕掛けのイルカ!! BYD ドルフィン
2023年9月より日本での販売を開始。車名のとおり、内外装がイルカをモチーフにしたデザインとなっている。鈴木氏に乗っていただいたのは大容量電池を積む「ロングレンジ」だが、電池容量の少ない仕様もある
試乗したのは容量58.56kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を積む「ロングレンジ」。204ps/31.6kgmのFWD車だ。
スムーズに走るのはEVだから当然として、ロードノイズ、風切り音が少なく静か。また、ストローク感のあるサスペンションで乗り心地も良好だ。
ADAS(先進運転支援装置)はやや過敏で、車線変更時に、後ろのクルマとの距離が充分にある場合でも危険と判断し、思いのほか強い力でステアリングを戻そうとするのは初めてだと驚く(オフにもできる)。警報音が大きいことやスイッチ類が少し使いにくいことなど気になる部分もあるが、走り自体はいい感じ。
以下、テスト走行中の利男氏のコメント。
「パワーは充分でボディもしっかりしています。最近のクルマではめずらしくストローク感のあるサスペンションで、乗り心地がいいです。人によってはボディが動くのはイヤだと言う人もいますが、このクルマは前後のバランスが取れていて前のめりになったりしないし、いいですよ。
ただ、路面が悪いところだとフロアに振動がきますね。突き上げが大きい場面もあります。また、大きなガラスルーフがあるせいか(ロングレンジに標準装備)、上屋の重さも少し感じます。
快適な柔らかさはこのクルマの最もいいところでしょう。車格、価格以上の走りで、ちょっとびっくりしました」
●鈴木利男の評価
サスペンションはストローク感がありながら節度感もあり、乗り心地は今回の3車で最もよかった。その分うねった路面での動きの収束に時間がかかる面はあるが、ボディがしっかりしていて前後のバランスもよく、思いどおりにリアに荷重をかけられる。全体的に柔らかな動きで快適性が高かった。
ステアリングのセンター付近に不感地帯があるが、そのフィールが柔らかな走りには合っていて、慣れると心地よくなる。
■日本再上陸を果たした半島からの刺客!! ヒョンデ KONA
2023年11月から日本販売を開始。本国ではガソリン仕様もあるが、最初からEVを視野に入れた設計となっている。BYD ドルフィン同様、電池容量の少ない仕様もある
容量64.8kWhのリチウムイオン電池を搭載する「ラウンジ」に試乗。204ps/26.0kgmのパワースペックで航続距離541kmのFWD車だ。
斬新なデザインと装備で話題となったアイオニック5、燃料電池車のネッソに続く日本販売第3弾モデルで2023年秋に登場。アイオニック5はEV専用車だが、KONAは本国ではガソリン車もある。
ドルフィンよりサスペンションが締まっており、乗り心地も硬め。その分スポーティな乗り味だが、利男氏の評価はどうか?
「パワーは同等ですが、トルク感はBYDのほうがありましたね。ロードノイズ、特にリアから聞こえる音が大きめです。BYDが静かだったので、余計に気になりますね。
サスペンションのストローク感がなく、バタつきを感じます。特にリアがバタつく感じで、タイヤ(クムホECSTA)の硬さもその要因かもしれません。また、ステアフィールも気になります。重さを感じるし、戻す力がセンター付近で強めに出る違和感のある動きをします。
でも、足が締まっているから、うねった路面での動きは抑えられています。シャキッとした感じが好きな人は、BYDよりこちらのほうが好ましく思うかもしれません。
強く利かせようとすると、けっこう踏力が必要なブレーキも違和感があります。EVの回生ブレーキはやはり難しいのかもしれませんが、BYDでは違和感はなかったので、改善を求めたい部分ですね。
ただ、モニターがワイドに広がる未来感のあるインテリアは、こういう新しい感覚が好きな人にはたまらないでしょうね」
●鈴木利男の評価
硬めのサスペンションでスポーティだが、道路の継ぎ目でタイヤがバタつくし、路面のミューによってザラザラ感を感じることもあった。また、ステアフィールに違和感があり、ロードノイズも大きめ。踏力が必要なブレーキも改善の余地があるように思える。
bZ4X同様、もう少しサスペンションを動かしたい。最近のクルマは足を動かさず、ダンパーとタイヤで吸収しようとしていることが多いが、このクルマもその方向だ。
■大幅改良で生まれ変わったサムライEV!! トヨタ bZ4X
トヨタ初の量産EVとして2022年5月に登場し、リコールなどを経て2023年10月に大幅改良モデルを発売。スバルソルテラは兄弟車だが、細部は異なる
試乗車は容量71.4kWhのリチウムイオン電池を搭載する「Z 4WD」。今回の3車のなかで最も電池容量が大きく、モーターは前後ともに109ps/17.2kgm(×2)で航続距離は540km。
その分価格も高く、ドルフィン407万円、KONA489万5000円に対し、650万円となっている。なお、今回は唯一スタッドレスタイヤを装着しての試乗となった。
利男氏のコメントは以下のとおり。
「運転席がタイトでパーソナル感はありますね。メーターが遠いのは視線移動を少なくするためらしいですが、こんなに遠くにする必要はあるんでしょうか。
アクセルを強く踏み込んだ時のトルク感は3車のなかで一番ですね。4WDですが、フロントからグッと引っ張られる感覚です。
足はけっこう硬めです。ストロークが短めで引き締まった乗り味。上屋の重さを感じる場面もありますが、コーナリングは安定しています。スタッドレスタイヤだからかもしれませんが、締まった足のわりに乗り心地の硬さは感じません。
価格が高いのだから当然かもしれませんが、3車のなかで一番高級感があります。静粛性が高いし、ステアフィールも自然でボディもしっかりしています。
ただ、面白さはあまり感じられないですね。個人的には、もう少し足を動かしてあげたほうが乗り味に個性が出ると思います」
EVは勝手が違うのか、いつも以上に冷静なコメントが続いた利男氏だった。
●鈴木利男の評価
3車のなかで一番高級感のある走りで、静かでモーターも最もパワフルに感じられた。ストロークが短めのサスペンションは無駄な動きを抑えており、コーナリングの姿勢も良好。それでいて乗り心地の硬さも感じさせないし、ステアフィールも自然だった。
ただフロアが高く、ドラポジが高く感じるほか、後席も足が持ち上がる姿勢となって快適性はイマイチ。また、個人的には、もっとよく動くサスペンションが好みだ。
【結果発表】「参りました」はなかったが1位はBYDドルフィンがゲット!
今回登場した3車の主要諸元
「参りました」は相当参ってもらわないと認定できない。なのでハードルをかなり高くしていて、本企画では100点満点の採点で96点以上を「参りました」としている。で、今回のEVアジア選手権だが、最高採点でもBYDドルフィンの85点で、「参りました」からはかなり遠い結果となってしまった。
まぁ、なんとなく予想はできていたことだが、残念は残念。しかし、そんななかでも新興勢力の中国車がトップになったのは予想外。デザインや装備は別として、純粋な走りの評価で1位なのだから価値がある。中国車、侮れない!
・1位:ドルフィン(85点)
・2位:bZ4X(80点)
・3位:KONA(75点)
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みんなのコメント
さらに国民自体がハンニチ行動を取る国から車を買ってやる筋合いは全く無い
中華はいわずもがな信頼性0
そして今話題の河野太郎筆頭にスパイ活動を日本政府に対して行っている敵性国家
そんなところの車などコネクティッドと称して本国にありとあらゆるデータが盗まれる仕様となっているのは間違いないこと
であるからどうしてもEV買うなら国産か欧米だろうね
自分は絶対に買わないけど