「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、シボレー ソニックだ。
シボレー ソニック(2011年:ニューモデル)
2011年夏に日本デビューしたシボレー キャプティバに続く、GMグローバル アーキテクチャーのニューモデルがソニックだ。大胆なスタイリングのコンパクトなボディは、日欧のコンパクトカーにはない「サムシング」をもたらすのだろうか。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
映画の「カーズ」や「トランスフォーマー」に代表される、ザ・アメリカンな顔ぶれに加え、親しみやすい車種の投入が始まったシボレー(編集部註:2011年当時)。その第1弾のキャプティバに続き、やってきたのが今回紹介する「ソニック」だ。
ソニックの開発は、GMが最近得意とする、世界各国のGM部隊からイイトコ取りする方式だ。デザインは韓国とアメリカ、中身は欧州と、それぞれの英知を結集した。その結果、まず目を惹くのがコンパクトカーらしくないデザインだ。オートバイのようなヘッドランプに、全面で際立つキャラクターライン。しかも、見事といえるのが、パーツごとの隙間が3.5mm以下におさえられているということ。現代やキア同様、見た目も整っている上に質感が高いのには驚かされる。
直列4気筒DOHCの1.6Lエンジンはオペルに搭載されていたものの改良型で、可変バルブタイミング機構を備える。これに組み合わされるトランスミッションは、コンパクトカーとしては初のGM製6速ATだ。MT風にマニュアルシフトもできるのだが、その方法がユニークだ。Mレンジに入れた後、シフトノブ上部についたボタンスイッチで変速する。タップシフトと呼ばれるこの方式、慣れるまでは少し操作しにくいのだが、ゲームのコントローラー風なので、若者には馴染みやすいかもしれない。
アメリカ車らしくハイウエイクルージングが得意
少し気になるのは、JC08モードで10.9km/Lという燃費。ライバルと比べると、もう少し・・・と欲を出したいところだが、市街地走行だと3000rpmくらいまで回してから変速するシフトスケジュールが少々足を引っ張っている可能性が高い。
ちなみに6速100km/hのエンジン回転数は約2100rpmなので、アメリカ車らしく高速走行の方が得意のようだ。変速ショックを極力抑えた味付けは速度の維持はしやすいが、出足や中間加速もおとなしめなのも頷ける。
したがって、高速道路での乗り心地はフラット感もあり満足だが、試乗車がまだ走行400kmとアタリがついていない状況だったこともあり、路面の悪い街中では正直かなり硬く感じられた。サスペンションが馴染んだ頃のフィーリングが、もう一度見たいところだ。
ハンドリングは最近のアメリカ車っぽく、舵角が少なめでキレイにラインをトレースしてくれるタイプだ。小回りも利くし、機動性はかなり高い。後席のロードノイズは少々気になるが、このサイズのアメリカ車は、おもてなしよりもパーソナルカーとしての性格をメインで作られているのだと割り切ったほうがいいだろう。ワイルドな個性的コンパクトハッチバックが欲しいという人は、要チェックとなる1台だ。
■シボレー ソニック LT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4050×1740×1525mm
●ホイールベース:2525mm
●車両重量:1220kg
●エンジン:直4 DOHC
●総排気量:1597cc
●最高出力:85kW(115ps)/6000rpm
●最大トルク:155Nm(15.8kgm)/4000rpm
●トランスミッション:6速AT(マニュアルモード付き)
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:レギュラー・40L
●JC08モード燃費:10.9km/L
●タイヤサイズ:195/65R15
●当時の車両価格(税込):198万円
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みんなのコメント
かつてバブルの頃、いのうえ・こーいち氏が初代のトゥデイ、二代目のシティ、四代目のシビックという同時期に販売されていたホンダの小型3ドアハッチバックの、同じ価格帯のグレードを選んで乗り比べるという企画をやっていたように、ソニックと同じ頃のスズキのスプラッシュやスイフトと乗り比べてみて欲しかった。国産車と輸入車の商品としての位置付けの違い、そして韓国やアメリカ、日本という国籍バイアスを取っ払った、いちGMのベーシックカーとしての公正な比較・評価を見てみたかったなぁと思う。それでもきっとスズキ車の方が優れていたのだろうが。