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スーパーカーだらけのなか「俺だけセダンかよ」……からの踏んだ瞬間「最高」! あらゆる自動車に乗りまくっているプロが「超個人的に思い入れのあるクルマ」【石橋 寛編】

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スーパーカーだらけのなか「俺だけセダンかよ」……からの踏んだ瞬間「最高」! あらゆる自動車に乗りまくっているプロが「超個人的に思い入れのあるクルマ」【石橋 寛編】

 この記事をまとめると

■筆者にとって特別な思い入れのあるクルマをピックアップ

ロスの自動車店に駆け込んだ! あらゆる自動車に乗りまくっているプロが「超個人的に思い入れのあるクルマ」【青山尚暉編】

■バイトとして入った出版業界でE28型M5の楽しさに目覚めた

■不思議なことにこれまでMモデルは愚かBMWすら所有したことがなかった

 編集部のバイトとして広報車に乗りまくった

 特別な思い入れのあるクルマを思い浮かべると、仕事柄たくさんありすぎて戸惑うほどです。自分史上で最高速をマークしたFD3Sや、血液が逆流するかのような鬼加速だったマクラーレンF1、はたまたシトロエンXMの脳天がとろけるような乗り心地だっていまも忘れられません。ともかく1台に絞り込むのは至難の業ですが、ここは筆者がクルマ雑誌の業界入りをして最初に衝撃をくらったクルマとさせていただきましょう。

 モーターファン誌(三栄書房)でアルバイトを始めるまで、所有したことのあるクルマといえば、ローバー・ミニとかルノー5アルピーヌといった、どちらかといえば庶民的なモデルでした。ブローカー的にクルマの売買をかじっていたので、稼ぎでスポーツカーを買うとかカスタムなどすればよかったのかもしれませんが、バカだったのでしょうね。ほとんど夜遊びやらデートに費やしていたのです。

 で、モーターファンのバイト小僧として各メーカーの広報車をピックアップ&返却の日々が続いていたのですが、なかなか読者の皆さんが期待するようなスペシャルモデルに触れるチャンスはありませんでした。

 採用面接こそ谷田部に連れていかれ、1985年と1986年のポルシェ911を試運転し、どっちが新しいクルマか? などと聞かれたりしましたが(ここでブローカーの真似事が奏功したのはいうまでもありません)、採用後は国産のどうでもいいクルマしか運転させてもらえませんでした。

 そんな社会をナメた小僧ですから、ちょいちょい事故も起こしていましたね。脱線しますが、某M社のカー・オブ・ザ・イヤー受賞車を返却する際、フルブーストを試してみたくなり、狭い路地でガードレールに突っ込んじゃったとか(いわゆる広報チューンというやつで、市販車より相当パワーが上がっていたはずです)、旧ターンパイクの路面が凍結していたのでにわかドリフトを楽しんでいたら法面に乗り上げて廃車になっちゃった(運悪く太い切り株があり、そこに乗り上げたためエンジンがボンネットを押し上げてしまいました)など、バイトのわりに派手なクラッシャーに(笑)。

 モーターファン誌は一流のベテラン編集部員揃いだったので、こっぴどく絞られたこと、いまだに夢でうなされるほどです。

 ハズレなはずのセダンが人生を変えた

 それでも、なにかの特集で数台のハイパフォーマンスモデルを一気に乗り比べるという仕事があり、筆者はBMW M5(初代のE28)をロケ現場まで運んで、撮影後に返却する役目を仰せつかったのです。が、ほかのラインアップはポルシェ944ターボやフェラーリ328GTS、アストンマーティンV8など、小僧がよだれを垂らすようなモデルばかり。

「オレだけセダンかよ」とやっかみ半分だったことはご想像のとおり。で、当時は六本木通り沿いにあったBMWジャパンから乗り出したのですが、やっぱり「アクセル重い、音静か」ですからなんら高ぶることなく、むしろガッカリしながら高速道路に入ったのです。

 東名に入ったころでしょうか、フルスロットルのチャンスができて重たいペダルを床まで踏んだとき、ようやく「お!」という感覚。言い古されていますが、とにかくシルキースムースで、5000回転くらいでほんの少しだけザラつくというか、コリコリとまわる感覚が「おぉ!」となり、小僧ながら「カムに乗る」のが体感できた次第。

 こうなると楽しくて仕方がありません。乗り心地はさほど覚えていませんが、途中で同じロケに向かうアストンマーティンを見つけると、ピタリと背後につき「バックンバックン」煽り続けることができたので、かなり引き締まっていたのだと思います。

 幸い、ロケの際はシフトミスでブレーキングドリフト的にハーフスピンした程度で済み、無事に返却できました。それからは、搭載されていたM88/3エンジンに興味がわき、編集部にあったBMW関連、エンジン関連、そしてチューニングにかかわる本を片っ端から読み漁ったものです。鋳鉄ブロックがどうして超絶な耐久性を持てるのか、黎明期におけるニカシルコーティングの失敗ケース、あるいはボッシュのモトロニックが持つテクニカルアドバンテージといったことから、M社のトップエンジニアであるパウル・ロシュのことを知ったのもこのときのこと。

 そこから発展して、ハイニ・マドールやコスワースといったチューナーやその手法、果てはソジウム注入カムやインペラーの物性理論までかじるなど、とにかく「人が変わったように真面目なバイト小僧」になっていた気がします。すると、編集部のベテランからも可愛がられるようになり、また超大物評論家の方々から薫陶を受けるチャンスにも恵まれ、どうにかバイト小僧は正社員になることが叶ったのでした。

 あのとき、M5に乗っていなければ、早々に三栄書房はクビになり、どこかで三流ホストにでもなっていた筆者ですから、あのドライブこそ格別の経験だったと振り返らずにはいられません。え? ブローカー業務のあがりでM5を買ったかって? 不思議なことに、いまのいままでM5どころか、BMWを自腹で買ったことは一度もないのです。憧れの的すぎて、恐れ多いとか、そういう理由ではなく単純にポルシェが好きになっちゃっただけですわ(笑)。

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