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1980年代に印象的だった日本車CM5選~女優編

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1980年代に印象的だった日本車CM5選~女優編

1980年代に登場した日本車のCMに出演した懐かしの女優とは? クルマの思い出とともに振り返る。

1980年代の日本車のテレビコマーシャルには、俳優が大勢登場した。ただ気になる点も。女優の出演頻度が、男優より少ない。

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この時代、男優は、有名なひとがこぞって出演している。たとえば、トヨタ「マークII」のイメージキャラクターを務めた六代目・市川染五郎(現・中村白鴎)や日産「ブルーバード」の沢田研二、マツダ「ファミリア」の中井貴一など。

でも女優はどうだろう? 当時人気だったひとの例として、前出の六代目・染五郎がNHK大河ドラマ『山河燃ゆ』(1984年)に出演し、評判をとっていたころの共演女優を見てみると……大原麗子とか島田陽子とか多岐川裕美などが出演していた。このひとたちは数多くのテレビコマーシャルに出演している。でも二輪・四輪の作品数はぐっと減る。

数少ない例をさがすと、たとえば大原麗子とホンダ「イブ」。1980年代前半、ホンダの原付のコマーシャルでは、若き大原麗子がかわいらしい演技を見せてくれる。

「女性(女優)の起用が少なかったのは、当時、クルマは『男性が女性にモテるための武器』だったからではないか? と、思います」

そう語るのは、最大手広告代理店の、経験豊かなプランナーだ。

「1980年代といえば、男が“いい車に乗っていればモテる”と、思っていた時代です。当時、比較的男性向けの商品だったクルマのコマーシャルに、(女性は)助手席側ならまだしも、自らステアリングを握る姿はマッチしないのでは? と、思われたのかもしれません」

たしかに、コマーシャルを見ていると、ほとんど女優たちは助手席にいるし、あるいはクルマの外に立つ場合も、助手席わきが多い。「このクルマを買ったらこんな素敵な女性が隣に座ってくれるのか」と、幻想を持つ男たち……って、どれだけ単純なのか。男ってつねにそういうものなのかもしれない。

(1)トヨタ「ビスタ」(初代)×多岐川裕美

1982年に登場したトヨタ「ビスタ」。販売チャネルに応じて「カムリ」という姉妹車もあった。特筆点は、ボディ形式。基本はセダンだったが、ノッチバックとファストバックもあった。

「コロナ」も、6代目に「リフトバック」(1978年)、8代目に「5ドア」(1983年)など、ハッチゲートを備えた車型が設定された。当時のトヨタは、ミドルクラスのセダンに機能主義を採り入れようとしていたことがわかる。

当初は1.8リッターエンジンのみで、5段マニュアル変速機しかなかった。それがあたりまえの時代である。ただし前輪駆動で、2600mmのホイールベースを活かしきろうとしたパッケージングは、ファストバックボディとともに新しかった。

インテリアの装飾も抑え気味で、むしろ広いウィンドウ面積によって、広々感がつよく意識されたのもおぼえている。華美なトヨタ車にちょっと食傷ぎみだった当時、ビスタはかしこい印象だった。

乗ると「まぁ、こんなもんか」というかんじで、悪くはないけれど印象に残るクルマではなかった。乗り心地もいまひとつ。ついでいえば、スタイリングもやたら角ばってみえて、自分のクルマとしては興味がもてない……そんな存在だった。

テレビコマーシャルは、実際のビスタの印象とは正反対というか、ゴージャスな雰囲気が漂う女優の多岐川裕美が出演していた。おもしろいのは、最初の頃こそ助手席に乗っているものの、後半になると、ひとりで運転して旅に出る姿が描かれる。

ひとりで遠出をした多岐川裕美は、途中、おそらくひとり旅のライダーと出会い、道を訊ねる。どういうシチュエーションなんだろうなぁ……興味深いCMだった。

(2)日産「グロリア」(8代目)×前田美波里

1987年から1991年まで販売された8代目セドリック(Y31型)は、シリーズの頂点だったと思う。4860mmの全長に対し、全高はやや低めの1380mmに抑えられたうえ、ボンネットの高さも抑えられ、前方から後方にかけて流麗な印象だ。

2.0リッターV型6気筒DOHC24バルブターボエンジン搭載の「グランツーリスモ」というグレードも新設された。従来はクラウンの競合として後席の居心地のよさのアピールを手抜かりなく行っていたセドリックは、8代目から走りのイメージをより打ち出していく。

とはいえ、歴代セドリックは速いクルマだった。先代Y30型も先々代430型も、セドリックといえば、とばすひとに好まれた。従来、エンジンはパワフルであるものの、足まわりはちょっとフワフワしていたため、「セドリックはそう楽しいものではない」という印象もあった。が、Y31型の登場で印象は大きく変わった。

姉妹車である「グロリア」は、セドリックと同時にモデルチェンジした。“姉妹車”というより“双子車”なので、グロリアとしての特筆点はないものの、テレビコマーシャルは専用。モデル出身で、女優業もこなしていた前田美波里をイメージキャラクターに起用した。

グロリアのテレビコマーシャルにおける前田美波里は、すでに触れたように、“助手席に座る人”のイメージが強い。たとえば、助手席側に立っていたり、クルマとは離れた場所に立っていたり。自らステアリングを握るシーンはない。ドライバーがあらわれるのを待っているのだろうか。サングラスをかけるなど、気取ったイメージが強くて、爽快感にはちょっととぼしい。クールってこと?

(3)三菱「エテルナ」(2代目)×星野知子

「となりに乗せて!」と、女優の星野知子が明るく声を出すのが好感度大の三菱「エテルナΣ(シグマ)」のテレビコマーシャルだ。

写真家・立木義浩氏の実家をモデルにしたNHK連続テレビ小説「なっちゃんの写真館」(1980年)で主演した星野の人気にあやかってキャッチコピーは「なっちゃんのエテルナ」。

NHKのドラマゆえに、帯スポンサーでもない三菱自動車が堂々とドラマの役名を使うとは……おおらかでいいです。残念ながら「いつかはクラウン」などと違って、ドラマの記憶が薄れるとともに風化してしまうコピーなのだけれど。

トヨタのラインナップでいうと、コロナからマークIIまでの顧客層をカバーすべく企画されたのが、ギャランΣであり姉妹車のエテルナΣ。全長4570mmの4ドアボディは、クリーンな線と面で構成されており、当時はどのライバルよりも垢抜けて見えたものだ。

「なっちゃんのエテルナ」で興味深いのは、1981年11月のマイナーチェンジ版。このとき走りのイメージを強化すべく、2000GSRターボを設定した。当時としては高性能な145psの最高出力を誇る2.0リッター直列4気筒ガソリンターボエンジンを搭載。個人的には、オリジナルのすっきりしたフロントグリルのほうが好みである。

1984年登場の3代目は軽量化がはかられるなど、クルマとしての出来は洗練されている。インテリアも、コンセプトがより明快で、欧州的なクリーンな造型が評価できる。

それに較べると、なっちゃんのエテルナは過渡的な仕上がり。速い。けれど、誰に乗ってもらいたいか、いまひとつはっきりしない。その印象が否めないのだった。

 (4)スズキ「セルボ」(2代目)×浅丘ルリ子

「誰を乗せたいの?」という男性陣の問いかけに対して、女優の浅丘ルリ子が「セルボにはいい男を乗せて走りたい」と、ニコニコして答えるのが印象的なテレビコマーシャルだった。

2代目セルボのメインターゲットは女性だった。当時の一般的な価値観である“ドライバーは男性、パセンジャーは女性”を打破しているのが、小気味よい。そう感じた女性視聴者も多かったはず。

CMの浅丘ルリ子には、いいかんじの妖艶さが出ている。若いアイドルが、冒頭の返答とおなじ内容を述べても、説得力はそれほどないかも。生意気でかわいいって思うかもしれないが。

セルボは軽自動車のなかでも、独特のコンセプトを有していた。いまの言葉なら“ライフスタイルカー”ともいうべきか。太いリアクオーターピラーで、パーソナル性を強く打ち出していた。その考えは先代、いやもっとさかのぼって「フロンテクーペ」から継承されていたし、1988年登場の3代目にも引き継がれた。

2代目の特徴は前輪駆動化された点。ホイールベースは120mm伸び、エンジンは4ストローク化された。つまり”常識的”なクルマになったのだ。インテリアは女性がメインターゲット(とメーカーではしていた)であっただけあって、ベージュ基調の仕様もあった。

乗ると、洗練さとはちょっと縁遠かったものの、先代までのけたたましい2ストロークの騒音もなくなり、乗り心地もややしっとりした方向へ振られ、メーカーが成長していることが強く感じられたものだ。

そういえば、昨今の軽自動車のテレビコマーシャルには若手女優が多く出演している。ダイハツ「ミラ トコット」( 吉岡里帆・奈緒)やダイハツ「ムーヴ キャンバス」(高畑充希)、スズキ「ワゴンR」(広瀬すず)など。時代は変わったのである。

 (5)ホンダ「ロードパル」×ソフィア・ローレン

“バイクでも自転車でもない”、をコンセプトに1976年に発売されたホンダ「ロードパル」は新しい市場を作るのに成功した。とりわけテレビコマーシャルで使われた♪ラッタッタ~のかけ声は、このモデルじたいを指す言葉にまでなったのだ。

ラッタッタとは、ぜんまいを使って楽に踏めるような機構を与えられたキックスターターを意味する。乗りものとしては、欧州でいうところのモペッド。原動機付きの自転車のもっともシンプルな形態である。

もっともホンダだけに、作りは本格的だった。ボディもエンジンも専用設計で、操縦性のバランスもきちんと考えられていた。デザインも、洒落てはいないが、機能的でよかったと思う。

ロードパルのメインターゲットは女性だった。はたして「新規購入者の内、女性ユーザーが62.2%、30代から40代のユーザーが61%と、当初狙った客層の拡大を達成」と、ホンダは自社の資料で記している。

コマーシャルも成功の大きな要因とされている。メインキャラクターはイタリアの女優、ソフィア・ローレンだ。いくつかの種類が制作され、たとえば、イタリアの田舎町(と思われる)の教会前にある小さな広場で、花を買っていた彼女のまわりに、ロードパルに乗った女性たちが集まってくる。

シンプルだけれど、ソフィア・ローレンの笑顔が商品の魅力に貢献している。でも女優としては、もっとしっとりした印象を個人的には抱いていた。私は、彼女の主演作では、『昨日・今日・明日』(ビットリオ・デシーカ監督、1963年公開)と、同じ監督による『ひまわり』(1970年)が好きだった。

デビュー当初は肉感的な役どころで人気を博したソフィア・ローレンであるものの、『ひまわり』では旧ソ連に行ってしまった夫(マルチェロ・マストロヤンニ)を捜し求める妻の役。胸がしめつけられるような物語である。最後のひまわり畑のシーンでは映画館中が真っ黄色になったものだ。ローレンの美貌が、逆に、妻のせつなさをうまく表現していたように思う。

そのイメージで♪ラッタッタ~なので、当初、個人的には違和感があったけれど、底抜けに明るいコマーシャルはすぐに好きになれた。ただロードパルは2ストロークとはいえ、2.2psの単気筒エンジンの非力さが目立っていたのは事実。ひとことでいうと、遅かった。それもかなり。

「女性をバイクに乗せるという、今では当たり前になっていることが、当時の発想としてほとんどなかった。そのテーマに挑んでロードパルは生まれた」

当時の開発者の言葉である。

乗ったら、遅さにやりきれなさも感じるかもしれないが、見ていると、乗りたくなってしまう。ロードパルはそういう楽しい乗りものだ。

文・小川フミオ

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