フェラーリGTC4ルッソ試乗。4WSが加わった4WDシステムの実力は?
掲載 更新 carview! 文:清水 和夫/写真:フェラーリ・ジャパン
掲載 更新 carview! 文:清水 和夫/写真:フェラーリ・ジャパン
GTC4ルッソの4WDシステム「4RM Evo」を見てみよう。独特なレイアウトは2011年のFFから踏襲されたものである。一般的なFRベースの4WDはギアボックス内からトランスファーを横に出し、そこからドライブシャフトをフロント・デフまで伸ばす。そのためにエンジンの脇や下をデフとドライブシャフトが通る複雑なシステムが多い。メルセデス・BMW・ポルシェ パナメーラまで同じ形式だ。
ギアボックスをエンジン直後ではなく、リア・デフの前に配置する“トランスアクスル”の4WDとしてはスカイラインGT-Rなどがあるが、GTC4ルッソの場合はトランスファーが存在しない。フェラーリはフロントミッドシップというレイアウトを生かし、V12エンジンの前方にクランクシャフト先端を突き出して、そこに電子制御デフを配置したのだ。クランクシャフト後端はトルクチューブを介して後輪側に配置されたギアボックスとリア・デフに繋がっている。
ギアボックスで減速されたリヤタイヤと同じ回転に同期するために、フロントアクスル側は電子制御クラッチでコントロールされる。実際は4速ギアまでの速度範囲で4WDとして機能し、フロントに配分されるトルクは最大で170Nmとなっている。
つまり、前後デフの間にV12エンジンが配置される世界にも類がないFRベースの4WDを作りあげたのだ。これが四輪駆動の歴史の中でもエポックメイキングなメカニズムであることは言うまでもなく、非常にコンパクトで軽量だ。ライバルの4WDと比べても、フェラーリの4WDシステムは約半分の重量で済んでいる。その結果、前後重量配分の最適化とフロントの慣性モーメントを小さくできた。オーバー6リッターの自然吸気V12という大きなパワー・プラントと軽量4WDシステムのおかげで、ダイナミクスは妥協することなく、むしろ4WDのメリットを十分に生かした走りが可能となった。
また、後輪には新たに4WSが加えられ、リヤタイヤは低速では逆位相に動いて最小回転半径を短縮し、高速では同位相に動いて安定性を増す。高速側はターンインの瞬間に逆位相に動いてシャープにノーズをインに向け、次の瞬間は同位相に動いて安定させる位相反転制御も行なっている。私はシャシーのエンジニアに、「位相反転制御式の4WSは1989年の日産R32スカイラインに搭載されたスーパーHICASが元祖ですよ」と教えてあげた。
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