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【公道試乗】ドリキンこと土屋圭市が新型NSXを駆る!

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【公道試乗】ドリキンこと土屋圭市が新型NSXを駆る!

ギャップの乗り越えで感じたあまりに上質な足まわり

正直、新型NSXがアメリカで作られると聞いたとき「初代のNSXとは違う、アメ車なんだろうな」と想像していた。ところが、結果からいってしまえばいい意味で裏切られた。現代のスーパースポーツとして、ひとつの正解だと断言できる乗り味をもっていたからだ。

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今回の試乗は公道のみ。神戸市内から淡路島方面への往復というもので、市街地、高速、ワインディングの3シーンを走行できるコース。

シートに座りスターターボタンを押す。ハイブリッドでも、いわゆるファミリーカーのそれとは違い、始動時には一瞬エンジン回転が吹き上がりNSXがスーパースポーツであることを意識させる。

まずは市街地からスタートだ。新型NSXは4つの走行モード、Quiet(クワイエット)、Sport(スポーツ)、Sport+(スポーツプラス)、Track(トラック)がダイヤルで選択できる。まずはQuietを選んで走行。その名のとおり、街なかでの低速走行では完全にEVモードに入るシーンが多く、フロントモーターのみでの走行になる。このあたりはオレも含めて、都市部のマンション住まいといった人にはありがたい。

そしていきなり驚かされたのが足まわりだ。路面の段差や凹凸の乗り越えがじつにスムースで、乗り心地がいい。ホントにスーパースポーツか? と疑いたくなるほどまったく街乗りが苦にならない足だ。

さらに街乗りをラクにしているのが前方視界のよさ。一般的なスーパースポーツに比べて開けていて、たとえば狭めの高速や駐車場の料金所ゲート通過などでも苦にならない。このあたりは初代NSXを受け継いでいると思う。

4輪がベタっと張り付く安心のコーナリング

続いて高速からワインディングへと移動。市街地より速度域が高まるが、ギャップ乗り越え時などの足まわりの質感は見事としかいいようがない。決してストロークが大きいわけではないが、しなやかでスムース。たとえば助手席に女性を乗せていても気を遣わずに走れるだろう。

走行モードを切り替えてSPORT、SPORT+を試す。足まわりは引き締まり、Quietモードに比べればゴツゴツ感も出るが、不快な硬さはまったくない。このロールストロークの少なさで、これだけの上質さが出せるのは素晴らしいとしかいいようがない。

ワインディングのコーナーでは4輪がベタッと張り付く印象。不安感がまったくないのだ。正直公道では、どこに限界があるのかまったくわからないほどレベルが高い。つまり、少なくともストリートで楽しむ限りは、最高のコーナリング性能だといえる。

おそらくNSXはR35GT-Rと比べられることが多いと思う。コーナリングの絶対的な速さ云々は別として、同じような車両重量でもR35GT-Rのほうが上ものが動く感じだ。NSXも同じような動きを想定していたが、重心が低く安定していて、公道レベルではもっと軽いクルマに感じられる。

さて、新型NSXは4WDであり、フロントの左右輪を別々のモーターで駆動するトルクベクタリングが目玉の機能だという。4WDに関しては、フロントが路面を「掻く」感触があるものの、わずかなサポートといったイメージで、基本はリヤ駆動の動きだ。そしてトルクベクタリングに関しては正直わからないレベルだ。つまり違和感がなく、素直によく曲がるクルマという感触だった。

581馬力のユニットはじつにスマートなパワーの出方だ。R35GT-Rがもつ暴力的な加速とは印象がまったく異なり、「怖さ」を感じない500馬力である。

渋滞でも違和感のない回生と協調したブレーキ

そして気に入ったポイントのひとつにブレーキがある。試乗車はオプションのカーボンセラミックローターが装着されていたのだが、冷えている状態でもシッカリ効く。これは普段使いを考えれば素晴らしいことだ。

さらにハイブリッドゆえ、0.2Gまでは回生ブレーキだというが、高速の渋滞などでも違和感がなかった。これまで乗ったファミリーカーのハイブリッドとはまったく異なり、微細なブレーキ操作でも普通の摩擦ブレーキのような感触で減速をコントロールできる。

オレは試乗会などで、ずっと乗っていたいというクルマに巡り会うことは少ない。だが今回6時間という試乗時間のなか、ほとんどステアリングを握り続けた。それだけ気に入ったということだ。

しかし、そんなNSXにも気になるポイントはある。左後方の視界と、右折時の右斜め前の視界だ。この2点に関しては、街乗りなどでかなり気を遣う必要があった。また、バックミラーに映る後方視界も、光の加減でエンジンがリヤガラスに映り込んでしまう。前方視界がいいだけに、やや残念なところだ。

もうひとつ、長時間ステアリングを握りつつけたくなった要因のひとつがシートだ。市街地、高速、ワインディングと、どんなシーンでも疲れない。神戸から東京まで走って帰ってもいいな、と思わせてくれるデキだった。NSXはGTカーとしても優れたクルマだ。

サーキットで限界領域の挙動が試したい!

新型NSXは、乗る前の「どうせアメ車だろ」というイメージを見事に覆してくれた。オレに欲しいと思わせてくれるクルマだったのだ。

だが、本気で手に入れようと思うかどうかは、最後のところ、限界域の挙動を確認してからだ。アンダーしか出ないただ安全なクルマなのか、ドライバーのスキル次第でリヤを回し込めるようなクルマなのか。

先代NSXのタイプRに乗っていたオレにとって、本当にNSXを名乗るにふさわしいクルマかどうかを見極めなければ手に入れることはないだろう。近いうち、サーキットに持ち込んで確認したいと思う。

ただし現時点でも、サーキットは走らない、という人には自信をもってオススメできる。2000万円を軽く超える価格に見合った満足度を与えてくれるだろう。

(文:土屋圭市/写真:小林 健・増田貴広)

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