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【70年代のF1GPマシン】青年貴族の夢を具現化したヘスケス・レーシング

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【70年代のF1GPマシン】青年貴族の夢を具現化したヘスケス・レーシング

あのハーベイ・ポスルスウェイトが手がけたマシン

70年代のF1GPは、じつに長閑だった。60年代終盤に登場した傑作エンジン、フォード・コスワースDFVによって、誰もがF1マシンを製作することが可能になったし、70年代に入るとマーチがF1マシンを市販するようになったことも、F1GPが“身近”になる大きな要因だった。

その数なんと180機! 日産の歴代エンジンを集めた貴重な博物館

ヘスケス・レーシングは、レース好きの青年貴族、アレクサンダー・ヘスケス卿が、1972年にレーシングチームを立ち上げ、のちにワールドチャンピオンとなるジェームス・ハントを擁してF3レースに挑んだのが、そもそもの始まりだった。73年に一旦はF3からF2へとステップアップを果たしたのだが、そのF2レースの初戦でハントがマシンをクラッシュさせてしまう。

その際に新たにF2マシンを購入するのではなく「F2でもF1でもコスト的にはあまり差はないだろう」との想いからマーチ製の市販F1マシンを手に入れたことは有名なエピソードだ。

マーチ出身のポスルスウェイトが初めて創り上げたオリジナルマシン

1974 Hesketh 308・Ford Cosworth DFV

ステップアップを果たしたF2で、ジェームス・ハントがいきなりの大クラッシュを演じた1973年、チームは一気にF1GPへのステップアップを果たすことになった。市販マシンのマーチ731を購入しての参戦だったが、これは単なる“金もちの道楽”ではなかった。

それはマーチでF2やF3マシンを手掛けながら腕を磨いていた若手デザイナーのハーベイ・ポスルスウェイトをヘッドハントし、マシンのポテンシャルアップを図ろうとしたことにも表れている。

73年シーズンに彼らが使用したマーチは、同年用のF2マシンをベースに開発されたもので、開発担当としてポスルスウェイトはまさに適任だった。

実際、同年にコンストラクターとしてマーチが集めたポイントはすべて、ポスルスウェイトが改良した731改でハントが稼いだものだった。そして翌74年、ポスルスウェイトはこの731改の発展モデルとして、100%オリジナル設計のヘスケス308を作り上げることになる。

マーチ同様、スポーツカーノーズにフロントラジエターを収める、当時としてはコンサバなデザインだった。チャンピオンシップでは未勝利。シルバーストンで行われたノンタイトル戦のインターナショナル・トロフィで優勝…。都合3度の3位表彰台を獲得、上々のデビューシーズンとなった。

76年にハントがマクラーレンでワールドチャンピオンに輝いてから40周年となる2016年のフェスティバルofスピードの、特設コーナーで撮影。

スポーツカーノーズにウイングをプラスしたオリジナルが登場

1974 Hesketh 308B・Ford Cosworth DFV

チームデビューから3シーズン目となった1974年。前年に続いて308で戦い始めたヘスケス・レーシングは、シーズン終盤にマシンを308Bにアップデートする。ラジエターをフロントからモノコック後端両サイドに移設するとともに、スポーツカーノーズのエアインテークを塞いで薄く成型。

その前方に一枚ウィングをマウントしていたのが最大の相違点。これに倣うライバルも多かった。また、金属製のコイルスプリングに代えてラバー製のスプリングを採用していたのもニュースになった。

ホワイトボディに赤とブルーのストライプが映える、ヘスケス・カラーの#24号車は、308と同じく2016年のフェスティバルofスピードで撮影。ゴールド地にブラックでロゴを施しストライプを走らせたヴァルシュタイナー・カラーは、オステルライヒリンク(現レッドブル・リンクの前身)で開催されたオーストリアGPで撮影。ちなみに、このときのドライバーはハラルド・アートルだ。

モノコックを一新し低重心を極めラバー・スプリングを本格採用

1975 Hesketh 308C・Ford Cosworth DFV

ハーベイ・ポスルスウェイトとへスケス・レーシングは、1975年シーズン後半に向け、308Bのさらなるアップデートを図ることになった。いや、アップデートというよりはフルモデルチェンジともいうべき大変更で、ブランニューのF1マシンを誕生させている。

それが308C。モノコックはより薄く(ハイトが低く)一新され、剛性アップと低重心化が追求されている。さらに308Bで注目を浴びたラバー・スプリングをリヤサスペンションにも採用。サイドマウントのラジエターと比べると、モノコックの薄さ(ハイトの低さ)は明らか。

さらに扁平な燃料タンクを備えることにより低重心化がいっそう強調されることに。75年シーズン第8戦のオランダGPでハントとヘスケス・レーシングに初優勝をもたらしている。2016年のフェスティバルofスピードで撮影。

ヘスケス卿の野望も絶たれ最後は身売りでF1GPから撤退

1976 Hesketh 308D・Ford Cosworth DFV

初優勝を飾った前年とは一転、1976年シーズンのヘスケス・レーシングは、苦しいシーズンを送ることになる。そもそもスポンサーに頼らず、活動予算をヘスケス卿が自ら受け継いだ遺産のなかから捻出していたのがチームの活動コンセプト、いや存在意義というべきか……。

やはりそれでは満足な活動は不可能だったようだ。ともかく、この76年シーズンはジェームス・ハントがマクラーレンに去り、スポンサーをもち込んだハラルド・アートルとガイ・エドワーズがドライバーとなった。

マシンは308Cをアップデートした308Dへとコンバートされたが、メカニズム以上にスポンサーカラーによってイメージが一新されている。

とくに、男性誌のペントハウスとタバコ巻紙のブランドとして知られるリズラがスポンサーとなったエドワーズ車は、色っぽいお姐さんがリズラのパッケージをもって微笑む図柄でまるで昨今の痛車だ。2016年にドニントンGPコレクションで撮影。

(文:原田了)

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