デザインの均一化と市場動向
近年、発売される新車のデザインに「個性や多様性がない」という声をよく耳にする。もちろん、各モデルにある程度の個性を盛り込もうと努力はしているが、その結果、どのメーカーもルックスやバリエーションに差が少なくなっている。
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特に現在売れ筋のクロスオーバースポーツタイプ多目的車(SUV)やボックス型の軽ワゴンはそうだ。自動車メーカーは冒険をしなくなった。その背景には何があるのだろうか。
現在、市場で人気を集めているクロスオーバーSUVのデザインはどうなっているのだろうか。フロントガラスの傾斜角度は大きく、サイドウインドーの面積は大きくない。4ドア+小さなバックドアの5ドアハッチバック。特に左右のリアドアのガラス面積は小さく、ドアハンドルはピラー部分と一体化している。
ヘッドライトは薄くシャープにサイドに回り込み、大きなフロントグリルと組み合わされている。テールライトはやや高い位置にあり、ボディとの一体感を強調している。こういったところだろうか。
同じく人気の軽ワゴンのデザインは、規格一杯の全長と全幅で、上部や前後部はほとんど絞られていない。シルエットは食パンのようで、使い勝手はよさそうだが、個々の特徴に関していえば、特に強く印象的な要素はほとんどない。
一方、他の型。例えば、4ドアセダン、2ドア+バックドアのハッチバック、2ドアクーペ、ステーションワゴンなどは減っている。オフロード4WDなども全盛期ほどの人気はなくなっている。
自動車市場の閉塞感
1990年代から2000年代初頭にかけては、セダン、ハッチバック、クーペ、ステーションワゴン、コンバーティブルがほとんどのメーカーのラインアップを飾り、あらゆるセグメントをカバーする勢いがあった。
それがなぜ現在のような状況になったのか。一般的に、市販車のラインアップはユーザーの嗜好やトレンドに左右される。しかし、この場合、ユーザーの嗜好の変化だけでは済まされない複雑な事情がある。
1990年代のいわゆるバブル経済期には、自動車市場には巨費を投じて開発された個性あふれるモデルがひしめいていた。日本車にとっては、まさに“わが世の春”だった。
しかし、バブル景気は長くは続かず、数年で終焉(しゅうえん)を迎えた。残ったのは、業界全体を覆う閉塞(へいそく)感だった。今後の日本経済はどうなるのか――。自動車メーカーは生き残りをかけた経営改善を迫られることとなった。
クルマ購入者の嗜好が大きく変わったわけではなかった。しかし、開発者の士気は徐々に低下していった。つまり、突然訪れた経済の停滞を警戒し、一種の“慎重さ”が芽生えたのである。
「こんなクルマを出していいのだろうか」
「本当に売れるのだろうか」
「確実に売れる無難なモデルだけに集中すべきだ」
このような守りの心理は、あるとき突然現れたものではなく、バブル崩壊から10年、15年と経過するなかで、静かに、しかし確実に自動車メーカー全体に浸透していった。
その結果、バブル期に投入されたモデルは、数年のうちに後継車もなく製品寿命を終えて市場から姿を消した。2000年代初めから半ばにかけてのことだ。
ジュークの衝撃
2010(平成22)年6月、日産はBセグメント(サブコンパクト)サイズの4ドアハッチバック・クロスオーバーSUV「ジューク」というユニークなモデルを発表した。
当初、ジュークはある種の“キワモノ”で、そのユニークなスタイルばかりが人々の注目を集めた。しかし、振り返ってみれば、ジュークのスタイルは、今日まで続くクロスオーバーSUVの基本形にほかならなかった。
発売から数か月後、ジュークは予想外に高い評価を受けるようになった。サブコンパクトカーならではの
・価格の安さ
・維持費の安さ
・外観とは異なる使い勝手のよさ
などが評価され、世界市場で人気が出始めたのだ。
人気の高まりは、おのずと他メーカーからも同様のモデルが続々と登場するきっかけとなった。このとき、日産がクロスオーバーSUVで成功したことは、既存モデルの販売不振に悩み、売れる新型車を探していたメーカーにとって、“渡りに船”となった。
そして、欧州市場におけるBセグメント・クロスオーバーSUVの販売台数は、2010年の約13万台から2016年には113万台へと、10倍近い大躍進を遂げることになる。安価なクロスオーバーSUVは売れる――。それが市場で実証されたことは、他のセグメントにも波及していった。
Bセグメントの上位に立つCセグメント(コンパクト)では、すでに一定の販売実績を残していたトヨタRAV4やホンダCR-Vが人気デザインとともにフルモデルチェンジした。
無難路線の影響
ここで、前述した「確実に売れる無難なモデルだけに集中すべきだ」という自動車メーカーの迷走が再び頭をもたげてくる。
「無難なモデルだけに集中」ということは、売れ行きの悪いモデルはちゅうちょなく整理することを意味する。その結果、セダンやクーペは一部のマニアックなモデルを除いて、多くの自動車メーカーから淘汰(とうた)された。
セダン、クーペ、ハッチバックからクロスオーバーSUVへ。この流れは世界中で見られた現象だが、日本ではどこよりも顕著だった。トヨタでさえ、セダンとクーペのモデルはわずかしか残っていない。
自動車メーカーが売れ筋モデルしか作らないことを、“冒険精神の放棄”と切り捨てるのは簡単だ。しかし、企業にとって利益の追求が重要な要素であることはいうまでもない。
冒険は技術者や経営者の気分を高揚させ、うまくコントロールできれば企業のイメージアップにもつながる。しかし、それが経営環境の改善に直結するとは限らない。冒険をやめた日本の自動車メーカーの選択が本当に正しかったかどうかは、今後の状況を見てから判断しても遅くはないだろう。
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みんなのコメント
今は高級車から軽自動車まで、ひろ〜い、背がたかーい、燃費がい〜、家族が喜ぶ〜って言わないと売れない。
一方アメリカにおいてもSUV、ミニバン、ピックアップは「トラック」扱いなので、税金が安い。なりは全然違うけど、日本で言う軽自動車なんですよ。そう考えると、そんなに違わないと思いません?その土地に暮らしている普通の人達が、自分の懐具合とライフサイズに合った車を選んでいるだけなんです。違いますかね?